表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/48

15. 森のやしろ


 興奮をおさえきれずに、誰よりも早く村へと駆け戻ってきたリアンは、まずレネの家、そして井戸場のあと畑へ向かって、やっと彼女の姿ともう一人、サムジを見つけることができた。


「レネ!」


 燦然さんぜんと輝く太陽のもとで、真っ赤に実ったトマトの収穫中だったレネは、腰を伸ばして声がした方へ首を向ける。


 目で確かめるまでもなく、その声はリアン。彼は、畑の細道を、軽やかに通り抜けてやってきた。レネも驚くほど汗だくで、着衣が肌に貼りついている。


「リアン、そんなに慌ててどうしたの?」

「あった、見つかったんだ。君を助けることのできる木が。」

「・・・木?」


 息をきらせながら、嬉しそうにそう話すリアンとは対照的に、レネは、どうも状況が呑み込めていないきょとん顔。


 リアンは首をかしげた。

「もしかして、聞いてないの?」

「ええ、木・・・のことは何も。私を助けることのできる木って?」


 レネも、全く何も聞いていないわけではなかった。ただ、危険な儀式になるので、心の準備をしておくようにという簡単な話だけで、具体的な説明を受けてはいない。


「そっか。レネ、呪いを解く儀式はしなくちゃいけないんだ。」

「ええ、そうね。」

「でも前にも言った通り、普通にやれば君はきっと焼け死んでしまう。それで、特別な木材で特別な建物を造ることになったんだ。それが君を守ってくれる。この森の精霊たちが守ってくれるそうだよ。」


 ここでようやく、サムジもそばへとやってきた。畑のそばのベンチに座って読書をしていたサムジだが、少々自由が利かなくなった体は、とにかく移動に時間がかかる。


「ああ、おじいさん。見つかりました。次は何をすれば。」

「うむ、ご苦労じゃった。それでほかの者たちは。」

「とりあえず、次の指示を聞くために一度戻ってきます。そのあと、時間が許す限り、早速さっそく次の準備に取り掛かります。」


 やがて、村の男たちも次々と帰ってきた。


 レネとリアンのため、その全員が外からの仕事の依頼は受けずに、解決までこれに専念すると決めている。そもそも、スラバの村は一体となって動いているので、大工チームが何班かに分かれて平等に仕事に当たる。つまり行動が一緒になるのは、機械的かつ自然な流れなのである。


「サムジさん、おっしゃっていた木が見つかりました。建材として使えるものが。占いの通り、幸い遠くありません。恐らくここから二キロほど離れた崖下の雑木林ぞうきばやし、そこに立派なものがまとまって生えていました。それで、もし構わなければ建てる場所をこちらで決めたいのですが。運搬にもそうとうな労力がいりますので、その近くで、ふさわしい所を探そうと思っています。」

 リアンの父親が言った。建築に関する知識も腕も一流の大工である。


「そうじゃな。その方が良いじゃろう。森の神をまつるやしろじゃあ、千年先もちぬ場所と、ものをお願いしたい。」

「任せてください。」

 リアンの父親はそう請け合って、仕事仲間たちを振り返った。ベテランも見習いの若者も、誰もが意気込みあらわに気合じゅうぶんである。


 今は正午を回ったところ。昼休憩のあと、まだ動ける時間はたっぷりと残っている。

 そしてその勢いのままに、場所が決まるや、大工たちは翌日からも熱心に作業に取り組んだ。木材のほかにも、必要な建材等を全てそろえるのには時間をとったものの、朝早くから夕方の視界が分かるあいだ、時にはかがり火で照らしながら、夜にも道具の音を響かせた。そうして、サムジが望んだ通りのやしろを、なんと着工から数日で造り上げたのである。


 規模は小さいながら、職人が基礎からしっかりと建築したものだ。驚いたことには、仕事の一環として彫刻のプロも多くおり、その一人が、木彫りの神像一体を、遅れをとらずに完成させていた。


 たった数日で建てることができた理由に、もう一つ、壁が無いというのも挙げられる。


 彼らが造った〝森の神をまつるやしろ〟は、まるで石材でできた円柱が並ぶ、吹き抜けの神殿のようだった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ