一言で言って屑だ。良いのは顔だけ。
ウィラード達と帝都からやってくる時は、野宿以外は馬車を走らせていたので城に到着するまでは一週間くらいだった。
今回は、アンドレアなのでもう少しのんびりだろう。しかし本来、来客が訪れる場合は準備の為に最低でも数週間、可能なら一か月は欲しい。それを、十日程でやれというのだから無茶ぶりにも程がある。
(まぁ、生まれながらの皇太子だから……いや、でも、だからって礼儀知らずで良い訳じゃないわよね)
物語としては、後のざまぁのことを考えて悪役は悪役らしくあるべきなんだろうが──皇帝一家の人間性は、一言で言って屑だ。良いのは顔だけ。それは、アンドレアも例外ではない。
(だから地位や見た目に惹かれて、アイツに群がる女性は絶えないのよね……流石に高位の貴族令嬢や夫人には、別れる時に多少の手切れ金を払うけど。下位貴族とか平民だと遊ぶだけ遊んでポイッ、だもんねぇ)
群がる女性も悪いと思うが、こういうことはどちらかだけが悪い訳ではない。それこそ子供ではないのだから特定の相手を決めるなり、それが出来ないなら迫られても断ればいいのだ。下半身事情なら娼館もあり、面倒臭いことにならないのだから。
ちなみに皇太子の醜聞は、隠しても隠し切れない。それ故、辺境領にいるウィラードやグローリアの耳にも届いた訳だし、物語でも今でもアンドレアとの婚姻を断りたいのである。
(物語では、クララベルの死があって皇族と辺境伯との結びつきを持ち出されたから断れなかったけど……生きている今なら、更に皇太子まで辺境伯令嬢と結婚したら力を持ちすぎるという理由で断れる)
おそらくだが、父である皇帝・ルチアーノは反対したと思うのだ。彼は、ウィラードが力を持って自分に敵対することを危惧しているのだから。
しかしアンドレアとしては、噂の美女であるグローリアを諦めきれず、クララベルの誕生日を口実にやってくると思われる。
(会えばうまくいくって、思ってるんだろうなぁ)
クララベルがやれやれとため息をついているうちに、ついにアンドレアが到着した。馬車から降りてきて、出迎えたクララベルに──ではなく、まずはグローリアを見て。それから満足そうに微笑んだかと思うと、次いでクララベルへとその目を向けてきた。
「やぁ、クララベル! 元気にしていたか?」
「……はい、元気です」
使用人だった時は『アンドレア様』と呼んでいたが、母親が違うからとは言え仮にも兄妹では不自然だろう。だから、と質問にだけ答えると、アンドレアも藪蛇にならないようにか笑みを深めるだけだった。
父親譲りの金髪と、母親譲りの紫の瞳──そして彼は、美男である父・ルチアーノにそっくりで。だからこそ女性も群がるし、当人も己の容姿が優れていると自覚している性質の悪い男なのである。




