scene.21 オアシスは枯れた、もう無い
「ごきげんようシャーロット様。ですが、ここは男子寮ですよ供回りも付けずに何をしているのですか」
俺に用があるわけじゃないよな?
今日は生徒会の仕事ないもんな?そうだよな?
って事はつまり………ギルバートか?
だがしかし、ギルバートに用があるなら、頼むからギルバートが部屋に戻ってからギルバートの部屋を直接尋ねてくれ……
王女殿下が供も連れずに男の部屋に来るなど、あらぬ誤解を受けたらどうするつもりなんだこの人は……シャーロットが誤解されて困るのは好きにしてくれて構わないが、フェリシアが誤解すれば俺が殺されるので勘弁して欲しい。
「それはオーランドの仰る通りですが、折角同じ学園にいるのですからもう少し同じ時を過ごしたいといいますか……」
「そうですかではどうぞ。ギルバート、王女殿下がお呼びだ。失礼の無いようにするんだぞ」
こればかりは仕方ない。
こんな展開あったかどうか覚えていないが、そもそも主人公が学園に通うようになった切欠はシャーロット王女だからな。彼女が主人公に何らかの感情を抱いている可能性は十分にあったし、もしかすると隠しヒロインとやらは王女なんじゃないだろうかと考えていたのも確かだ。
しかし、ゲームであればいとも容易く行われる王族と平民のラブストーリーもこうやっていざ現実になってしまうと到底有り得ない事がわかる。仮にシャーロットが隠しヒロインだったとしても、俺はそのルートの概要すらしらないし応援しようにも十全な形での支援は出来そうにない。
まあ、それはそれとして王女も年頃の女性だ。ギルバートとは間違いがない程度に遊んでもらおう。
なんて事を考えていたのだが
「……何を言っているんですか。私はオーランドに会いに来たと言っているのです」
俺かい!!
数日置きに生徒会室であっとるやろがい!!
「そうは言いましても……生徒会で何度も顔を合わせているではありませんか」
「オーランド、貴方わかっているのですか?貴方は私の護衛騎士になる方なのですよ?婚約者よりも優先して然るべきなのではないですか?私の部屋に訪ねて寝食を共にしてこそではないのですか?」
「いえ……それは……いや………どうなんでしょう……」
どう言えばいいんだよふざけんなよこの王女!?
はいと答えたらフェリシアに殺されそうだし、
いいえと言えばシャーロットがキレる気がする。
「大体、生徒会役員であれば放課後は毎日生徒会室に来なさい!なんのために貴方が生徒会に入ったのかわかっていないのですか?」
「で、ですので……会計の仕事はしているではありませんか」
「そういう問題でないでしょう!?」
どういう問題なんだよ!
なんで仕事してるのに怒られないといけないんだよ!
まさかシャーロットは前世で噂に聞いたブラック企業の経営陣的な思考をしているのか……?
なんてやべぇ奴なんだ……
「で、ですが、ダニエル様も仕事が終わればすぐに部屋を後にするではありませんか。フレドリック様に至っては大体居ないか寝ているではありませんか」
確かに、ケルシーはずっと残ってとりあえず俺の隣の席に座ってるけど、何をしているのかはわからない。上級生は勉強の範囲が広がったり覚える事が増えて大変だと聞いているが、何もしないで暢気に座っていていいのだろうか?
まあ……ケルシーだしいいか。
「ダニエルは副会長ですからね。フレドリックも日頃の疲労が溜まっているのでしょう。それに彼らはもう三年なのでやるべき事も格段に増えておりますから」
「自分は一年ですが、やるべき事は多く……」
「それは生徒会室ではできないのですか?」
「できそうにないです」
ギルバートが生徒会に所属していれば、そこで勉強を教える事も可能ではあるが……
「ですが、今しがたまで貴方とギルバートは部屋で2人で勉強していたのですよね?」
「は、はい!最近いつも教えてもらっています!」
「そう、では明日から生徒会室で勉強をしなさい。心配しなくともオーランドと私がしっかり教えてあげますから」
「え?あの……」
有無を言わせぬシャーロットの言葉になんと答えればいいのかわからないのか、哀れギルバートは俺の方を向いてきた。
心配しなくても俺だってどうすればいいのかわからない。
ただ1つわかるのは、俺のオアシスが崩壊する事だけだ。
「えっと…あそうだ。自分はギルバート君と友達でして、男2人仲良く勉強をしたいなと思っておりましてですね」
オアシス崩壊を防ぐ為に、困っているギルバートの肩に手を回し仲良しポーズで撃退する事にした。
フェリシア達はこれで引いてくれたし、多分シャーロットも……
「そうでしたか。奇遇ですね、私もギルバートとたったいま友達になったので3人で勉強をしましょう」
ダメだった。
「そ、そんな恐れ多い!」
「よろしくお願いしますねギルバート。そうですね、今日はもうここで勉強をしましょう。いいえ……そうね、可能であれば毎日ここで勉強をしましょう。ギルバートがこれない時は私とオーランドだけで勉強をしましょう」
「いやそれはおかしいでしょう!シャーロット様が毎日供回りも連れずに男子寮に来るくらいなら生徒会室で勉強したほうがずっとマシです」
ギルバートを逞しい主人公に育成する為に頑張ってるのであって、俺は別にシャーロットに教えて欲しいものがあるわけではない。そもそも俺は自習派なので図書館さえあればいくらでも勉強は可能だ。
「あの……」
ほらみろシャーロットめ……
可哀想に、ギルバートが不安そうな顔をしているではないか
「まあ、なんだ…そういうことなんで、明日からは生徒会室で勉強するか……俺も居るから怖がる事はないぞ」
「は、はい!」
ギルバートいい返事をしたが、なんでこうなるんだよ。
返せよ、俺のオアシス。
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