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第十一話 結婚式

「娘の佳世は十八歳や」


「でかい娘さんがいるんだな」


「足が変色してもうてな。奈良から出られへん」


「ああ……、魔都化に巻き込まれたんだな」


「そうや、もう逃げられへん。だから、何か最後に望みはないか聞いたんや……、そしたら……そしたら……」


 田中正治(たなかまさはる)は、カウンターにうつ伏せになって、両手の拳を強く握り震えだした。横にどかしたラーメンのどんぶりが、巻き込まれないかと鹿目は心配になる。


(たけし)くんと結婚したい、言いよった! まだ十八やぞ! 誰やねん武くんって、男手一つで大切に育てた俺の娘に何する気なんや!」


 顔を上げて来た田中は、(まく)し立てるように一気に喋る。唾が一杯、空中を舞っていた。なので若干、逃げ腰になって鹿目は話す。どうやら頼まれ事は、この男の娘に関係があるようだと鹿目は思った。


「それで? 娘の父親としては反対なんだな」


「いいや」


 と言って、田中は鹿目を睨んだ。鹿目がそれとなく距離をとったのに、にじり寄ってくる。


「娘の希望は叶えてやりたい。もう助からんかも知れへんしな」


「なんだ。折れるのかよ」


 結局、娘の言い分を聞いてやるなら、武くんとやらに腹を立ててもしょうがない。ここまで来たら、気持ちよく送り出してやるべきだと鹿目は思った。


「で? 俺に頼みたいことって何なんだい?」


 田中正治は、板金塗装会社の社長だった。

 うまく依頼を片付けることが出来たなら、鹿目の愛車のシエンタは、昨日、納車されたばかりの頃のように輝きを取り戻すだろう。

 ――第一優先だ。

 この男の依頼が第一優先だ、と鹿目は何度も自分に言い聞かせる。

 正直、奈良の行く末などどうでもよかった。


「今日の五時からな、結婚式をやるんや。といっても、斑鳩町(いかるがちょう)には結婚式場がないからな、小さなレストランを貸し切って親族だけの食事会や」


「へぇ~。それは娘さんも喜びそうだねぇ」


 鹿目が持ち上げてやると、田中は嬉しそうだった。


「母親が生きとった頃のドレスを着るって言っとったから、そこそこ雰囲気は出ると思うねんけどな。牧師がおらんやろ? だから俺の知り合いの宮司に頼んだんよ。牧師の真似事やってくれって。そしたら婚礼の儀は宮司でも出来るって言われてな。じゃあ、これで一安心やわ~ってなってんけどな」


「うんうん」


「出られへんねんて」


「ん?」


「神社から外に出られへんって、さっき電話あってん」


 奇妙な事を言うと鹿目は思った。その訳を尋ねる。


「その宮司さんは、何で神社から出れないの?」


「それが、分からへんねん。用意をして鳥居を潜ろうとするねんけど、気が付いたら違う方向を向いてるねんて」


「宮司さんは、魔都化の影響で身体が変色してたりはするのかな?」


「それはしてない、言うてたな」


「じゃあ、移動制限がかかるわけじゃないんだな」


「そうやと思う」


「ん――――!」


 腕を組んで鹿目は唸る。

 おそらく鳥居だ。

 今の話に出てきた鳥居が凄く怪しい。


「田中さん。俺はその宮司さんを、間に合うように連れてくればいいんだね?」


「そうそう。五時前には来といて欲しい」


「場所を教えてくれ」


龍田(たつた)や、龍田神社」

父親は大変。

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