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28. 仕上げの儀式へ




 浄化の儀式は中断してしまったが、果たして・・・と触ってみたカイルは、ハアと残念なため息をついて首を振ってみせる。まだ大きな問題が残っていたか。


「首輪はまだ取れないや・・・。やっぱり、ちゃんと浄化の儀式をしないとダメなんだね。」

「じゃあ、こっちも終わらせよう。」

 ギルが言った。

「でも大丈夫かな。炎に驚いて出て来たら・・・。」

「なら、私が一緒に ―― 。 」


 エミリオがそう言ってリンを抱き上げようとした時、ミーアがサッと動いてリンの手を取った。


「一緒に行こ。神様のおうち。」

「うん!」

「あのね、体が燃えちゃうんだって。でも大丈夫だから、おうちから出ちゃダメだよ。」

「そうなんだ、分かった!」


 無邪気な少女たちを見守りながら、ギルがレッドに囁きかける。

「分かったか?」

「いや・・・俺はあんまり。」

 子供は時に大人よりも度胸がある。


 さて、気持ちを切り替えて仕上げの儀式へ。カイルは有終の美を飾ろうとするかのような顔で浄化に臨む。実際、これをやり遂げればカイルの知識と自信は高まり、価値ある経験となって得られるものは大きい。


 両腕を高く差し出したカイルは、森の神の許しと助力をい、やしろにこもる聖なる力を呼び覚ましていく。


 あっと驚く現象が、すみやかに何の問題もなく起こった。屋根と柱だけだったやしろを完全にふさいだ緑色に輝く壁は、これからここが修羅場とならないよう上手く取り持つ準備に入る。


 確信したカイルは儀式を続けた。


 何となく中の様子を見ることはできるので、ほかの者たちは静かに見守っている・・・が、それ以降、何の変化もないような状態がしばらく続いた。浄化が始まると必ず現れるとされるものが、なかなか見られないのである。


 しかし、カイルは確かに浄化の真っ最中だ。


 その間やしろの中にいるリンとミーアは、〝危険でおごそかな儀式〟というタイトルを恐ろしくそっちのけで大はしゃぎ。綺麗で不思議な光に包まれている中で興奮して飛び跳ね、きゃっきゃととにかく楽しそう。やはり、子供にとっては最高に愉快なアトラクションでしかないらしい。


 そのことに驚くやら呆れるやら、やれやれという顔をそろえて、どれくらい待っただろうか。


 ようやく迫力満点で現れ出たのは、み切った紫色の炎。


 ただ、緑と紫が重なってどうしても黒っぽく見えてしまい一瞬ドキッとした彼らも、その中から二人の笑い声が聞こえてくるおかげで、ほっと胸を撫で下ろした。


 成功に違いない。


 終わった・・・と気が抜けたとたん、なぜか空虚な気持ちになったリューイは、ここへ来てからのことを回想して、いつになく暗い声で言った。 


「俺・・・リンのことしか考えてなかった。」と。


 少しずつ精神的にも成長していく彼の横顔に、それを見守る親のような気持ちでエミリオは目を向けた。


「そうだね。呪いが繰り返される原因・・・それをあの子自身で・・・。」


「かわいそう・・・か。確かに・・・そうだ。」と、ギルの声も切ない。

「そのたった一言で、解決しちまうとはな。」

 レッドはそう言って苦笑した。

「何か教えられた気がするわ・・・いろいろ。」と、シャナイア。


 その慈悲じひ深さで自ら我が身を救った少女は、神のやしろで、功績こうせきたたえられるように輝く光に包まれている。


 なぜなぐさめて、優しい言葉をかけてあげることができなかったのだろう・・・。


 こうして、当初は悪戦苦闘しながら真っ先に無理やり片付けようとした儀式が、円滑に終了した。


 リンを手招いたカイルは、首輪の留め具に両手をかけてみる。

 さあ・・・どうだ!

 洞窟内に拍手の音が響き渡った。

 やった! と叫んだカイルは満面の笑顔。

 その右手でつかんでいるのは、何の抵抗もなくあっさり開いた天然石の首飾りである。


「で、それまた埋めちまうのか?」

 リューイがやしろを振り返って言った。

「もう呪いがよみがえることは無いはずだけど・・・。」と、カイルには何か考えがある様子。

 その気持ちを察したレッドが代弁した。

「ここにあるべきものじゃあないよな。」


 気が遠くなるような年月のあいだ、激烈な感情に縛られ、天に昇ることができなかった娘の魂。しかし彼女の犠牲もむなしく、肉親でありながら心無い仕打ちを与えた者たちの子孫は傲慢ごうまんな態度をとり、町民の方も、若い世代はその悲劇を誰も知らない感じだった。思えば、そのことを教えてくれた年配の職員にしても、その口ぶりは、彼女が受けた仕打ちとその死を、あまりにも淡々と事務的に伝えてくるものだった。彼女の存在はもっと尊重そんちょうされるべきであり、それを今改めて考えてもらわねばなるまい。


 そこで仲間たち一人一人の顔をうかがったギルが、いつものようにスパッとまとめた。


「よし・・・返すか。」












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