scene.11 フェリシア=リンドヴルムは溜息をつく
「なッ!!なんですの!!?」
「なんだ!?」
煙を上げながら突入してきた黒い何かは、
「貴様ァ!!!オーランド様を連れ込んでェエ!!許さんぞマリア=カラドリアァアアア!!!!」
稀によく出現する、ケルシー=アトワラス(猛獣)だった。
◇ ◇ ◇
お話は少し遡る。
「オーランド様ー?」
「オーランド様ー?」
「オーランド様ー?」
休憩時間になるたびに一年生の講義室を手当たり次第に当たってはオーランドを探す二年生の女生徒がいる。
「あら、フェリシア様、リリィ、ごきげんよう。オーランド様はどちらに?」
「これはケルシー様……先程から何をしているのですか……オーランド様に何か御用ですか?」
「いえいえ、探しているだけですよ!」
「そ、そうですか……私も今日はお会いしておりませんし探しましょうか。リリィは何か知っていますか?」
「凡その場所は把握できるかと思います。オーランド様は気配を消されるので見つけ辛いですが、マリア様であればどこにいるかはすぐにわかります」
「ああ……」
リリィの言葉についつい溜息をついてしまった
「マリアの場所がなんなんですか?」
「マリアはいつもオーランド様の隣から離れようとしませんからね。オーランド様の選択授業と全く同じものを選択して常に授業を共にしておりますから……あの子の居る場所にはいつだってオーランド様がいます。」
全く……私はその程度の事で怒りはしませんが…
そろそろ、もう一度お説教ですかね。
案の定、マリアの行動履歴は一瞬で見つかった。
学園の誰も彼もがカラドリアのご令嬢の一挙手一投足には注意を払っているからだ。
「フェリシア様、ケルシー様。オーランド様とマリア様はあちらの教室にいるようです」
学園の広い敷地、大きな校舎を歩くことしばらく。
人気のない建物の、更に人気のない空き教室が並ぶ校舎の中に2人がいた。
「オーランッぐっ!!」
「お待ちなさいケルシー様」
何も考えず教室に飛び込んでいこうとしたケルシーの髪を握り、後ろにひっぱった。
「ちょ、ちょっと何をなさるのですか!」
「少しお待ちなさいケルシー様。2人が何をしているのかを見極めなければならないでしょう?」
「何を仰られるですかフェリシア様!目の前にオーランド様がいる、それが全てではありませんか!」
「あ、あのですね……カラドリアとグリフィアで何かの取引をしているのであれば割って入るのはまずいでしょうと言っているんです。こんな人気のない教室にきて2人きりでの会話ですから、よほど大事な話だとは考えないんですか?」
「人気のない所で2人きり……フェリシア様!私は嫌な予感がするので参りまッぐッ!?」
また髪の毛を引っ張って制止した。
アトワラス家で、しかも年上の女性だというのに……
毎度毎度……何なのでしょうかこの方は……
はあ……
「お待ちなさいと言っているでしょうに……婚約者の私が静観しているというのになんなのですか全く……いいですかケルシー様?オーランド様の婚約者は私です。彼がいずれ側室を作るようになった時、それを決めるのは私とオーランド様です。ですが、貴女が軽率な行動ばかり取る女であれば私は貴女の側室入りに首を縦に振る事はありません。オーランド様の益になるのかどうか、よくよく考えて行動してください」
「な、なるほど……」
「この場合、人気のない場所で2人で話しているという事が重要です。私とてマリアは生意気に思いますが、カラドリアの力は是非とも手に入れたいのです。オーランド様が望まれるのであれば妾として置いてもよいですし、それだけの価値があの女にはあります。いいですか?邪魔をするような事は―」
そう……マリアは気に食わないところもあるけど、アレはカラドリア。
檻の完成にはきっとマリアの力が必要になる。なくても構わないけれど、カラドリアの力を自由に使えれば完成はぐっと早くなる。私とオーランド様の為にもカラドリアの力は喉から手が出るほど欲しい……
だからこそ、マリアの蛮行にはある程度は目を瞑る。
もちろん、オーランド様が嫌悪感をもっていなければという大前提がつきますし、オーランド様がマリアを拒絶なさるのであればカラドリアなど要りませんが。
「ななな!あの女!オーランド様に何をさせようと!」
教室の中を見ると、マリアの前にオーランド様が跪き手を取っていた。
取引ではないのでしょうか?
挨拶代わりとして、なんで今?
それにマリアのあの顔………全く……
分を弁えろと何度言えば……
「まあ良いではありませんか、キスくら―」
身体中を真っ赤にしてオーランド様に手を差し出しているマリアは生意気だけど……可愛らしい女の子だった。
オーランド様であれば当然ですし、誇らしい気持ちのほうが強いのですが……
「カラドリアめ………私のオーランド様にあのような……欲情した目を向けて……」
ケルシーはどうにもそれが許せなかったらしい。
「ちょ、ちょっとケルシー!」
「ケルシー様!?」
というか……誰が私のオーランド様よ。
リリィが止めようとする前に、気がつけばケルシーは<纏>で強化した身体を使って教室のドアをぶち破って中にはいっていた。流石にそこまでするとは予想していなかった。
「この雌兎がぁあああぁあああ!!!!!」
「はあ………そういう行動を………」
やめなさいと言っているのに……ケルシーは家柄もよく純粋で良い子だけれど、やはり側室には迎えられそうにないですね……それにしても、なんでマリアにだけあんなに当たりが強いのかしら?
「なッ!!なんですの!!?」
「なんだ!?」
「貴様ァ!!!オーランド様を連れ込んでェエ!!許さんぞマリア=カラドリアァアアア!!!!」
「リリィ、お願い」
「畏まりました、フェリシア様」
ドアまで壊してしまって全くもう……
怒られるのは貴女だけではないのですよ。
リリィには人が近寄らないように周囲の警戒に当たらせる。相変わらず、一言で全てが通じる素晴らしい側仕えね。将来、私とオーランド様に仕えるに申し分ない教育。はあ……ケルシーよりリリィのほうがよほど立派じゃないの。折角学園に通っているのに制服ではなくメイド服を着る、オーランド様への徹底した忠誠心は見上げたものね。
「落ち着きなさいケルシー……こんにちは、オーランド様、マリア。一体お2人で何をこそこそと話されていたのですか?」
こうなってしまっては仕方がありません。
話を聞いてケルシーを落ち着かせるとしましょう。
ケルシー様には困ったものですが……私だって全く嫉妬をしないというわけではありません。なので、隠し事は程々にしてくださいね、オーランド様。
お読みいただきありがとうございます!
みんな楽しい学園生活を過ごしているようで何よりです!




