12. 一つではない・・・
レネが心配で煉瓦小屋から放れようとしないリアンを、村人たちは無理やり集会所まで引っ張って行った。真夜中だったが、これからそこで緊急の村会議が開かれることとなったのである。
この集会所も石張りの床で、広いワンフロアに絨毯を何枚も繋げて、何十人もが一緒に座れるようにしていた。
天井から吊られているランプの薄暗い灯りの中で、その深刻な話し合いは行われた。
子供と女性、そしてサムジを除いた老人たち。それ以外の男性が集まって作る輪の中で、精霊使いサムジと向かい合っているのは、リアンだ。隣には父親もいた。リアンには母親もいるが、レネの母親と親しい彼女は、気絶したそのビエラも心配で様子を見に行っている。
リアンはひどく肩を落として、魂が抜けたようになっていた。
村人たちはそんなリアンが気の毒でならなかったが、これは問い質さなければいけない重大事である。戦慄のこの事件の発端は、間違いなく彼にあるのだから。
同じ思いで、サムジも静かに声をかけた。
「リアン、どういうことじゃあ。」
のろのろと顔を上げたリアンは、責めるよりむしろ哀れむような目を向けてくるサムジを見た。
「首輪のことですね・・・実は、リディバの町で譲ってもらえたものです。まさか、こんなことになるなんて・・・。」
「あの首輪から、凄まじい呪いを感じる。一つではない。」
「おじいさん、あの首輪取れないんだ。もしかして、それって・・・。」
「うむ・・・一つ目の呪いの妖力じゃろう。レネが豹変したのと、妖魔が現れたのも。しかしもう一つは、いったい・・・。」
「彼女はあのままなんですか。」
「いや・・・恐らく朝には戻る。しかし、首輪をしている以上は一時的にじゃあ。」
「それなら早く外してあげてください。おじいさんなら、できるよね。」
リアンはやにわに動いて、急かすように身を乗り出した。
「リアン・・・浄化はできる。しかし、首輪とレネを別にしなければならん。」
そこでリアンの父親も出てきて問う。
「どういうことです。首輪を外すための浄化でしょう?それができないのでは、意味がないのでは。」
「首輪を外すためではない。呪いを浄めるためじゃあ。浄化の儀式を行えば、黒紫色の炎が燃え上がる。人体も無事では済むまい。」
これを聞いたリアンは、また力無く尻をつけて座り込んだ。
「レネが首に嵌める前に気付くことができていたら・・・わしとしたことが。」
二人で過ごした甘い時間、レネと交わしたやりとりが、リアンの胸にそれこそ呪いの言葉となって思い出された。
〝ねえ、ちょっと着けてみたら?どんな感じか見たいな。〟
〝でも、衣装と合わせてみないと。〟
〝いいから、いいから。〟
「僕は・・・なんてことを。」
リアンは絵に描いたように頭を抱えて項垂れた。
「彼女を助けてください。」
そう哀願するリアンに、サムジは気休めの言葉すらかけてやることもできず、皺だらけの顔をさらに顰めて黙り込んでしまった。




