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プロローグ 

「ジコン、お前を勇者パーティから追放する!」


 特権階級のみが宿泊を許される豪奢な宿に勇者クロードの怒声が響く。

 大声を出す彼の拳は震えている。


目を真っ赤に充血させ涙を堪える姿に、老魔導士ジコンは笑った。


「勇者もついに反抗期を迎える時代になったのだな……」


 笑い過ぎて痛む腰をさするジコンの様子にクロードは表情を歪めた。


「その腰!痛みを抱えて倒せるほど魔王は弱くねえんだよ!」

「腰の痛みだけで問題はないぞ、それに昨日はダンジョンの最下層のドラゴンを討伐して……」

「それも問題なんだよ!あんた一人で倒すから腰が悪くなるんだろ!?いいから、手切れ金持って出てけジジイ!」


 その袋は、手切れ金にしてはやけに重かった。


 寂しそうだが何か確信めいた表情のジコンに、クロードの後ろで心配そうに見つめる他の仲間たちも、場の空気を読み声をかけようとして結局黙ったままだ。


「……分かった、だがなあクロードよ」

「なんだよ」

「子供はもうちぃと大人に頼っても良いんだぞ」


 投げつけられた袋から五枚の大金貨だけを持ったジコンが宿の扉を閉めた瞬間、聖女リリスは無言で近づくと、感情を込めてクロードの頭に杖を叩きつける。


 他の仲間たちも当然と言わんばかりに頷いて閉じた扉を見つめる。すると、強がっていたクロードからすすり泣く音が聞こえて、皆はため息をついた。


「痛いだろリリス!」

「あんな言い方をして追い出すなんて聞いてません、今からでも謝って……」

「誰かが悪者にならなきゃ、ジコンは絶対やめないだろっ」


 クロードは袖で目元を拭いながら言った。

無言だった弓使いが、ぽつりと呟く。


「ジコンさんの後ろ、心強かったのにな……」


 それを聞いたリリスがまた杖を構えそうになったのを、槍使いが急いで止めて背中を振るわせるクロードの名前を呼ぶ。


「クロード」

「分かってる!」


 魔王討伐を命じられたその日からいつも側にいて修行をつけてくれたジコンを、これから益々厳しくなる旅に連れ回す事をパーティの誰も望まなかった。


 それは、勇者になった時から共に隣を歩き続けたクロードが一番強く思っている。

腰を痛めながらも共に歩き続けた彼に、これ以上無理をさせたくはなかった。


だからこそ、流行の追放劇になぞらえてジコンを送り出すことにした。

それが彼への、せめてもの恩返し。



「俺たちで絶対に魔王を倒そう。そして、ジコンに――ちゃんと正面から、謝りに行こう」


 魔王を退けて平和になったならば、ジコンが無茶を強いられる世界ではなくなる。

志を新たにした勇者パーティは、拳を突き合わせ誓いを立てた。


——これは、ありふれた追放劇を体験した老魔導士がまだ何も知らぬ若者たちに代わって世界を救ってしまう、そんな“優しき逆襲”の物語。


……ふむ、我ながら悪くない響きだな。これならば老いぼれの物語の始まりにしては上出来か。

強いジジイが主人公でもいいじゃない。

を合言葉に製作中です!

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