ごちゃごちゃ夢劇場
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
彼は真面目な顔で語り始める。
「どんな夢を見たの?」
「全く聞いたことの無い物語を夢に見たんだ。本当に何故あんな夢を見たのか分からない。話してもいいかい?」
「どうぞどうぞ。聞いてみたいな」
彼は一呼吸置いて、夢の内容を話し始めた。
「まず気づいたら、俺は海辺にいたんだ。そして、その海辺では何人かの子どもが亀を虐めていた」
「今のところ浦島太郎だね」
「思わず俺は子どもたちを止めに入った。すると信じられないが、亀が喋ったんだ! 『助けてくれてありがとうございます。お礼に竜宮城に招待します』って!」
「うん、やっぱり浦島太郎だね」
「俺はそのまま亀の背に乗り、竜宮城へと向かった。竜宮城ではタイやヒラメが舞い踊り、美しい乙姫が歓迎してくれた。だが俺はいつまでも竜宮城にはいられない。帰ろうとすると、乙姫が箱を渡してきたんだ」
「私ただ昔話聞かされてる?」
「そして陸に戻った俺は、貰った箱を開けた。すると箱からは煙が立ち上り、煙が収まった頃には俺の姿は変わっていたんだ!」
「おじいちゃんにでしょ?」
「いや、おばあちゃんに」
「なんで性別変わったの!? 浦島太郎のTS二次創作とか聞いたこと無いよ!?」
「そのままおばあちゃんになった俺は竜宮城に戻り、乙姫と恋に落ちた」
「浦島太郎のTS百合年の差二次創作!? ちょっとジャンルがニッチ過ぎない!?」
「平和に暮らしていた俺と乙姫のところに、ある日小さな喋る動物が現れた。その動物は俺たちにコンパクトミラーを渡し、それを使った俺たちは悪と戦う戦士の姿に……」
「TS百合年の差プ〇キュア浦島太郎!? ごちゃごちゃし過ぎて何か分からなくなってきたよ!?」
「ピラフとチャーハンのパエリア添えみたいなこと?」
「なんで全部米料理なの!? え、なんでそんな夢見たの?絶対浦島太郎読んでから寝たでしょ?」
「いや、俺が読んだのは『URASHIMA』だよ?」
「なんで海賊版読んでるの!? 浦島太郎の海賊版聞いたこと無いよ!?」
「この後に亀が忍者になって再登場するんだけど聞く?」
「聞かないよ! もういいよ!」
「「どうも、ありがとうございましたー!」」
大爆笑の中、私たちはセンターマイクを背にしてステージを降りた。