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プロローグ

 もしも、自分の決意を誰かに聞かれていたとしたら──

 自分の夢や願いをあえて人に話すのは照れ臭いかもしれない。しかし、独り言として口にした決意をたまたま聞かれてしまったのなら、それは改めて自分を戒める材料になるだろう。


「よっし決めた!俺は一ヶ月間で必ず恋人を作ってみせる!」


 仮に、自分の決意を自身しか知らないのであれば、無かったことにしてもいいし捻じ曲げてしまってもいい。


「絶対!約束!俺は俺に誓うっ。もしできなかったら死んでもいいね。高校生活を薔薇色にするためにも、必ず彼女を作ってやるぜ!」


 ところが誰かに聞かれてしまったのなら、そこには責任が生じてしまう。プライドのため、自己のアイデンティティを保つため、はたまた決意を反故にした時の非難を恐れるが故に。


「にゃー」

「あ、机の下にいたのか。ごめんなミール。うるさかったか」


 我が家の飼い猫の黒ぶちミールが、不満げな鳴き声を上げて、学習机の下から這い出てきた。


「聞いてくれよミール。今日卒業式ぶりに中学の友達に会ったらさぁ、なんと彼女連れてやがったんだよ!知らない女の子がいて終始気まずいわ、ことあるごとにイチャイチャ始めるわ、挙げ句の果てに俺を小馬鹿にしたような態度とるしよぉっ……」


 などと愚痴っていると、突然俺の部屋の扉が開いた。


「さっきからうるさいって兄貴!」


 俺に似て少し目つきの悪い妹が、俺の部屋に勝手に入ってきた。


「うおっ、急にドア開けんなよ。もしかして今の会話聞いてた?」

「なに、またペットに話しかけてるわけ。きっしょ。それ会話って言わないから」

「お前だってよくミールに話しかけてる癖に」

「私は兄貴と違ってキモくないし」


 俺は携帯を取り出して、いつだったかに撮った動画の再生ボタンを押した。


「ほれ」


 そこには、猫の両手を抱えてあやしている妹の姿が映し出されていた。


『にゃーんこだにゃーん?ミールはお手て、ぐっぱ、ぐっぱ。こーんどはグルグルねーこパンチー。ニャンニャン、ニャニャー!』


「きっも!誰これ」

「お前だよ」

「私もきっしょ!」


 こいつの暴言先は分け隔てなく平等で潔い。というか、我が妹ながら割と面白いやつだと思う。

 そんなこんなで妹を軽く撃退し、俺の照れ臭い決意は誰にも、少なくとも言葉を理解する者には聞かれていないはずだった。

 一時の熱に絆されただけの目標は、すぐに俺自身でさえも忘れ去り、自分を戒め、鼓舞してまで取り組むこともない。


 そうして、このとある春の日から一ヶ月が過ぎようとしていた。

目に留めていただきありがとうございます。もしよろしければ、感想や下の星で評価がいただけると嬉しいです。


誤字脱字などは発見次第修正していきます。気がつかなかったらすみません。見つかるのが数ヶ月後とかもあります。

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