scene.17 ヒロインレース1着は……
マリア=カラドリア
ケルシー=アトワラス
この2人はどうやらヒロインではなかったようだ。
まだ5月の中旬なので最終判断を下すのは早いが、現時点では誰も主人公への関心を示してくれないし、主人公もまた彼女らへの関心が無さそうに見える。と言うか、勉強が大変過ぎてそれどころでは無さそうにみえる。
主人公にバレないように適度に同じ授業を受けてこそこそと後ろから観察しているものの、どうやらギルバートはまだ友達が出来ていないようで1人だ。
紙や木片を用意出来ないようで授業中はひたすら真剣に先生の話を聞いているが、復習するときにノートが無いと辛いだろうな………俺が板書した紙をやりたいくらいだ。どうせいらないし。
そんな見ていると辛くなってくるギルバートを救えるのは…
そう!我が婚約者であるフェリシアをもって他にいない!
良かったなフェリシア、マリアとケルシーは勝手にヒロインレースから脱落っていうか……脱線してくれたぞ。後はお前のその何を考えているのかわからない超美少女スマイルでギルバートを籠絡するだけの簡単なお仕事だ。
それとは別にもう一人の同年代ヒロインであるリリアナ=フレスヴェルグもコソコソと探しているのだが、リリアナは校舎の何処を探しても見つからない。
どうなっているのか教師連中に聞いてもいいんだが、俺が探している事に勘付かれたくはないしな……。もはや放置してても問題なさそうではあるが、折を見てリリィにでも調査を頼もうと考えている。
しかし、リリアナやアイリーンの事は割とマジでどうでもいいっちゃどうでもいい。理由は単純で、来年入学してくるアイリーンとリリアナは主人公のステータスが高くないと攻略が不可能だからだ。
普遍文字の読み書きに悪戦苦闘しているこの世界のギルバート君は恐らくゲーム一周目のステータスしかないので、リリアナとアイリーンは攻略出来ない。だから、俺としてもこの2人のヒロインについてはもうそこまで気にしていない。
まあ、俺の出自やらなんやらを暴きだす才女アイリーンは最悪入学してきてすぐに殺すかもしれないが、仮に殺したとしても主人公の恋路を邪魔するわけではないので大丈夫だろう。
マリアとケルシーは現状では主人公に興味を持ってくれないし、リリアナとアイリーンは居ても居なくてもどうせ今の主人公には振り向いてくれない……という事で、消去法でフェリシアがヒロインである事が確定した。お前がナンバーワンだ、フェリシア!
全く、フェリシアさんったら……
それならそうともっと早く動いて欲しいものだ。
本来なら婚約者が取られてしまうと焦る所ではあるが、フェリシアはオーランド憎しで生きる笑顔の仮面を貼り付けた女だからな。だから、ギルバートにはこっちの事はきにせず存分に愛を語り合って欲しいのだが……
しかし、ヒロインがフェリシアとなると……
恋の障害はフレドリックお兄様か……
そうかぁ……
ヒロインが確定した事で後は2人を生暖かく見守りつつ、いい感じに婚約破棄をして、いい感じにリンドヴルム家が侮られず、いい感じにグリフィア家が恥をかかないような理由を思いつかなければならない……
…………
いやいや、そんな都合のいい理由なんて思いつけねぇよ?!
フェリシアルートでは学園の悪役であり恋の障害のオーランド=グリフィアという共通の敵が2人の話題となり、その問題を解決する形で2人は距離を縮めた。
婚約者を持ちながら色んな女にちょっかいを出すカスであり、ひ弱な主人公がようやく集めたダンジョンの宝を強奪する盗賊であり、平民を見れば唾を吐き、主人公を見れば意味もなく殴ってくる歩くストレス発生装置であるオーランドが居たからこそ、あの2人は少しずつ分かり合えたのではないか?
ど、どうすればいいんだ?
結局、俺は何か悪い事をしないといけないのか?
そうなのか?
そういうことなのか?!
「何をそんなに青ざめた顔をしているんですの?」
「悩みがあるなら私に相談してください、オーランド様」
目下最大の悩みはお前だよフェリシア
授業を受けながら左右に居るマリアとフェリシアが話しかけて来た。というか、黒板みなさいよ君ら。
授業中、特に習う事のない俺は半分無意識に紙に板書を取りながら必死になってこの先の事を考えていた。本当はもっとゆっくりと1人の時に考えたいのだが、放課後になればリリィと一緒に学園のダンジョンを攻略しまくって自分を鍛え上げたいからな。今はそれだって満足に出来てないが……
放課後は殆ど毎日のように生徒会に呼び出され、シャーロットとケルシー、ダニエルとたまにフレドリックと無為な時間を過ごす事も多い。呼び出しがなければないで放課後になればフェリシアが何処からともなく出現して、何を言うでもなく俺の後ろを歩くので後ろから刺されないか気が気ではない。
フェリシアが近くに居るとリリィはダンジョンに行きましょうと言ってくれないし、夜になれば学園の敷地内に建てた豪邸で生活をしているはずのマリアが俺の部屋に侵入しようとしてくるし、そうじゃなくても四六時中話しかけて来る。
だからこそ俺は主人公に1人でも多くのヒロインを相手させようと報酬まで払って関係強化を促しているのに、マリアもケルシーもまるでギルバートに興味をもってくれない。
そして今ようやくヒロインがわかったというのに、フェリシアとの婚約破棄のことに気付いてしまった。
いい加減、頭が破裂しそうだ……
破裂しそうなのだが……
「いいや、ギルバートはまだ勉強が大変そうだと思ってな。見たところ友もいないようなので……どうしたものかと考えていただけだ」
それはそれ、これはこれ。
まずは一歩前進と考えるべきだろう。
ルートは確定したんだ。
「そうでしたか。ですが、それでしたら安心してくださいオーランド様。ここ数日、私は彼の為にそれなりの時間を費やして用意したものがございます。マリアやケルシー様には到底真似できぬことでしょう。オーランド様からの報酬は婚約者である私が独占してこそです」
報酬か…報酬な……
フェリシアが欲しいものがさっぱりわからないが仕方ない。
命以外なら何でもあげるつもりではあるが……そんな報酬の事よりも『ヒロインが主人公の為にかなりの時間を費やした』という事が俺には嬉しい!これはもう放置していてもくっつくのは時間の問題かもしれない。
正直なところフェリシアはそこまで邪魔をしてくるわけではないので、マリアあたりとギルバートがくっついてくれるのが一番の理想だったんだが……とは言え放課後になると無言で後ろにぴったり付いてこられるのが無くなるだけでも全然違うな。
主に俺の精神的な余裕が。
「でかしたぞフェリシア!ギルバートを想うその心、俺はずっとフェリシアを信じていた。報酬は叶えられるものであれば必ず用意する。感謝するフェリシア」
ギルバートと2人で幸せを掴むんだぞ!
「そ……そうですか……報酬はその…そう難しいものではありませんので……」
あらあらフェリシアさんったら耳まで赤くして……
ギルバートについて考えている事がバレて恥ずかしかったのか?
大丈夫だ、一向に構わんぞフェリシア!
「ずるいですわ!私だってお世話をしましたわ!」
「アレは世話とは言わない!もう少し常識を覚えてから出直してこい」
パンを放り投げて地面に落ちたものそのまま食えって……
お前のそれこそ悪役ムーブだからな?
悪役の俺ですらどう頑張ってもあんなこと出来ないぞ……
マリア以外の人間が主人公にあれをやっていたら俺は怒りのあまり殴っていたかもしれない。主人公になにしとんじゃボケーと言って殺しにかかっていたかもしれない。マリアでよかった。
「グリフィア君、カラドリアさん、お静かに」
やばいッ!ギルバートが振り向くッ!!!
授業中にベラベラとでかい声で話しすぎたせいで先生に注意されてしまった。
もちろん注意される事自体はこっちが悪いので喜んで受け入れる。しかし、授業が中断した事で真剣に黒板を睨んでいたギルバートが振り向こうとしていた。俺はギルバートをこっそり観察しているので、バレたくない!!
「な、どうしたんですのオーリー?」
「何をなさっているのですか?」
「……なんでもない」
だから、俺が同じ講義室にいるとバレないように咄嗟に顔を隠したのだが、ガン○ムWの主人公のように手の平で顔を隠してしまった。なにやってんだよ俺は……
「申し訳ありません先生。授業を続けてください」
やめろ、そんな目で俺を見るな……
授業中に先生に注意されて突然ポーズを決めた痛い人間みたいじゃないか……………その通りなんだけど。
「……貴方は優秀ではありますが、他の方の邪魔になるようなことはお控えくださいね」
「心得ております!先生、授業を続けてください!」
ギルバートが再び黒板を向いたのを確認してから、無事に着席した。
「今のはなんだったんですの?」
「授業中にふざけられるなんて珍しいですね」
「……今のは忘れてくれ」
痛い……心が痛い……
授業が終わると同時に俺は<纏>を発動させて逃げた。
お読みいただきありがとう御座います!
誤字脱字報告とても助かります!




