表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/48

4. 家畜小屋の血痕


 西日が強くなり始めた頃、シャナイアとミーアを除いたほかの者は、さりげなくこの村の中を見て回った。 


 呪いは生きている。目的も果たせず、浄化もされずに。


 この時代の呪詛じゅそに多いのは、まず祭壇などを介して、標的、つまり呪う相手をじわじわと衰弱すいじゃく死させる方法。ほかに手っ取り早いものとしては、霊を操って誰かに取りかせ、標的を襲わせるというもの。これは単純明快だ。しかし今回のものは、カイルが知る限り例はなかった。


 とりあえず、その何らかの影響を受けて具合が悪くなっているという者は、今日、診察した中にはいなかった。リン本人も見たところ元気そうで、呪いにかかって体調を崩しているということもなかった。


 村人たちの話から何か分かりはしないかと、診察中にさりげなく質問を投げかけてもみたが、これといって怪しいものはなかった。印象に残ったといえば、患者でもあった村長から、この村について少し教えてもらったことくらいだ。我々は西の激戦地から逃れてきた者だと。ここへは二年前に移住してきたばかりだという。部分的にちてはいたものの、家屋かおくがみな立派に残っていたこの村跡を見つけて、これは幸運とばかりに住み着くに至ったのだそう。


 そして、トラウというこの村の名前。そんな話だ。


 そこでカイルは、こうして自分の足で調べる前に、占いによって、呪いがこの村に何らかの影響を与えたかどうかを確認していた。すると、この村のどこかで誰かが、もしくは何かが被害を受けている可能性は大いにある、という残念な結果が。それも、あの首輪はリンがたまたま森の中で見つけたものなのだから、その被害はもはや無差別にもたらされている。とにかく、首輪の呪いについて謎が多く、もっと情報が必要だ・・・と、カイルは考えたのだった。


 そのためにカイルは、数日にわたって治療が必要な病人などもいたことから、しばらく滞在できる理由を上手く作った。はっきりと本来の目的を口にできないのは、そのように一見、村人たちにおかしいところがないので、下手に言ってしまうと、リンとその家族がこの村を追われる恐れがあるから。何か起きたとしても村人たちが気付いていないのなら、呪いのことは、知らせるにしても最小限に止めておきたいと考えたのである。そのためにはまず、解決の見通しを立てなければならない。やはり、先にいろいろと調べる必要があった。


 そうして、ただ散策しているふりをしながら歩いていると、家々から離れたところに、家畜小屋があるのを見つけた。牛と馬の厩舎きゅうしゃが隣合わせに、それからニワトリ小屋、そしてまた別の場所に豚小屋である。それぞれの動物の数は、それほど多くはない。十以上いるのはニワトリだけ。豚はたった二匹。


 その豚小屋へと最初に近づいて行ったのは、リューイだった。


 とたんに険しい顔になる。


 外から眺めるしかできないが、地べた一面に血痕。壁の羽目板にも血のあとがみられる。そして、獣の臭いに混じっている異様な血生臭さ。育ちがら嗅覚きゅうかくまでも人より鋭いリューイは、それにも気付いた。


「カイル・・・ちょっと。」


 リューイに手招てまねかれて、カイルとほかの仲間たちも、そこへ足を向ける。


 そして、中をのぞき込むなり、みな同じくしかめっ面になった。


「ただ事じゃない感じだな。」

 うなるような低い声で、ギルが言った。


 そこは、まるで殺戮さつりく現場。最近、狼でも出没したのか、それとも、この場で家畜を殺して食材にしたか・・・まさか。


 何かに襲われた跡ととれるこのことを、なぜ誰も話題にしなかったのだろう。


 それを不思議に思いながら、彼らは、夕映えで見えづらくなり始めたこの豚小屋の現場から離れた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ