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29. 慰霊碑


 その後、カイルとエミリオが二人でおとずれた場所は、彼女がうらみ続けた親兄弟の子孫のもとではなく、リディバの町役場である。身勝手な領主にずいぶん苦しめられたとはいえ、本来何の悪いこともないただの宝飾品を物騒ぶっそうなものに仕立て上げたのは、当時の町民たちだ。それはもう、彼女の復讐の道具ではない。町で保管すべきだろう。


 ただ、そこで二人には一つ確かめておきたいことがあった。それは、無残に殺害された彼女の遺体は、その後どう扱われたのかということ。


 しかし、予想はしていたものの呆れたことには、彼女のことは一族の恥だと伝わっているらしく、そのため墓も建てられてはいなかった。当然、骨も無い。諸説ある中、燃やされたあと粉砕して適当に捨てられたというのが、最も考えられると調べがついただけである。呪いの首輪伝説のことは、その一族にとっては抹消してしまいたい過去でしかないらしい。


 しかし首輪の伝説が事実なら、それは一物語である前に、町の歴史である。

 そのため、首輪が現存していたことによって調査が進められた結果、本物であると断定された。


 そして、多種多様の可憐なつぼみが次々と開花を迎える春に、彼女の慰霊碑いれいひが建てられた。

 一行が村を去ってから、実に半年以上もの月日が流れたのちに。おいそれというわけにもいかずに、いろいろと議論されていたからである。


「もう土の中は嫌!」と、彼女の霊は言った。


 慰霊碑が建てられたのは、綺麗に整備され、管理が行き届いた役場前の中央広場。明るい場所にしてあげてくださいと、カイルが頼んだのだ。


 この慰霊碑の存在によって、町民たちは、この町が住みやすいものに生まれ変わったのは、きっと彼女の犠牲もあってのことだと感謝するようになった。美しい花束を手向たむけにやって来る者もいる。


 実際、当時この事件をきっかけとして、不審の念を抱くようになった上層機関が、全ての都市に抜き打ち調査を入れるよう取り決めたという説も出てきた。


 一方、彼女の慰霊碑は、その過去を無かったことにしていた不名誉な一家の子孫たちをも変えた。それには、老女のおとぎ話をカイルが修正して教えたことから、リディバの町とスラバの村の首輪伝説が、ほぼ正確な形で繋がったことにもあった。それが、我が子を理不尽に殺害した当時の子爵夫妻の非道さを引き立てて密かに広まっているということに、その子孫たちも気付かされたからだ。 


 つまり、彼らは大きな顔もできなくなり、謙虚けんきょに生きざるを得なくなったらしい。













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