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scene.50 グランドフィナーレの向こう側


 意識は深く沈む、深く深く。


 生きているのか死んでいるのかよくわからない暗闇

 何もない暗闇には次々と記憶が浮かんでは消えていく

 陽翔の記憶、オーランドの記憶

 知っている事、知らない事

 曖昧な思い出が浮かんでは消えていく



 ──よお


 ……よお



 そんな暗闇には、悪役(オレ)陽翔(オレ)の2人が立っていて、



 ──お前ほんとに馬鹿だったんだな

 …悪いかよ。こういうのしか思いつかなかったんだよ。


 

 陽翔オレは呆れた顔で、悪役オレを見ていた。


 



 悪役と主役たちはどこまで行っても敵だ。

 だけど、この世界はゲームとは何処か違う。


 ゲームからかけ離れたヒロイン達の成長

 互いに興味を示さない主人公とヒロイン

 発生しないイベント

 ゲームに存在しない数々の要素……


 それでも、何処かゲームと同じように進行していき

 別の世界だと切り捨てるにはあまりにも符合する点が多く、

 関係ないと目を逸らすにはあまりにも似通い過ぎている世界。



 ──じゃあ、どうすれば悪役が生き残れると思う?

 逃げる……だけじゃ、駄目だ


 ──当然だ。世界がゲームに沿って動く可能性がある以上

 ──逃げた所で悪役が死ぬ可能性は完全には消せない。

 ──てか、そもそも俺が立ててやった3つの作戦の何処に




 ──逃げる(・・・)なんて文字が書いてあった?



 

 陽翔(オレ)が立ててくれた3つの作戦はシンプルだ。

 その何処にも逃げるなんて文字はなかった。

 一番初めから……最初からずっと勘違いをしていた。

 陽翔(オレ)が立てた作戦はたったの3つだ。


 強くなる

 ヒロインと関わらない

 主人公に優しくする


 最初からずっと、この3つだけ(・・・・・・)だ。

 作戦を思い出す時は、いつだってこの3つだけだった。



 18歳の成人の儀までに逃亡する……

 ゲームに登場するキャラを信用しない……

 大好きな父上や母上を捨てて、国を捨てて生き延びる……



 そんな文字は一つもなかった。

 


 ──そうだ。何を勝手に勘違いしてんだ?

 ──馬鹿な奴は勝手に理解不能な解釈をするって言うが……

 ──正しくそれだな、その捻くれ具合は悪役らしいちゃらしい。



 何度も何度も思い出した。

 何度も何度も確認したのに……



 ──逃げの選択肢なんてもんは端から存在しねぇんだよ

 ──ヒロインに関わるなとは言ったが、逃げろなんていつ言った?

 ──国外逃亡?ラーガルを捨てる?そうやって逃げ延びても

 ──それはただ死んでないだけだろが……



 ──そうやって生き延びてお前……満足なのか?


 

 前世の陽翔(オレ)は理不尽な現実に屈することは無かった。

 不幸な身の上を呪うことなどしなかった。

 周囲に当たる事も弱音を吐く事もなかった。

 陽翔(あいつ)は……ただの一度だって逃げなかった。

 そんな奴が逃げる等と言う選択肢を用意するだろうか……

 否、するはずがない。


 生存戦略と言うからには俺は正しく生きなければならない。

 それは惰性や怠慢の生ではいけない。

 陽翔(オレ)の為にも、悪役(オレ)は生を謳歌しなければならない。

 

 つまり、生存戦略は初めから逃げる為のものではなく……


 いつか世界が悪役(オレ)を殺しにくる前に



 ──悪役(おまえ)主役(せかい)攻略(ころ)す為に立ててやった指標だ


 ──逃げてんじゃねぇぞ

 ──目を逸らしてんじゃねぇぞ

 ──欲しい物があるなら戦え

 ──生きたいなら抗え


 ──たったそれだけの事が何でわからねぇんだよ

 ──俺の記憶がある意味をその空っぽの頭では少しは考えろ



 オーランド=グリフィアを害する可能性がある人間

 その全てを1人ずつ攻略(ころ)していく

 各キャラクター毎にどのように攻略(ころ)すかは考える必要があるが


 ──それくらいは悪役(おまえ)が考えろ


 ああ……だからリリアナの攻略はあれでいいはずだ。



 リリアナ=フレスヴェルグは最中最強のキャラクターだ。

 なるほど、その通りだと思う。リリィの強さはもう少しすればグレゴリーをも凌駕するだろうし、更に鍛え上げればこの世界でリリアナに勝てるような人間は存在しなくなるかもしれない。


 だから、俺はそんなリリアナをあえて戦闘で倒す事にした。

 作中最強のヒロインの武器で致命傷を負った悪役が、それでもリリアナに勝つ。それも不意打ちや奇襲などでは無く、たったの一撃だけとは言え全力のリリアナを相手に悪役が勝利を収めると言う、完全勝利を目指す事にした。


 その為にはまず馬鹿みたいに頑固なリリアナを引き留めなければならないが、考えれば考える程これが意外と難しい。

 前世の記憶やゲームの話をすること自体は何の問題も無いが、それで彼女を説得できる可能性は限りなくゼロに近い。この世界の人間が理解できる限界を超えているからな。或いはフェリシアやマリアなら理解してくれる可能性もあるが……話を聞いてくれる状態にないリリアナに意味不明な話をしても余計に混乱させるだけだ。


 そして、説得と謝罪に失敗してリリアナが逃亡すればもう二度と見つける事は出来ないだろう。学園と王都、リリアナ=フレスヴェルグがこの外に出てしまうともう二度と見つけられないだろう。これも悪役にとっての1つの勝利だ。リリアナがリリィじゃなければそれも良かったが……俺はリリィを諦めるつもりはない。


 だから、リリアナが絶対に逃げるわけにはいかない状況を作り出さなければいけないが、これが難しかった。混乱したリリアナが逃亡を諦めその場に踏み止まり、尚且俺と戦わなければならない状況を作り出す、それも俺が勝てる可能性がある戦いの場を用意しなければならない。

 しかし6年前ならいざ知らず、本気のリリィとぶつかって今の俺が勝てる可能性はどれだけ高く見積もっても0%だ、不可能だ。オーランドは最早リリアナに絶対に勝てない。この世の中には絶対なんてものは無いと言うが、絶対に勝てないと断言できるだけの圧倒的な力の差が出来てしまっている。

 だから、0%の勝率を1%でも積み上げる決戦のフィールドを用意しなければならなかった。



 ──で……ああなった、と。



 これはゲームではあってはならない事のはずだ。

 ただの舞台装置である、やられやくの悪役(オーランド)が……

 限定的な条件下とは言え最強のヒロインを下す。


 そんな事があっていいはずがない。

 結果、ゲームのリリアナルートと現実世界は大きく乖離する。

 或いは、この世界のリリアナルートは潰える。

 後は、リリアナが王都から去れば悪役の完全勝利だ。



 ──馬鹿だとは思っていたけど本当に馬鹿だよな

 ──何だこのガバガバの作戦は

 だってリリアナルートの記憶だけ無いし……

 難しい作戦考えるほど俺は頭がよくないんだよ……

 ダメだったか?


 ──いいや………あれでいいさ

 ──お前は、それでいい。

 目の前で陽翔(オレ)が笑った気がした。

 


 ──いいか?ゲームと世界を1つずつ切り離せ


 ──悪役(おまえ)に絡みついた死亡フラグを1つずつ切除しろ

 ──悪役(オレ)が立てた生存戦略ってのはその為のスタートラインだ

 ──逃げる為に立ててやった作戦じゃねぇよ

 ──ましてや、周りの誰かを不幸にする為のものじゃ断じて無い



 ──ヒロインに関わることは無い

 ──悪役(おまえ)が目指す場所に主人公を導け

 ──どんな逆境であっても負ける事のない強さを持て


 ──どう解釈したらあんだけ捻じ曲がるんだよ。

 ──意味を間違えるな

 ……すまん



 確かに、悪役はどこまで行っても悪役だが、

 だからと言って悪役が主役になれない、なんて事はない。



 悪役に転生してしまった俺が生きる為に立てた作戦


 これは陽翔(オレ)が俺の為に立ててくれたものだった。

 前世の記憶が蘇り、混乱していた俺に……

 馬鹿で愚かな俺でもわかるようにと……

 陽翔(オレ)の記憶が提示してくれた。


 志半ばで命を落とした陽翔(オレ)の記憶が、

 次こそはと託してくれた……

 生きる為に抗えと示してくれた……

 作戦とも呼べないたった3つの作戦。


 悪役として生まれた俺が生きる為にどうすればいいか

 その為だけの作戦だった。



 これは、逃げる為のものでもなければ……

 ──誰かを不幸にする為のものでもねぇよ


 この生存戦略は初めから……


 ──そうだ。悪役なら悪役らしく、バッドエンド(・・・・・・)を目指せ

 ──主役キャラの悉くを倒して悪役が残ればそれはもう主役だ

 ──主人公が目指す結末がハッピーエンドであるように


 ──悪役の目指す結末はバッドエンドだ

 ──そこでは悪役(おまえ)こそが主役だ

 

 ──強くなれ

 ──ヒロインに関わるな

 ──主人公に優しくしろ


 ──これは最初から全て悪役おまえが戦い抜く為のものだ



 主人公がハッピーエンドを目指すのは当然だが、

 悪役がバッドエンドに向かうのもまた、当然の事だよな。




 ──ああ。だから悪役おまえはバッドエンドだけを目指せ






 ──だが勘違いするな





 ──悪役(おまえ)が目指すのは

  俺が目指すのは




 ──誰一人欠ける事なく誰もがみんな幸せになれる

  主役(てき)悪役(みかた)も関係なく笑顔になれる






 ──大団円(グランドフィナーレ)の更に向こう側にある

  『グランドフィナーレの向こう側』にある




 

 ──最高の結末バッドエンド

   最高の結末バッドエンド、だろ?





 

 陽翔の記憶

 ゲームの記憶

 オーランドの記憶


 暗闇に浮かんでは消えていく思い出はどれもあやふやで

 全部覚えているようで全部覚えていないような

 確かなものが何も無い、そんな暗闇の中で……



 確かに、悪役オレ陽翔(オレ)と目が合った。





 ──わかってるならさっさと起きろ、残された時間はそう多くない

 ──恐らくタイムリミットは18歳の成人の儀までだ

 わかった


 ──ああそれと、俺が悪役おまえと話すのは多分これで最後だ。

 そう…………なのか?


 ──そもそも俺はただの記憶だ

 ──陽翔(オレ)オーランド(おまえ)で、お前は俺だ

 ──いつまでも、死んだ人間に縋ってんじゃねぇぞ

 ………わかった



 ──わかったならさっさと起きてリリアナに止めを刺せ

 ──死が追い付く前にお前が望むバッドエンドに辿り着け

 ──じゃあな



 まったく……無茶を言う……

 




 きっと今見た景色も、今した会話も

 目が覚めると共にほとんどを忘れてしまうのだろう。

 

 だが、決意は固まった。

 やるべき事は定まった。


 陽翔と話せてよかった。

 陽翔(おまえ)悪役(オレ)で良かった。


 


 じゃあな……陽翔


 まずは1人、リリアナとの決着をつけてくるよ。


お読みいただきありがとうございます!

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