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scene.02 これまでとこれからと Ⅱ



「おかえりなさいませオーランド様、お身体は大丈夫でしょうか?」


「ああ……と言いたいところだが、ちょっと飲みすぎたかもしれん」


 屋敷に戻ったのは深夜、父と母は王となにやら話があるとかでまだ城にいるが俺は学園の準備もあるし先に帰ってきた。シャーロットとケルシーとも当然王城で別れ、フェリシアは頼んでもないのに屋敷の入口まで馬車で送ってくれた。


「畏まりました、水をご用意致します」


 酔っ払った俺を屋敷で出迎えてくれたのは、俺の冒険者仲間にして唯一のパーティーメンバーであるリリィだ。


 彼女は本当に変わった。


 少しずつ勉強をした彼女は、今では俺より多くの知識がある。

 少しずつ強くなった彼女は、今では俺よりも剣が強くなった。

 少しずつ礼儀作法を覚えた彼女は、今では完璧な専属側仕えになった。


「助かる……と、そうだ。リリィも来週からは学園なんだから、俺の事はあんまり構わなくていいぞ。自分の事は自分で出来るしな」


「いいえオーランド様。オーランド様は主であり私は専属側仕え、そしてパーティーメンバーです。学園に通ったところで何も変わりはしません。私は常にオーランド様のお側におります」


「そうか……そうだな。頼りにしてるよリリィ」


 

 9歳で出会った時から6年。

俺とリリィは只管に研鑽を積み重ね、使える時間の全てを使ってただただ最強への道を歩み続けた。

 その結果、俺とリリィは15歳にして上級冒険者<(オース)>になった。上級冒険者到達の最年少記録だそうで上級冒険者になったリリィにはラーガル学園への招待が来た。

仮に招待がこなければ俺がグリフィアの権力を使って推薦する予定だったのでどちらにしても学園には入っただろう。


 上級冒険者はゲームでいえば三周くらいしなければ到達できない階級なので、15歳の現時点でここまでいけたのはかなり頑張った方だと思う。というわけで冒険者の方はそこそこ順調なのだが、自立するにはまだ準備が足りていない。


 冒険者として大成しつつあるものの、同時に名が知れ始めてしまったせいで国内外問わず潜伏が難しくなる可能性もある。3年後の成人の儀で俺が殺されるまでにどの国に逃げるか、潜伏方法、冒険者ギルドとの関係、考えるべきことは多々あり、いい加減に決めなければならない事も多い。

 それに、主人公とヒロインの誰がくっつくかでラスボスや世界の行く末も変わるので、そこを見極める必要もある。主人公とヒロインがしくじればその影響は必ず大陸の何処に居ても波及する。長生きしたい俺にとってそれは望む所ではないので場合によっては手伝うつもりだが……まあ……



 ふぅ…………


 長いようで短かった。


 『グランドフィナーレの向こう側』が……


 ゲーム本編があと少しで始まろうとしている。


 

 ◇ ◇ ◇



「ねっむ……」


 自室に戻り誰に言うでもなく呟いた。

リリィが風呂の準備をしてくれているのを待っている間、着替えもせずに適当にベッドに潜り込もうとした正にその時……



「この時を!待っていましたわ!!!」



「ぐわッ!!」


 布団の中に潜んでいたマリアに絡め取られてしまった。


「オーリー…ハァハァ……お酒を飲んで弱体化するなんて愚かなことを!ハァハァ…ようやく隙をみせましたわね!」


「ちょっ!やめッッ!!洒落になってねぇぞ!!」


 そして……

 ヒロイン連中の中で一番変わったのは間違いなくこいつだ。


「今日は金色も黒色もおりません!フェリシア様も先程帰られた!リリィは風呂の準備!!」


「や!おちつけ!お前マジでどうなってもしらんぞ!」


 俺の言葉がまるで聞こえていないのか、鼻息を荒くしたマリアは俺の手を押さえつけマウントポジションで器用にも服を脱ごうとしていた。


「す、すぐに終わりますわ!さきっちょだけ!さきっちょだけでいいのですわ!」


「馬鹿野郎!!!それは女が言う台詞じゃねぇよ!!」



 マリアはこの6年間で恐ろしく強くなった。

ゲームではパーティーメンバーに入れると金運がちょっとアップすると言うだけの碌に役に立たないクソ雑魚だったのだが……この世界のマリアは俺と同じ冒険者ランクになればパーティーメンバーに入れるという話を信じたようで、あの翌日から俺やリリィと一緒になって戦闘技術を磨きだした。


 マリアは冒険者ランクの効率的な上げ方なんて知らなかったようだが、俺とリリィがドブ掃除ばかりしていたので多分あれがいいんだろうとすぐにドブ掃除に取り掛かった……それも自分でやるのではなく、部下を使っての人海戦術だ。

 美味しい場所は俺とリリィがやった後だったが、それでも恐ろしい速度で王都を掃除していき、驚異的な速度で冒険者ランクを上昇させていったマリアではあったが、時を同じくして俺とリリィのダンジョン攻略が始まった。

 俺は前世のゲーム知識があったのでランダムダンジョンと言えどもサクサク攻略できた。オーランドの魔術がどうも強すぎるようでショボいダンジョンでは敵になるような魔物がいなかったというのもあるが、それ以上にリリィの成長速度が凄まじく、一匹魔物を倒す度に目に見えてキレが増していった。強さに対する熱意、上昇志向と言うのだろうか……リリィの集中力には鬼気迫るモノを感じた。


 カラドリア商会の孫娘が冒険者になるという意味不明な事態に当初は誰もが困惑したが、その常軌を逸したクエスト達成速度にまた困惑し、マリアに追いつかれるわけにはいかないと俺とリリィもまた驚異的な速度でダンジョンを攻略する新進気鋭の冒険者として注目を集める様になった。


 しかし、いつ追いつかれるかとヒヤヒヤしていた俺たちとマリアの冒険者ランク競争は唐突に終戦した。そう……やりたい放題のマリアの行動が冒険者ギルドにバレていないはずがなかった。

 俺とリリィは報告連絡相談を守り、清く正しい冒険者の模範として順調にランクを上げていき遂には上級冒険者にランクアップすることができたが、残念ながらマリアは中級の最上位<(ブラキウム)>で足止めを食らっている。

 いくらカラドリア商会が大陸経済を牛耳っている裏社会のボスであろうと、冒険者ギルドはそれを真正面から相手に出来るだけの武力を保有した集団なので、マリアがどれだけ喚こうが冒険者ランクを上げてもらえない状態が続いている。


 上級冒険者にあがるには強さや依頼達成度だけではいけない。

 日頃の態度やギルドに対する信頼度が必要になる。

 マリアは上級には絶対にあがれないだろう。


 マリアもノインツ教官に話を聞いておけばよかったな。


閲覧ありがとうございます!

毎日投稿するか隔日投稿にして他の作品あげていくか迷い中ですが、どちらにしても楽しんでいただければと思いますm(_ _ )m

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[一言] 心の赴くままにw ただ新作を始めるならもう少し知名度を上げてからのほうが伸びがいいですよ?チラッ
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