君の家族は、馬鹿なのか?
「君の家族は、馬鹿なのか?」
「勉強や語学は出来ると思いますが、まあ、人としてはそうですね」
「ハハッ!」
クララベルの話を聞いた後、そう言ったウィラードにすましてそう答えた。それにおかしそうに笑うのを見て「やっぱり顔が良い」と思っていると、視線の先でウィラードが笑みを消して肩を竦めた。
「いや、知らなかったとは言え、本当に宴に参加しなくて良かった……どんな顔をして、どんな話をすれば良いのか、全く解らん」
「同感です。だからこうして、連れてきていただいて本当に助かりました。お礼に、さっき言っていたように手料理を振る舞いますね。あ、この護身用のフライパンではなく、ちゃんと調理用のフライパンを使いますから!」
「楽しみだな。とは言え、辺境伯領までは数日、野宿をしながらの旅になる。苦労をかけて、すまないが……」
「大丈夫です、どこでも眠れます」
冗談や強がりではなく、義理の母や異母姉の苛めにより外に出され、次の日の朝になるまで皇宮の中に入れなかったことが何度もある。そうなると、少しでも寝ないと使用人の仕事に差し障りがあるので、人の目につかないように厨房や洗濯をする水場の傍の茂みに潜り、寝たりしたのである。
「苦労したんだな。一応、天幕の中でしっかり横になれるから安心してくれ……あと、これを」
クララベルが笑顔でそんなエピソードを披露すると、ウィラードが真顔でそう言った。そして、席の傍らに置いていた荷物から何かを取り出してきて、クララベルに渡した。
「軟膏だ。すり傷や切り傷に効くから、よければ使ってくれ」
「え、ですが、辺境伯様が使われるのでは……?」
「大丈夫だ。よく効くから、予備を持ち歩いてる」
「ありがとうございます! 野宿なら尚更、夕飯を作りましょうか? ……あの、毒など心配なら見張ってくれて良いですよ?」
ウィラードからのプレゼントが嬉しくて、両手で包み込むように持ちながらクララベルはお礼を言った。
それから少しでも恩返しをしたくて、そう提案するが──それこそ『訳あり』の令嬢が調理をしたら、ウィラードの部下達が不安かもしれない。
だからと付け加えると、何故だかぐしゃぐしゃとかき回すような勢いで頭を撫でられ、思わず間の抜けた声を上げてしまった。
「ひゃっ!?」
「今夜は、俺達にもてなされてくれ。そうだな……明日の夕飯から、手伝ってくれるか?」
「は、はぃ、辺境伯様っ……!?」
「ウィラードだ。俺も、名前で呼んでいいだろうか?」
「ひ、ひゃいっ」
ウィラードの言葉が嬉しくて、そう答えると──頭を撫でる手が止まらず、逆にますます撫でられながら名前呼びをするよう言われ、クララベルはされるがままになりながらも必死に返事をするのだった。




