何故、皇女様がこんなところに?
転倒させられたクララベルに手を差し出し、起こすのを手伝ったウィラードが彼女の手を取ったまま、しばし見つめてきて──やがてス、と視線を逸らした。
「あ、の」
「ああ、悪い……もうあいつらは倒したから、それ、直して大丈夫だぞ?」
そのままのウィラードに言われ、クララベルは『それ』について考えて──ドレスをたくし上げて、縛っていたことを思い出す。
「お、お見苦しいものをっ」
慌てて縛っていたドレスの裾をほどき、太腿や脚を隠したところで、クララベルは名乗ることにした。
「あの、私はクララベル・デ・オルランドと申します」
「やっぱり! ……ああ、悪い。俺はウィラード・デ・ラス。辺境伯で、陛下より君の夫になるよう言われている。連れてきたのは、辺境伯領の騎士達だ……ところで」
クララベルに対して、ウィラードも名乗ってくれた。そして、少し離れたところで待機している男達について説明後、一旦、言葉を切ると。
「何故、皇女様がこんなところに?」
(デスヨネー!)
もっともな疑問を投げかけられて、さて、何と答えるべきかとクララベルが思ったその時である。
「クララベル!?」
父である皇帝・ルチアーノと近衛騎士達が馬に乗ってやってきたので、好都合だとクララベルは思った。
「お父様!」
「い、一体、何が……」
生きている彼女を見て、皇帝が訳が解らないながらも声をかけてくる。
そんな相手に内心、舌を出しながらクララベルは笑顔で口を開いた。
「お父様、ごめんなさい……ウィラード様に会いたくて飛び出したら、こんなことに……でも! ウィラード様が助けてくれました!」
「あ、ああ」
「ウィラード様に、私の手料理を食べていたたぎたくてフライパンを持参したんです。おかげで、こうして無事でした……ウィラード様? 辺境伯領にてどうぞ、召し上がって下さいね?」
「んん……?」
用意していた嘘に乗っかり、可愛い子ぶってフライパンを構えて言うクララベルに戸惑うが、下手に口を出すとクララベルが嘘をついているとバレてしまうので、ルチアーノは違うとも言えない。そんな皇帝に、クララベルは笑みを深くした。
そんな父子の微妙な空気には構わず、皇帝であり父であるルチアーノの前に跪いて、ウィラードが口を開いた。
「帝国の太陽にお願い申し上げます。陛下。本来なら、帝都にて皇女殿下とお会いする予定でしたが……社交場は、田舎者ゆえ肩が凝ります。このまま、皇女殿下を辺境領に連れていってよろしいでしょうか?」




