scene.22 有難い妄想と現実
「決まりましたね……さあギルバート。勉強を再開しなさい。わからない事があれば私とオーランドがなんでも教えてあげるわ」
王女様はもしかして暇なのだろうか?
来年には三年生だし、そうじゃなくても生徒会長だというのに、そうじゃなくても王女だ。俺のように目的があるならともかくラーガル王国の王女殿下が平民のギルバートの勉強に付き合うとか正気の沙汰ではないと思うんだが……
さっきは俺が護衛騎士になるのだからどうのこうのと言っていたが、やはりアレは口からでまかせか?
王女ともあろうものが道端で拾った平民を学園に招待し、男子寮まで会いに来たという事実を指摘されたから慌てて口から出た言い訳か?
有り得る…だろうか?いいや、有り得るな。
シャーロットがこの見目麗しい主人公に心奪われていると考えればいきなり押しかけてきた理由もわからなくはない。生徒会室で勉強をさせようとするのも、彼を側に起きたいからと考えれば辻褄があう。
今まで接触を控えていた点は多少不自然に感じたが、機会を窺っていたと考えれば納得もできる。
自分が推薦した平民、その平民が入学してきて王女がすぐに声をかけて四六時中傍に置くなんてのは世間体があまりにも悪い。
だが、今のタイミングで生徒会にこいつを連れていったとしても周りの目からは俺がギルバートを連れまわしているように感じる。そこに王女の意思が介入しているように見えないだろう。ここ最近俺がギルバートに構っているのは一年の間では有名らしいしな。
……やるなシャーロット様……
すぐに手を出さず、虎視眈々と機会を窺っていたとはな。
これも1つの賭けになるが、もしこのシャーロット王女が『グランドフィナーレの向こう側』に登場する最後のヒロイン、隠しヒロインであるならこれは最高の展開だ。
もし仮にそうなら、ヒロインが主人公に既に惚れているという事になる。
確かに、あのゲームの隠しヒロインが誰なのかは今となっては知りようがないのですぐに判断を下す事はできないが、ファンタジー世界の学園を舞台にしたギャルゲー、導入は自分が助けた王女からの一通の招待、それにあの美しい立ち絵の数々……
シャーロットがヒロインじゃなければおかしいくらいだ!
主人公を育成しつつ、シャーロットとギルバートを応援する。
この作戦でいこう!
俺に有るまじき好展開の予感に、ベッドの上に座りながら思わず頬が緩んでしまった。
「どうしたのですか?嬉しそうな顔をして」
「おっと……」
近い近い離れろ王女!男のベッドに座るな!
愛しのギルバートに誤解されるぞ
ニヤニヤと自分好みの有り難い可能性を妄想しているうちに、気がつけばシャーロットが隣にいた。
なんという距離感の近さ。ケルシーといい、シャーロットといい、ラーガルの貴族はもう少し距離感を保った方がいい。
「シャ、シャーロット様。少し距離が近いです」
「貴方は私の護衛騎士ですからね」
そう言いながらじりじりとにじり寄って来た。
よかった。ここにギルバートが居…………居ない!?
ギルが勉強しているはずの机には誰も座っていなかった。
「ちょちょっと!ギルはどこに?」
「先程トイレに行くと言って出て行ったではありませんか」
気付かなかった、考えに没頭しすぎていたか。
「ですので、今は2人きりですね。久しぶりですね…2人だけの時間は」
「そ、そうですね。あの、どうして手を握るのでしょうか?」
「オーランドは私の護衛騎士ですからね」
「待て待て待て!なんの言い訳にもなってないだろそれ!!」
ぐッ!!なんて力だ……手を捕まれた瞬間から<纏>を発動しているというのに、俺の身体強化を軽々凌駕する力でねじ伏せられる。これが黄金の剣と呼ばれる大陸の覇者の血!!なんだこいつ!!
「な、ロティーの狙いはギルじゃないのか!」
「何を言っているのですか?」
ベッドに押し倒されてしまったが、振りほどけない。
なんだこの力は…この女<纏>発動してないぞ!?
この一見華奢で美しい女性の何処にこれだけの力がある!
ラーガル王家の血やべぇ……めっちゃつえぇ!!
護衛護衛ってこんな奴を何から守ればいいんだよ!!
しかしそれよりも、
フェリシアにこんな光景を見られたら絶対に殺される!!!
「ちょ、ちょっと!冗談が過ぎるぞロティー!」
徐々に近付いてくる見惚れる程に美しいシャーロットの顔と吐息にやばいと思った瞬間、部屋のドアが勢いよく開く音がした。
それと同時にベッドの上から信じられない速度でシャーロットが飛びのき、そしてベッドの横には
「あら、リリィ。お邪魔しております」
「ごきげんようシャーロット様……残念ながらアウトでございます」
短剣を抜剣したリリィが居た。
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