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45/59

scene.45 そして、くだらない世界は終焉を迎える



「あの日………あの子はオーリーの言葉を聞いて……それで取り乱しておりますの。オーリーの言葉の真意は分かりかねますけれど……どうかリリィを見てあげてはくださいませんか?」


 マリアが何か言っている。


「お前は……」


「確かにリリィはフレスヴェルグではありますが……だからと言ってオーリーを殺すなどあるはずがないではありませんか」


「何を言って……」


 何言ってんだこいつ……


「リリィはオーリーを殺すかもしれないなら死にたいとまで言っていて……ですから、オーリーもフレスヴェルグに対してのお考えをどうか改めてくださいませんか?」


「リリィが……リリアナ?」


「はい。リリアナではありますが……リリィはリリィです!オ、オーリーに害をなすなどある筈もなく……グリフィアに仇なすなどあろう筈もなく……」


「いや……………それは………」


 呼吸ってどうやるんだっけ………


 苦しい………



「そうですか、リリィが……オーランド様を殺すだのなんだのと少し事情が呑み込めませんが、フレスヴェルグとはまた古い名が出てきましたね。他に知っている事があるなら話しなさ………オ、オーランド様!」

「オーリー!」

「オーリーッ!」


 マリアの言葉を聞いたフェリシアはやはり、いつも通りだった。

 リリィがフレスヴェルグだとして、それが何だと言うのかと。




「──────────嘘だ。」



 でも俺は、マリアの言葉を上手く飲み込むことが出来なかった。


 足元から崩れ落ちる……と言うのだろうか……

 目の前はさっきからずっと白いままで………

 ギリギリで立っていた全身から力が抜けた。

 


 リリィがリリアナ=フレスヴェルグ?


 何の冗談だ……そんなはずはない。

 リリィと初めて会ったのは完璧に偶然だ。

 親もなく親戚もおらず、薄汚い衣服に身を包んだ汚い子供

 リリィがリリアナだと?

 馬鹿も休み休み…………

 そんなはずはない…………

 彼女との出会いは偶然だ

 俺はそんなリリィだから……全幅の信頼を寄せて………

 ゲームには居ないキャラクターだと思ったから仲間に……

 

 それに性格だってゲームとはまるで違うじゃないか

 マリアは何を言ってるんだ。


 わけがわからない



 わけが……


 わからない……



 立ち上がる気力もなくした俺は、フェリシアとマリア、アイリに支えられるようにして何とかしてその場に踏みとどまったが……


 3人が必死になって声をかけてているが、どうにも声が遠い。

 みんな何て言ってるんだろう


 

 あーあ……



 なんか………ちょっと、疲れたな。

 



 そして、俺の意識は暗転した。



 ◇ ◇ ◇



 思い出すのはいつだってあの日だ。



『なんであんたみたいなゴミ野郎が私よりも冒険者ランクが高いのよッ!!!』



 溝掃除をしている最中に襲い掛かってきた女の子

 赤い髪の粗野な女の子。

 でも俺はそれで良かった。



 俺には……それが良かった。

 


『オーリー、私達2人で誰よりも強くなるのよ!いいわね!』



 思い出すのはいつだって、路地裏の約束だ。


 

 前世の記憶を思い出したあの日から

 俺の目にはこの世界が酷く歪なものに見えていた。


 オーランド=グリフィアの身体と記憶

 飯塚(いいづか) 陽翔(はると)の記憶と知識。

 2つの記憶はごちゃ混ぜで、自分という存在が酷く曖昧になった。

 俺は何がしたくて、どうしたいのか、

 俺はオーランドなのかハルトなのか、一体俺は誰なのかと思った。


 魔法などと言う超常の力が平然と蔓延り

 ゲームの世界と同じ名前の人間が居て

 当たり前のようにゲームの主役が学園に集まり

 調べれば調べる程ゲームと一致する狂った世界


 決めた事は何一つ上手くいかず

 やりたい事よりもやるべき事が多くて

 出会いたくもない人間にばかり出会う

 

 早く捨てれば楽になれるのに……捨てられなくて

 ちゃんと嫌いにならないといけないのに……嫌いになり切れず

 もしかしたらと……幸せな明日を夢見る



 俺はどっちつかずな自分が……この世界で一番……嫌いになった。



 それでも、俺は頑張ろうと思った。

 

『オーリー、私達2人で誰よりも強くなるのよ!いいわね!』


 馬鹿な女の子と約束をしたから。

 馬鹿な女の子が仲間になってくれたから。


 出来るはずがない目標を自信満々に喋る馬鹿な女の子

 どうしようもなく馬鹿で、どうしようもなく弱い女の子

 わけのわからない世界を1人で生きようとする女の子


 わからない事は多いし、難しい事も多い

 それでも、こんな小さな女の子が頑張っているのなら、と。


 リリィが側にいたから、俺は頑張ろうと思った。

 いつか来る別れの時まできっと乗り切れると思った。

 だってリリィはゲームに居ない子だから。

 この子が強くなれるなら、この世界にもきっと救いはあるんだと。

 悪役にも仲間が出来るんだと。

 オーランドは1人では無いのだと。



『彼女こそがリリアナ=フレスヴェルグです。リリィの本名はリリアナ=フレスヴェルグ……彼女はフレスヴェルグの最後の生き残りですわ』



 あー………………



 そっか



 結局、悪役(オレ)は最初からずっと1人だった。


 心の中にあった何かが……乾いた音を立てて折れてしまった。

 



 仲間だと思っていた。

 この世界で背中を預けられる唯一無二の仲間だと


 救いだと思っていた。

 この世界を乗り越えられる誰でもない誰かだと


 だが違った。


 彼女は仲間ではなかった……

 彼女は俺の救いではなかった……


 この世界は変わらない。


 悪役の周りには正義が集まるように出来ている。

 そして……正義は最後に悪を討つように出来ている。


 仲間など幻想だった。

 俺はやっぱりこの世界に1人で……

 悪役に生存するルートなんてものは存在しないのだろう。



 もう疲れた……




『それでもどうか……リリィの言葉に耳を傾けてあげてくださいませ。いいえ……リリィを見てあげてくださいませんか?』


 

 ああ……


 でも……


 


 マリアの言葉を思い出した俺は暗闇でそっと目を開けた。



 何もない暗闇には誰もいなくて……




 誰もいない世界には悪役(オレ)が居て……





 目の前には………陽翔(オレ)が居た。


お読みくださりありがとう御座います!

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[一言] 何言ってるかさっぱり分からないです
[良い点] 一気に読みましたが、面白いですよ! [気になる点] 勘違いものなんで、しゃーないですが、あまり各ヒロインに真剣に向き合えてない感が。 ゲームとは違うんやと認識した上でハッピーエンドを目指…
[一言] 正直オーランドは一部の時の方がかっこよかったからなぁ… 2部に入ってからはゲームがスタートしたからかあまりパッとしなかった ここでようやく転換点が来るか…… そろそろ男を見せてくれ…
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