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転生皇女はフライパンで生き延びる  作者: 渡里あずま


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マズい、このままだと凍死する!

 前世の時の名前は、憶えていない。


「女か。使えねぇな」

「この子だけで良かったわ。あんたを生んだのは、本当にしんどかった……せいぜい、働いて恩を返しなさいよね」

「アンタってくたびれてて本当、恥ずかしい……周りには、家政婦だって言うからね」


 だが、前世のベルが生まれ育った家は、貧しい訳ではなかったが両親が弟だけを可愛がり、姉であり女であるベルは高校に行かせず、昼は家事を夜はバイトをさせてそのお金を家に入れさせていた。更に、寝たきりの祖母の世話も亡くなるまで一人でさせられていた。

 二十歳になっても働きづめでくたびれ、お洒落も出来ない前世のベルを、両親だけではなく三歳下の弟も彼女を見下していた。悲しくて、けれど幼い頃に反抗したが親が許さず、逆に家を出るように言われた恐怖から逆らえなかったのだ。

 とは言え心も体も疲れ果てた彼女は、買い物帰りに歩道に突っ込んできた暴走車から逃げられず死んでしまう。

 そんな彼女の唯一の楽しみは、連絡用に持たされていた携帯電話で小説投稿サイトを見ることだった。たくさんの小説の中でも、前世のベルが好きな小説があった。

 皇帝に疎まれ、無理難題を押しつけられながらも、妹と家臣達を守る為に皇位簒奪し、最後は新たな皇帝となった辺境伯の物語。家族や家臣を愛し同じだけ、いや、それ以上に愛される辺境伯が前世のベルは大好きだった。買えなかったが書籍化され、Web版を消さないでくれたのをありがたく思ったものである。


「ってここ、もしかして『英雄の天秤』の世界? えっ、異世界転生……ってマズい、このままだと凍死する!」


 一気に前世と、この世界について思い出したところで──あまりの寒さに我に返り、ベルはひとまず自分や母の服を今の服の上から着込んだ。とは言え、それだけでは温まらないのでどうやって火を起こすかを考えた。

 暖炉はあるが、火がついていない。念には念を入れてなのか、マッチも火打石もない。

 だが、ここでベルは前世の『ファイヤーロール法』を思い出した。家族でキャンプ(料理や雑用全て前世のベルがやった)の時、動画で見た弟にねだられてやらされたのだ。

 用意するのは、コットンと重曹と板二枚。

 コットンは肌着が、重曹は掃除用のがある。愛妾なのに、掃除洗濯は母がやっていたのだ。まあ、今こうして助かっているので恨みに思うのは後にしよう。そして板は、僅かだが置いてあった小割りの薪があったので使うことにした。

 肌着の一部を破り、重曹を中に入れてきつく巻いた後、薪で挟んで前後に動かし、擦って火を起こした。

 出来た火種に、薪と自分が着られなくなった子供用の服を焚べて燃やし、部屋が温まったのにようやく一息ついた。

 ……前世でも一回では出来なかったが、幼女の力の無さ故に十回ほどやったのは余談である。


「ベルって多分、『クララベル』のことで……小説冒頭で、死体で登場する皇女よね。あー、うん。そうだった。お手つきされた侍女のお母さんが私産んだから、愛妾になったのよね」


 ちなみに物語の『クララベル』は、皇帝から押し付けられる無理難題の一つとして『表向きは』蛮族に勝利した辺境伯への褒美として与えられた皇女だった。

 しかし彼女は辺境伯に早く会いたいと城を飛び出し(今の状況を考えると嘘の可能性は高いが)野盗に(これも、実は皇帝が手を回している)殺されて、そのことが辺境伯の弱みとなったのだ。

 その後、妹を皇太子に嫁がせることになったり、噂だけで拒んでいた姉皇女が辺境伯の美貌に手のひらを返し、口説いてきたりするのである。


「皇女ってことしか知らなかったから、こういう過去持ちだとは知らなかったけど……少なくとも、物語が始まるまでは死なないってことよね?」


 暖炉の前で、燃え盛る火を眺めながらベルはこれからどうするかを考えた。母は死に、今、この部屋には誰もいない。だから己の思考をまとめる為、小声だが考えを口に出しながら考えた。


「こういう過去持ちだとは思わなかったけど、少なくとも物語が始まるまでは死なないってことよね……でも、小説通りに死ぬ義理はないわよね?」

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