scene.12 そして悪役は考える
「落ち着きなさいケルシー……こんにちは、オーランド様、マリア。一体お2人で何をこそこそと話されていたのですか?」
マリア目掛けて飛び込んできた猛獣を受け止め、何故かその後ろから入ってきたフェリシアを見る。
良かった……フェリシアは笑顔だ……
まあ彼女の笑顔に何の意味もないが……
「いやこれは……っと、落ち着いたかケシー?」
「オーランド様!お会いしたかったです!」
「そ、そうか……でも朝会ったよな」
ケルシーはダンジョンに長期間(3日ほど)潜っていたりして会えなかったり、俺とマリアが2人で何かをやっているとたまに人間ではなくなる。いや、人間なのだが……人間なのだが、何かこう……ヤバイ感じになる。
「このような場所でその女と何を話していたのですか?」
これといった対処法はないが、ただ突っ込んでくるケルシーを受け止めるだけでいい。
そうすれば一瞬で落ち着いてくれるわけだが……ケルシーもいい大人だ。貴族の16歳と言えばもう婚約が決まっていてもおかしくない年齢であり、無闇矢鱈に異性に抱きつくのは止めた方がいいのは確かだ。
小さな頃からお茶会に呼ばれまくり、勉強を教えると言われてアトワラスの屋敷に引きずり込まれたり、俺に言っても断られるから平民のリリィに頭を下げてダンジョンまでついてこようとしたり……小さい頃から遊び相手として過ごしていた時間が長過ぎたからか、どうにもまだ俺達の関係が子供のままだと思っているらしい。おまけに独占欲も強く構ってあげないと癇癪を起して猛獣になる……キャラ崩壊が激しい……
ゲームで見たケルシーとは掛け離れたたキャラクターに育ってしまったが、この子も主人公にさえ出会ってしまえば変わっていくはずだ。きっとまだ男だとか女だとか、そういうのがわからないのだろう。それに、ことあるごとに年上の黒髪美人に飛びつかれる思春期男子の事もそろそろ考えてくれないとな。
「なんなんですの!いつもいつも!私はオーリーに内密に頼まれた依頼をこなしていただけですわ!」
「だったらどうしてオーランド様にキスをせがんだんですか!なんてうら……いえ!なんて人ですか!」
「依頼には報酬がつきものですわ、アトワラスのお嬢様はそんな事も知りませんの?」
「知っていますぅー!でもその報酬が暴利だと言っているんですぅ!」
「オーリーから頼みごとすらされない女が良く吼えますわ、おーほほほほ!」
「こ、こいつッ!!」
「それに、暴利かどうかを決めるのは貴女ではありませんわ」
「その場に私が居ればオーランド様はお前のような女ではなく私に頼みごとをしていました!」
「でも隣にいたのは私ですわ。おーほほほほほ!」
クッソどうでもいいことで口喧嘩するなら勝手にやればいいが……
「2人共静かにして今すぐオーランド様から離れなさい」
フェリシアが居るんだから程ほどにな…怒られるぞ。
この後、俺の体からケルシーとマリアが引き剥がされた。
◇ ◇ ◇
「それで、結局なんのお話をされていたんですか?」
午後の授業はとっくに始まっているが、俺とフェリシア、ケルシー、マリアは空き教室で話をしていた。
ラーガル学園では学術への理解度を重視しているようで、テストにさえ合格できるのであれば無理に出席しなくてもいいとは聞いているが……こうも堂々とサボると前世の日本人の記憶を持つ俺には何とも言えない罪悪感というか……違和感というか……そういうものが湧いて来る。
「別に、何だっていいではないですの……」
「マリアには聞いていないわ。黙っていなさい」
う……怖い。
マリアとケルシーが口喧嘩したせいでフェリシアが目を開いてるじゃん……
「話し辛いことであれば無理に聞きませんし、グリフィアとカラドリアの問題であれば何も言わなくても結構です。ですが、人気のないこの教室で2人きりでくっついていた事への説明は別途要求します」
「そうです、許せないです!」
「ケルシー様も黙ってなさい。次に無駄な口を叩いたら機会は永遠に失われると考えてください」
フェリシアに睨まれたケルシーはぶんぶんと首を縦に振って黙ってしまったが、機会って何の話だ?
「さあ、オーランド様。どちらですか?話しても構わない事であればどうぞ話してください。その方がケルシー様も納得するでしょうし私もわかりやすいです。お家同士の取引というのであれば追求はいたしません」
どうする……なんでこんな面倒な展開になってるんだよ………
俺はただ主人公の選択している授業を調べてもらって遠くから眺めようとしただけだぞ?
別にやましい事なんてしてないのに何故こんな事に……ん?
いや?
別に話していいんじゃないかこれ?
「いえ、別に内密な話という事では無いですよフェリシア様」
確かに俺は主人公に接触したくないが、この3人が接触してくれる分には大歓迎だ。
そう言う意味では、寧ろこれはこの3人に主人公との接点を持ってもらうチャンスなんじゃないか?
「そうなんですか?ではこのようなところで何を?」
そうだ…!ギルバートの事をこの3人にしっかりと認識してもらい意識させるチャンスだ!
だから、ここからが大切だ………考えるんだ俺!
この3人がギルバートのことを構いたくなるような理由を今すぐ考えるんだ!!
「んんっ……まあなんだ、俺がマリアに内密に頼んだのは事実だが……これにはいくつか理由がある」
言葉はわざと崩そう
こっちの本気度を伝えるんだ。
この3人の誰でもいい……
必ず主人公と恋仲になってもらうんだ!!
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2部がどういう話なのかはそろそろ分かると思います!




