scene.46 悪役転生者の生存戦略Ⅱ
暗闇の中、悪役は陽翔と対峙する。
世界はいつだって悪役が望まない方向に進んでいく
──今更じゃないか?
もう何度も諦めてきた。そう言うものなんだと。
──そうだ、そんな事は初めからわかっていただろ?
『きっと……リリィはまた逃げてしまいますわ』
だから俺は今度こそ限界を超える事にした。
──そうだ、それは何のために?
『約束するよ。』
短剣を握りしめ、俺は悪役の限界を超える事にした。
──お前は何のために、短剣を握りしめた?
『俺はリリィの話をいつだって信じるし、リリィの事をいつだって見ている。それはマリアの話をきいたって変わらない』
俺の死が不可避であっても、この未来だけは掴もうと決意した
──それは何の為だ。どんな未来だ?
『オーリー、私達2人で誰よりも強くなるのよ!いいわね!』
そうだ、今度こそ俺は悪役の限界を超えると決めた。
──だったら悪役はこんな所で何をしている?
──判断が遅すぎる、決意が弱すぎる
──世界に流されるのはここまでにしろ
──いい加減に目を覚ませ、オーランド=グリフィア
目を…?
──俺が立てた生存戦略を思い出せ
──馬鹿な悪役でも覚えられるたった3つの作戦だ。
ひとつは……1人で生きていく為に強くなる事
──そうだ、強くなれ。誰よりも強く
ひとつは……ヒロイン連中に絶対に関わらない事
──そうだ、悪役の役目を忘れるな
ひとつは……主人公には出来るだけ優しくする事
──そうだ、目的を間違えるな
──で?それの何処に仲間を泣かせるなんて文言が入ってんだ?
──誰よりもゲーム展開を望んでるのは外ならぬお前自身だ
違う!俺はそんな……
──世界が気に食わないなら少しは変える努力をしたらどうだ
俺は頑張って……死なないように……
──悪役だからっていつまでも甘えてんじゃねぇぞ
そんなつもりは無い!俺はいつだって……
──周囲の好意から目を逸らすのをやめろ、虫唾が走る
──鈍感系主人公のつもりか?
──ちんけな悪役の癖に調子に乗ってたのか?
だってあいつらはヒロインで、敵で……
──ふざけた事ばっか言ってんなよ
──口を開けば甘えた事ばかり言いやがって
──いい加減にしろよ………オーランド=グリフィア
──俺の記憶がある意味をその空っぽの頭でよく考えろ
──俺が立ててやった生存戦略は誰かを傷つける為のものじゃない
──悪役転生者の生存戦略の本当の意味から目を背けるな
──ゲームを追い駆けるのはここまでにしろ、オーランド
──世界を動かせ、悪役ならそれが出来る。
悪役とはそういうもの……なんだよな
──そうだ、悪役には世界を動かす義務がある。
悪役がやらなきゃダメなんだよな………
──そうだな……まずは手始めに最強のヒロイン………
──リリアナ=フレスヴェルグを殺せ
いきなりリリアナか……リリアナルート知らないんだけど?
──その方が好都合だ。まずは1人……決着を付けろ
そう……だな、そうかもしれない
──やり方はわかるか?
わかる……と思う
──じゃあ好きにやれ
わかっ…………
◇ ◇ ◇
「……………………た……」
「オーランド様!大丈夫ですか!疲労が溜まっているご様子です、どうかもうしばらく休憩を──」
「オーリー!突然意識を失うから心配したではありませんの!」
「オーリー!よ、よかった……」
意識が浮上すると同時に目に飛び込んできたのはフェリシア、マリア、アイリの3人の不安に満ちた顔だった。
「寝不足と疲労の状態で<纏>を使った反動でしょう、限界に近い肉体を無理やりに動かした為かと思われます。オーランド様、どうか一時休息を。リリィであれば私が引き摺ってでも──」
見ると、フェリシアが不安な顔を隠しもせずに必死になって話かけていた。笑顔と開眼時の怖い顔以外のフェリシアを見るのは初めてかもしれない。貴重なシーンだが……
「いいや、問題ない。どのくらい気を失っていた?」
「ほんの5分程ですが、そんな事ではなく──」
「そうか、少し寝てスッキリした。」
ベッドに寝転んで女の子3人に介抱されている場合ではない。
「で、ですが──」
「ありがとうエリー……でも、本当に大丈夫だよ。それと、マリア──」
「な、なんですの?何か欲しいものがございましたら今すぐに─」
「違う違う……ごめんな。此間は……酷い事を口走った。本当に悪かったと思う。許し──」
「そんなのどうでもいいですわ!今は休んでくださいませ!」
こいつは相変わらず……
本当に……相変わらずだな……
「ああ、もう少ししたら休む。それからアイリ─」
「は、はい!オーリー大丈夫、ですか?」
「色々心配かけたみたいだな、すまんな。兄失格だな、はっは!」
可愛い妹に不安な顔をさせて、何やってんだかな……
「い、いいよ。兄失格でも──」
不思議な夢を見たと思う。
俺が俺と話をする不思議な夢。
自問自答…………とは、少し違うと思う。
正直、身体はまだ睡眠を欲しているし起きあがるのもだるくて仕方ない。だけど、動くなら何も問題ない。
やるべき事はわかった…と思う。
「…よっ……と」
エリーに手を引かれながらベッドから立ち上がる。
「オーランド様、本当にお休みになられなくて宜しいのですか?先ほども言いましたが、リリィであれば私が必ず見つけ出してオーランド様の前に連れてきます」
「ありがとう。でも、エリーこそ休んでてくれ。またリンドヴルムから寝ないで来たんだろう?エリーに倒れられたら俺はそっちのほうがよほど辛い……な?」
そう言って、俺はフェリシアの頬に手を当てた。
リンドヴルムから駆けつけてくれたフェリシアの顔を全然みていなかったが、化粧でごまかせないくらいに彼女の顔にも疲労の色があらわれている。婚約者にこんな顔をさせて心配かけさせて……何やってんだよ俺は……
「ひゃッはい!休みます!」
フェリシアの顔がボッと赤くなった……
やはり疲労を隠していたようだ。
「じゃあ、俺はちょっとリリィを迎えに行ってくるよ」
「場所はわかりますの?」
「ん-ー……まあなんとなくな。違ったらまた明日の朝からみんなで探そう」
「わかりましたわ。私も一緒に─」
「いや、俺1人で良い。心配すんなって……マリアはまた明日の朝にでもうちに来てくれ、部屋の修繕費とか色々話さなきゃな、はっは」
「そんなものはどうでも良いのですが……わかりましたわ」
それだけ言うと、俺はリリィがぶっ壊したマリアの部屋のドアをくぐり、粉々になった窓の外から一直線に外に飛び出した。
その手に短剣を握りしめて………
確証なんてものはないし、居ない確率の方が高い。
それでも俺は今度こそ悪役の直感を信じることにした。
まずは1人、ここで決着をつける。
リリアナ=フレスヴェルグは今日この日をもって殺す。
さあ、生存戦略を始めよう
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