scene.14 たった1つのこれと言って冴えてないやり方
主人公を持ちあげることしばらく
もうそろそろ彼女たちもギルバートの事を気に入って興味を持ち始めただろうと言うタイミングで、俺はいよいよ本題を切り出すことにした。
「そう、ギルバートは素晴らしい平民だ。そして、マリアは別として、俺もエリーもケシーもこの国を導いていく立場の貴族だ。それはわかるな?」
「わ、私だって……」
「あーいやいや、マリアだって形は違うが国を……というかお前はこの大陸を支える存在だ胸を張れ」
「はいですわ!」
何でカラドリアの人間にフォローを入れないといけないんだよ。
「んで、だ……俺はギルバートみたいな素晴らしい心根をもった平民を大切にしたいと考えている。だが、ギルバートがどれだけ素晴らしい男であっても正直なところ今現在この学園ではおちこぼれだ。何か特技があるってわけでもないし、血筋が優れているわけでもなければ勉強ができるわけでもない。そういう平民だ。そういう平民だが、この国にはそういう平民は五万といる。確かに、今は何も出来ないかもしれないが、彼らがこの先もずっと何も出来ないというわけではない。きっちりと教育を受ければ平民だって字はしっかり覚える、計算もできる、礼儀作法だって覚える。それはリリィを見ればわかるだろ?」
「そうね……リリィは見違えるように成長しましたからね」
リリィと仲がいいフェリシアはゆっくりと口を開いた。
「だがあれは別にリリィが特別に優秀だったというだけではない。平民は学がないだけで馬鹿ではない。俺達と受けている教育の質が違うだけだ。だか、俺はギルバートだってきっと成長してくれると信じている」
教育の格差……日本ではあまり感じなかったが、やはり文明の発展していない世界においてこれは如何ともしがたい格差だ。
しかし、無知であることと馬鹿であることは必ずしも同じではない。高度な義務教育を施された日本人でも馬鹿な奴はやはり馬鹿だったしな。そもそも俺自身、勉強は出来るような気がするが自分の頭が良いと思った事は一度もない。
何故なら、頭が良ければ俺はこんなに追い詰められていない。
そしてそんな悪役と違い、恐らく主人公は頭の良い人間のはずだ。なんと言っても主人公だからな。今勉強が出来ないのは習っていないからだし、そんなものはどうしようもない。
「そうですね。ギルバートなる平民がどのような者かはわかりませんが、今がダメだからと言って成長しないというわけではないでしょうね」
「そうだ。だから俺はギルバートをそれとなく見守ってやろうと考えていたわけだが……」
「それで私にギルバートの選択授業を調べるようにこっそりと聞いてきたんですの?」
「正解だ。そして俺はマリアからその情報をこの教室で聞いていたわけだ」
本当は接触したくなかっただけだがな。
「依頼って……その程度の事なら何もマリアを使わなくてもご自身ですればよかったのではないのですか?」
「そうです!私に言って下さればギルバートから情報をはかせるなど容易でした!」
情報を吐かせるとか言うな!
ケルシー?おーいケルシー?
君はもっと主人公を大切にしような?ホント頼むよ?
「ま、まあそうなんだが……確かに、ギルバートを助けてやること自体は簡単だ。だが、俺が付きっ切りで横について面倒を見るってのはちょっと違うだろ?俺はあいつに恩を売りたいわけでもないし、ただあの心優しい平民にのびのびとラーガル学園で成長してもらいたいだけなんだ」
「なんとなくは理解しましたが……オーランド様はギルバートなる平民には直接手を出さないという事ですか?」
いいね、さすがフェリシアだ。
話をよく理解してくれている。
「うむ、男が男に守られて嬉しいはずがない。ましてや同い年の男子に何から何まで面倒を見てもらって守られるなんて、ギルバートのプライドを傷つけてしまいかねない。俺達は平民を守るべき立場にあるが、過保護であってはならないし自尊心を傷つけるような事をしていいわけじゃない」
実際はただ主人公に関わりたくないだけだが……
この際それっぽい事を言って全力で接触を回避させてもらおう。
それにしても、即席で考えたにしては我ながら何となくそれっぽい事を言えているのではないだろうか。俺のこの6年間の努力は今この瞬間のそれっぽい会話をする為にあったのかもしれないな……
「そこでだ、君たち3人には俺の代わりにギルバートの手助けをしてもらいたいと考えている」
「え?何故ですか?」
「いやですわ」
「意味がわからないです!」
こ……こいつら………
俺の話聞いてたよね?
もしかして聞いた振りしてた?
ん……でもそうか?
確かに手助けする意味がわからないか?
ふむ……
「ま…まあ待て……そう言うな……何も四六時中側に居て助けてやれとかそういうことではなくてだな、授業中とか、ダンジョンに行く時とか、見かけたときに時々でいいから声を掛けてやるとか、ちょっと激励してあげるとか、そういうんでいいから……エリー達のような上位の貴族が接しているとなればギルバートを見る周囲目も変わってくるだろうと思うんだ」
頼むよ……ほんと頼むよ……君たちヒロインなんだよ?
「そのくらいであれば構いませんが……オーランド様以外の男性の手助けなどあまり乗り気はしないですね。そもそも、のびのびと成長して欲しいと仰るのなら私たちも手を出さない方がいいんじゃないですか?」
「そうですわ。なんだってオーリー以外の男の世話をしなければならないんですの」
自覚ある?いや、自覚はないか……
いやいやいや!
自覚があろうがなかろうが君らはヒロインなんだからもう少し積極的にギルバートと絡んでくれてもいいじゃん……なんなの?君らがあっけらかんと過ごしている間に悪役がどれだけ主人公のことを考えてると思ってるんだ……
フェリシアとマリアの反応を見て、
もう少し説得が必要かと思ったその時……
「私はギルバート君のお手伝いするくらいいいですよ!その代わり報酬をください!」
満面の笑みでぎょっとすることを言ってきたのは……
黒髪美人のケルシーだった。
ほ…報酬……だと……?
「なるほど……では私もそれで」
「ケルシー=アトワラス、貴女なかなかやりますわね。そうですわね、私もそれで構いませんわ!」
ケルシーの提案に全乗りしたフェリシアはいつも通りの素晴らしい笑顔になり、マリアはどう見てもとんでもない事を考えている笑顔だった。
な……なんでこうなるんだよ……
3人に主人公との接点を持ってもらういい機会だと思って適当な事ばかり言ったのがダメだったのか?
でも君らはヒロインでギルバートは主人公なんだよ?
悪役からお金貰って付き合うのはおかしくない?
報酬って……何を要求されるんだ……
マリアが欲しいものはなんだ?鎧か?
フェリシアは何だ?
想像もつかんが、俺を処断するための何らかの情報か?
ケルシーは………飴でもあげてれば大丈夫か。
「わかった……俺に支払えるものなら何でも支払う。だから……ギルバートの事はよろしく頼む」
だが仕方ない……これで彼女らがギルバートと接点を持ってくれれば誰かのルートに突入するはず…
そうなれば後は放置していても済むわけなので……俺が報酬を払うのは主人公のルートが確定するまでの僅かな期間だ。
少々予定とは違ったが、まあいい。
待っていろ主人公!
お前の恋路は……悪役が金を払ってでもサポートしてやる!
お読みいただきありがとう御座います!
誤字脱字報告くださる方には頭があがりません!
ヒロインに報酬を支払って主人公と仲良くなって貰い
ヒーローとヒロインの健全なお付き合いを推進する活動
ヒロ活ですね!




