scene.23 頼れる仲間は、しかし…
部屋に飛び込んできたリリィのいうアウトが何なのかわからないが、
「な、何の事でしょうか?」
シャーロットは目に見えてうろたえ始めた。
「残念ながら私の目は誤魔化せません」
赤い髪と赤い瞳のメイド服の少女、我が専属側仕えリリィは淡々と話している。
「ま、待ってくださいリリィ!落ち着いて話し合いをしましょう」
「申し訳ありませんシャーロット様。私の忠義は王家には御座いません。我が主はオーランド様であり、フェリシア様でございます。主からの命は絶対にございます。そして、フェリシア様からはただ一言『報告せよ』とだけ仰せつかっております」
「違うんです!何かの誤解です!」
「それを決められるのはフェリシア様です」
慌てふためくシャーロットと、いつも通りのリリィ。
昔シャーロットに暴言を浴びせられて意気消沈していた少女が強くなったもんだ……
しかし、話が読めない。
シャーロットはラーガル王国の王女だぞ?そんな相手に短剣を向けるなど冗談では許されない。
リリィは今すぐに斬り殺されても文句は言えないし、リリィを放置していた俺もまたこの場で処分されても何の文句も言えない。どう考えても圧倒的にヤバイ事をしているのだが……
「オーランドから言ってあげてください!私達は勉強をしていただけだと!」
「シャーロット様……私は嘘は好きません」
どうみても、リリィの方が優勢だ。どういうことだ……
相変わらずこの世界の展開はよくわからん。攻略ヒロインではないシャーロットとゲームに関係ないリリィの絡みは相変わらず混沌としているな。
だが、とりあえずは……
「リリィ、短剣を降ろせ。無礼が過ぎる」
「はっ!」
この状況を第三者にみられたら俺は今この瞬間に破滅する。
まずは剣を降ろせリリィ!
「それと、あー……なんだ、勉強をしていたのは事実といえば事実だ」
「それはどのような類の勉強でしょうか?ベッドの上で身体を重ねなければ出来ない勉強をされていたのですか?」
めっちゃ見られてた!
部屋に飛び込んできた瞬間に見たのか、流石リリィだぜ!
「違うんです!ギルバートに勉強をおしえていたんです!」
「そしてギルバート様の消えた隙に、オーランド様を押し倒されたのですね」
顔を青ざめているシャーロットだが、何もそんなにびびらなくてもいいだろ。
確かにリリィの言うとおり概ね正解ではあるが、ただの悪ふざけで何もありはしなかったんだ。そんなに怯えなくても……いやだめだ!
フェリシアに報告するって言ってた!!ダメだ!死ぬ!
「ベッドのはなんていうかあれだ!こう足をもつれさせて転んで!そこにたまたまリリィが来たってだけで!」
「そそ、そうですよリリィ!」
シャーロットがフェリシアの何に怯えているのかはわからないが、俺だってフェリシアは怖い。
ここは一蓮托生でこの場を乗り切ろう!全部お前の悪ふざけのせいだけどな!
「……オーランド様が悪感を抱いていないのであれば不問としても良いですが……どちらにせよフェリシア様にはお伝え致します」
おいおいおい死んだわ俺……
マリアが俺を襲おうが引っ付こうが何をやろうがフェリシアはいつも平民との遊びは好きにすればいいとか言って笑って流しているが、シャーロット王女やケルシーのような貴族がふざける事をあいつは決して許さない。
彼女にとってのおふざけの基準が何処にあるのかは知らんが……実際、フェリシアの前で俺に無礼を働いた何人かの貴族は二度と姿を現さなくなった。何か知っているかと思って聞いたこともあったが『そのような方にお会いしましたか?』と言って何も教えてくれなかった。怖い。
それもあって、俺は基本的に誰とも絡みたくない。
もちろん、友達なんて作ってもどうせ18歳になれば全員捨てるのだからそれなら最初から要らないってのが一番の理由だ。
横を見ると俺同様に、シャーロットは虚ろな目をしている。
わかるわ……怖いよな、フェリシア。
「……お2人でギルバート様に勉強を教えていたという事実は、どちらにせよお伝え致します」
あ、なーんだ。それならいいや。
「そ、それでしたら大丈夫ですね……?」
リリィの言葉を聞いて瞳に光が戻ったシャーロットが俺の方を向きながら自信なさげに話しかけてきた。
「なんだ……そんなのいくらでも言ってくれていいぞ。っていうか、フェリシアだって俺が部屋でギルバートに勉強を教えているの知ってるだろ?今更報告することなんてあるのか?」
「フェリシア様が把握されているのはオーランド様とギルバート様の男性お2人での密室での勉強です。そこにシャーロット様が居る事実は知りません」
「まあ、そりゃそうか……」
男同士で勉強するっていう話しかしてないしな。
だからなんだっていう話だが。
「あれ?リリィさん、こんにちは!」
適当に話が落ち着いた所でギルバートが戻ってきた。
「こんにちはギルバート様」
「そんな……あの、僕の事は呼び捨ててもらいたいのですが…」
それもそうか……平民は戸惑うよな。
「だそうだ。リリィ、これからはギルバートかギルのどちらかで呼ぶようにな」
「畏まりました」
「おかえりなさいギルバート」
「戻りました!」
シャーロットもギルバートを見てほっとしたのか、表情が柔らいでいる。
これに懲りたらさっきみたいな事は俺じゃなくてギルにするんだぞ。
大丈夫、俺は口の堅い男だ。
お前がギルとナニをしようが誰にも言わない。
頼むから俺の死につながる悪ふざけだけはしないでくれ……
「さ、さあ勉強をするぞギル!お前は少しだけ他の生徒から遅れているからな!」
「そそうですね!頑張りましょうギルバート!」
「はい!」
その後、リリィ監視があるせいでベッドでゴロゴロする事もできなくなってしまった俺と王女殿下は淡々と勉強を教えることになった。
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