scene.29 馬車は壊れるもの
1学期が終わり、ラーガル学園の生徒は帰省したり学園に残ったりそれぞれ好きなようにしていたが、俺はもちろん一度王都に戻る側の生徒だ。
「よーし帰ろう…………と言いたい所ではあるが………貴女方には自分の馬車がありますよね?」
怒ってはならない。笑顔を忘れるなオーランド=グリフィア
オーランドはヒロインとは敵対しないし、主人公にはいつだって優しい男だ。どんな状況であってもだ。
いざ王都へ向かおうとする馬車の前には、
「何を言うのですかオーランド様。私は婚約者であり、ギルバートの友です。席を同じくする事に何の問題があるのですか?」
俺の後ろには笑顔のフェリシアがいて、
「馬車の旅路は長く退屈なものではありませんこと?私が手取り足取りオーリーのお相手を務めさせてイタッ!!何をするんですの!」
「大丈夫ですオーランド様!私がこの女よりお守り致します!オーランド様には指一本触れさせません!あ、あと、私もギルバート様とお友達ですので同じ席でも問題ないですよね!」
その少し後ろにはマリアと、マリアの手を当たり前のように叩いたケルシーがいるのだが……問題ないかどうか聞くならフェリシアではなく俺の目を見て質問しろ。
「少々狭くなりますがいいでしょう。許可します」
そして当たり前のように笑顔で質問に答えるフェリシア
あれ?これ俺の家の馬車じゃなかったっけ?
「でも流石にこの人数は無理だ。馬の負担だってあるし座る場所がない。うちの馬車に乗るのは構わないが、俺とギルバートはリンドヴルムの馬車に乗って帰りたい」
「そうですか、申し訳ありませんオーランド様……リンドヴルムの馬車は壊れたのでお貸し出来そうにありません……本当に心苦しいです」
「嘘をつくな!!あそこにあるのはなんだよ!!」
俺が指差した方には龍を象ったリンドヴルムの家紋がついた馬車があった。どうみても壊れて居ないし馬もピンピンしている。
「ああ、では、リンドヴルムの馬車はもう少しで壊れますのでお貸し出来ません……オーランド様の願いを聞き入れられず心苦しい限りです」
「そ、そうですか」
嘘をつくならそれでいいけど、心苦しいと言うならせめて笑顔で言うのは止めてください……
「ケルシー様、アトワラスの馬車もあちらにあるではありませんか?友であるギルバートは私の馬車に置いていきますので、今回の王都までの道だけでも盟友として馬車をお借りすることは出来ないでしょうか?」
「え!?僕は!」
ギルが何か言おうとしているがここは却下だ
「アトワラスの馬車も壊れる事になったので駄目です!」
「そ、そうですか」
壊れる事になったって何だよ
ギルバートと帰りたいなら勝手にグリフィア家の馬車使って、道中好きなだけ中で乳繰り合ってくれても一向に構わないという俺の優しさが伝わっていないのか?
「じゃあ余ってるマリアの馬車使わせて」
「いいですわよ!私も同乗イタッ!!いですわねって、フェリシア様、ど、どうされましたの?」
今度はフェリシアがマリアの頭を叩いた。
マリアはフェリシアにだけやたらと従順だが、仲が良さそうという感じもない。頭を叩かれたのに、ケルシーの時とは違ってフェリシアには笑顔でお伺いを立てているし、この2人の関係はちょっと気になるな。
「私とケルシーもマリアの馬車に乗りたくなりました。許可してくれてありがとうございます」
マリアがなんか言う前に勝手に自分で許可したぞ!?
「そうですね!カラドリアの馬車は下品にも無駄に大きいですし、あちらであれば全員で帰れますね!」
「おーーほほほほ!当然ですわ!カラドリア家が保有する物はその全てが一流!6人でも7人でも余裕ですわ!」
ケルシーは褒めていないと思うが、マリアは上機嫌に笑っているしまあいいか。と言うかそれならヒロイン3人とギルバートがマリアの馬車に乗ってもらって、俺はグリフィアの馬車でリリィと2人で久々にのんびり出来るのでは………?
いいね!
「そういう事なら俺とリリィはグリフィアの馬車に乗るから、ギルバートと3人はー」
「じゃあグリフィアの馬車も壊れました。さあオーランド様、マリアの馬車に行きましょう」
「じゃあって言ったよな?!壊れてないからな?うちの馬車は壊れてない!」
何がしたいんだよこいつらは!
「リリィからも何とか言ってやってくれ、いい加減に面倒になってきた。」
主人公とヒロインはあっちの馬車に押し込めて2人でのらりくらりと馬車の旅を楽しもう。リリィもその方がいいだろ。
「オーランド様…………グリフィアの馬車は壊れました」
「お前もかいッッ!!!」
その後、フレドリックがゲラゲラと笑いながらリンドヴルムの馬車に乗り込み、ダニエルもまた笑顔で手を振りながらアトワラスの馬車に乗り込んでいく姿を目にした。
なんなんだよマジで………
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