scene.18 ヒロインcase.3 フェリシア=リンドヴルム
「ギルバートさん……こちらをお受け取りください。貴方の為だけに用意いたしました」
「その……よくわからないですけど、嬉しいです!ありがとうございます!!大切にします!!」
放課後、人が疎らになった講義室。見詰め合う美男美女。
女は微笑みながら男にプレゼントを渡し、男もまた超イケメンスマイルでプレゼントを受け取る。
なんと絵になる光景なんだろうか……
女が渡しているものが女性用の可愛らしい服じゃなければな
「いえいえ、お気になさらないでください。ギルバートさんはお綺麗な顔をされておりますのできっとお似合いになるかと思います。年頃の男性は綺麗な女性に目がないものですからね、ギルバートさんがこの服を身に纏って校舎を歩くだけでお友達が沢山できるはずです」
「できるかァ!!!!」
どうやらこいつもダメだったらしい
じゃあ主人公のヒロインは誰なんだ?
◇ ◇ ◇
フェリシアに対して初めて絶叫してしまったが……
どう考えてもソレはない。
主人公に女装させるのはない。
おかしいよ…………実はお前が一番おかしいよ。
「これほどの整った顔はそうはおりませんからね。美しく着飾り女性として振る舞えば、多くの男性の視線を奪えます。可愛く美しい女性になれば女性とも仲良くなれますし、思いついたときは一石二鳥の妙案だと思ったのですが……」
「確かに奇妙な案ではある」
どういう思考回路してるのか本当にわからなくなってきた。
大体いつもニコニコと笑っているから怒ってるのか喜んでるのかもわからない奴だが、俺が知らないだけでここまでヤバい思考の持ち主だったとは……
流石に何年も前のゲームだけあってギャルゲーパートの記憶がかなりあやふやになってるな……ゲームでもこんなんだったっけ?こんなイベントはなかったような気がするんだが…………どうだったろうか。
「あ、あの……」
「どうしましたかギルバートさん、そちらの服は貴方のために用意したのです。遠慮なく着用なさい」
「やめい!いや……なんだ、俺も状況を飲み込めていないんだが、それは売ってお金に換えればいいぞ」
「売るなどとんでもない。誂えるのにいくら掛ったと考えているのですか?私が贈り物をした男は貴方が2人目です。本当はオーランド様ただ1人の為の記録を台無しにしたのですから着用して応えてもらわなければ割りにあいません」
「そんな記録は今すぐ捨てろ。ギルバート、気にしなくていいからな?お前は学園の制服が良く似合っている。まあ…なんだ、勉強はやればやるだけ身につくから、気長にやればいいさ」
「なるほど!!あ!と、ところで……その、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
お?もしかしてフェリシアに興味もってくれたか!?
突然女服を渡してくる変人だって引かれているかと思ったが、そうだよな。フェリシアはいつだってにっこり笑顔だ。やってる事はおかしくても美少女であることに間違いはないもんな。
大丈夫、お前がその気になればもうお前の勝ちだ。心置きなく頑張るがよい。
「ほら、名前聞かれてるぞ」
フェリシアに話しかける顔が思わずニヤけてしまった。
まだだ……まだ笑ってはいけない。
ようやく主人公から動いてくれたんだ、婚約破棄の理由は未だに思いつかないがまずは2人をくっつけるところから開始しよう。難しい事は後で考えるんだ
「あいえ!その、いつも名前聞きそびれてしまって……貴方様のお名前をお聞きしても…」
って俺の名前かい!!
ちょっと上手く行ったと思ったのに……
「名前を聞かれていますよ」
フェリシアは笑顔で言い返してきた………ムカツク!
だがしかし、だ。
流石にここで逃げるのはもう無理か……
いいか、名前くらい。
そもそも、当初の作戦では主人公に優しくして主人公の靴を舐めて子分のように媚びへつらうつもりだったんだ。名前を教えて親交を深めると言う当初の作戦に戻るだけの事だ。まあ、昔立てた生存戦略はぐだぐだすぎてもうあってないようなもんだけどな……
「俺はオーランド=グリフィアだ。オーランドでもオーリーでも好きに呼んでくれ」
「オーランド様ですね!入学式の時に話していたのは覚えていたのですが、名前が思い出せなくて困っていたんです!オーランド様、今まで沢山助けてくださってありがとうございます!食堂も教科書もどちらもとても助かっています!」
おぉ……めっちゃ感謝されている。
キラキラと眩しい笑顔でめっちゃ見てる……
ふむ……これはこれでありだよな?
主人公と敵対関係にさえならなければ、フェリシアルートとケルシールートの死因である玉座でのオーランドの悪事暴露イベントの可能性は限りなく0になる……もんな?あってるよな、あってるっけ?
夏季休暇で家に帰ったら攻略本を読み直そう。前世の記憶が蘇って6年も経ってるからな……復習はしたつもりだが流石にこれだけ昔となるとゲームのイベントや知識が抜け落ちてるな……
「そうかそうか、それはよかった。今後も何か困った事があれば何でも相談してくれ。俺は生徒会役員でもあるから、生徒の声を聞くのも大事な仕事なんでな」
「すごい!一年生なのに生徒会に所属されているんですか!」
「いやいや、そんな驚かれるような機関じゃな―ん?」
そんなこんなで色々と吹っ切れたのでギルバートと仲良しになろうと話している俺のを服を、誰かが引っ張ってきた。なんだと思いながら首を回すと
「オーランド様?私の紹介をしていませんよ?」
いつも通り少し後ろに控えていたフェリシアが笑顔で話しかけてきた。
「紹介?勝手に自己紹介すればいいだろう。俺だって今名乗ッ」
ひぇ……フェリシアが開眼していらっしゃる……
「あらあら、婚約者の紹介はパートナーの務めですよ。何を仰っているのですかオーランド様ったら」
「え!?お2人はご婚約されているんですか!」
ギルバートはとてもよく食いついてきた。
くっ……婚約者だとバレたらギルバートがフェリシアに手を出し辛くなってしまうかもしれない……しかし、フェリシアが睨んでいるのは怖い……
「まあ………いえッはいその通りです。こちらにおられる方は私の婚約者であるフェリシア=リンドヴルム様ですどうぞ仲良くしてあげてください!」
「どうも、オーランド様の妻です」
誰が妻だ……婚約者だろ……
俺の横で腰を折り曲げてお辞儀をしているフェリシアに突っ込みを入れてやりたくなったが、この女にだけは絶対にツッコミをいれたくない。とても怖い。
「あ!はい!僕はギルバート=スタインです!よろしくお願いします!」
「そうですか」
紹介してやったのに一言だけで済ませるのはやめろ……
ケルシーと言いフェリシアと言い、一言で会話を終わらすのはマジでやめろ。会話を広げろ会話を…
「それにしてもオーランド様とフェリシア様、お2人は本当にお似合いですね。優しいオーランド様に優しいフェリシア様、お2人が婚約されていると聞いてとても納得しました!」
え?フェリシアに何か優しさを感じる要素があったのか?
女用の服を貰っただけだよね?
ギルバート君はちょっと変わった子なのかな……
「あら………オーランド様?私勘違いしていました。このギルバートさんという方とても良い子ですね。人を見る目があります」
「お、そうだな」
俺は深く考える事を止めた。
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