ごもっともな、けれどなかなかハードルが高いことを
リクエストされたので、次の日の夜は同じものを作ったが、更に次の日は別のものを作った。
「今日はスープはなく、塩漬け肉を焼いて野菜を添えます」
それぞれパラフィン紙で包んで、先ににんじんと玉ねぎを焼いて甘くし、次いでパラフィン紙に包んだ塩漬け肉を横に入れて焼き、同時に完成させた。
初日はフォークを使わない料理にしたが、ハーラルから笑って言われたからだ。
「俺らが串焼きを作るのは、単にそれくらいしか出来ないからなんで。一応、若も若奥様も貴族ですから、気にせずフォークやスプーンを使って下さい」
「わっ……は、はい」
初めて料理を作った時は『皇女様』と呼ばれていた。それが『若奥様』に変わったのに驚くが、ハーラルにウィラードとの仲を認められたとも思った。照れるが、嬉しくもある。
「ありがとうございます、ハーラルさん!」
「どういたしまして……あー、ただそろそろ敬語はやめて、名前も呼び捨てにして下さい。おれらの主人の、奥方になるんですから」
「が、頑張り……頑張るわね、ハーラル!」
ごもっともな、けれどなかなかハードルが高いことを言われて、クララベルは何とかそう答えたのだった。
※
皿に、焼いた塩漬け肉と野菜のソテー。あとパンを載せて、ウィラードの元へと運んだ。そして、ウィラードの隣に腰かけて、クララベルも食べ始めた。
「クララベルの作る料理は、本当に美味いな」
「恐縮です」
今日もウィラードはクララベルの料理を褒めてくれたし、美味しそうに食べてくれた。嬉しくて我知らずニコニコしていると、続けられた言葉にふと引っかかる。
「城でも、昨日までのや今日の料理が食べられるんだな。楽しみだ」
「あの、作りはしますけど……お城ならもっと、色んなものが作れますよ?」
「え?」
「えっ?」
クララベルの言葉に、ウィラードが驚きの声を上げる。そのことに驚いたが、言われてみれば作ってみせたのが野宿での夕食なのでそう思われても仕方ない。
「あの、お城だと他の食材も調味料もあるので、もっと色んな料理もお菓子も作れます」
「料理もだが……お菓子? フライパンで?」
「はい! ケーキやプリ……えっと、卵のお菓子? も、作れますよ」
中世風の世界だが、貴族や富裕層の家だと冷蔵庫がある。魔法はない世界だが、氷を入れて冷やすのだ。だから、その気になればプリンを作れるという訳である。
「クララベルは、本当にすごいな」
「お、恐れ入ります」
イケメンからキラキラした眼差しで見られ、恐縮する。いや、表向きの言い訳として料理を作ると言ったし、胃袋を掴めば最悪、使用人としては雇って貰えるのではと思っていたが。
声に出さず、クララベルは「頑張ろう」と拳を握って気合いを入れた。
……そして、そんな風に野宿と移動を数日くり返し。
クララベルは無事、辺境伯領──ウィラードの領地へと、到着したのだった。




