かっこいいキミが好き
私、メリア·アルストロには悩みがある。
それは、私の婚約者がとてもとても、誰よりも、世界で一番、可愛い事だ。
陶磁器の様に滑らかで白い肌、陽に輝くふわりとした金の髪、鮮やかな空の色をした大きな瞳、ふっくらとしている唇、長い睫毛、白魚の様な手、駒鳥の様な美しい声。
まるで物語から抜け出してきたお姫様の様な、可愛い私の婚約者。
ふわふわの白いレースに薄紅色のチュールがふわりと舞うプリンセスドレスがよく似合っていて、大きなリボンで結んだフリルのボンネットがとても愛らしい。
フリルとレースとリボンが似合う、可愛い私の婚約者。
綺麗な手からは繊細な刺繍が生み出され、小さな口からは誰もが聞き惚れる歌が流れ、ダンスを踊れば誰よりも可憐に舞い、輝く瞳が笑めば魅了されない者はなかった。
誰もが羨み恋をする、可愛い私の婚約者。
でも、私の婚約者に本気で恋をして、私の座を奪おうとする人は一人もいない。
ただの一人もいない。
一度だってない。
何故なら世界一可愛い私の婚約者はーー
女装をした公爵令息
だから。
念の為言っておくが、私の性別は女だ。侯爵令嬢が私の肩書きだ。
そして重ねて言うが、とても可愛らしい完璧がドレスとフリルを身につけて微笑んでいるお姫様の様な男性が、私の婚約者だ。
少し昔話をしよう。
私と彼との出会いは幼い頃の、お茶会から抜け出した先の庭の隅だった。
大人の様に長時間黙って椅子に座れない子供らは、早々に仲良く遊んでおいでと庭に放たれる。
その一部で、彼は他の男の子達にいじめられていた。
お爺様から武芸の心得を学び、正義感の強かった私は、いじめていた男の子達を追い払った。
「もう大丈夫よ」
手を差し伸べた先では、女の子と見まごう愛らしさの男の子が涙で濡れた綺麗な瞳で私を見上げていた。
彼はまるで女の子の様で、反撃も反論も出来ない内気な子供だったからいじめられていたのだと言う。
「男らしくないって、お父様にも怒られるんだ。でも。ぼくはお姉様たちみたいなキレイな服が好きで、お姉様たちがむすんでくれるリボンが宝物なんだ」
そう言って俯いて、彼は大きめのふわりとしたリボンタイを握りしめた。
「そのリボンはアナタのお姉様がむすんでくれたの?とてもよく似合ってるのに、そんな風ににぎったらダメよ」
その手を解いて、少し歪んでしまったリボンタイを直す···不器用な私では、直す所か縦結びにしてしまったが。
「アナタはとっても可愛いもの。ドレスもリボンも、きっと似合うわ。好きなら着ればいいのよ。絶対かわいいもの!」
その当時から、ズボンを履いていなければ男の子と分からない程に彼は愛らしかった。だから本当にそう思ったし、男が女の格好をする事に疑問を抱いていないから、私は心からそう言った。
そしたら彼は、とても嬉しそうに花の様に笑った。
私が守らなきゃ。
そう思った。
今思えばその時から彼の事が好きだったのかもしれない。
その後も何度か会い、何度もいじめを防いだり助けたりした。
そして、婚約した。
私は可愛くて荒事が苦手な彼を守りたかった。
私は優しい彼の笑顔を守りたかった。
だから私は、彼を守るために一層お爺様に教えを乞うた。
いつでも、どこでも、可愛くてか弱い彼を守るために。
お父様は今も反対しているけれど、お爺様は喜んで私に武芸を教えてくれた。
お爺様は戦争を経験しているから、勿論進んで危険な事はして欲しくないが、逃げる術、身を守る術は身につけた方が良いという考えの人だったからだ。
机の前でじっとしたり、刺繍の様な細かい事が苦手な私は、外で伸び伸びと体を動かす事が、地面に転がされて何度も立ち向かう事が、馬の背で感じる風が、木の上から見える広い世界が、大好きだった。
だから私は幼い頃から動きにくいドレスよりも動きやすいズボンや、くるくると巻かれた髪よりも邪魔じゃないギュッと縛った髪型が好きだった。
そんなまるで男の子の様な私を彼は好きだと言ってくれた。
「僕はかっこいいメリアが好き」
更に熱心に、鍛錬に取り組んだ。
彼が好きだと言った格好いい私になるために。
そうしていつしか、私はドレスを着なくなった。
男性の様にスラックスを履き、シャツにベスト、テーラードジャケットを重ね、ヒールの低い革靴を履き、許される範囲では愛刀のレイピアを腰に差した。流石に髪は切らせて貰えなかったが、邪魔にならないようまとめて三つ編みにして背中に流している。
彼もまた、いつの間にかドレスを着るようになった。
ふわふわの長く伸ばされた金の髪を可愛いリボンが飾り、レースとフリルのついた可愛いドレスを着て、ヒールの音を控え目に鳴らしながら、彼は女性よりも女性らしくなっていった。
私は、私を認めてくれる彼が好きだ。どんな姿をしていようとも好きだ。
何より彼にとてもとてもよく似合っている。否定する理由なんてない。
だから、彼が女装をしていても私は気にしていない。
むしろよく似合っていてすごく可愛いと思う。
でも。それが今、私の悩みとなっている。
「···要約すると、女性よりも女性らしく、女性よりも愛らしい婚約者の隣にドレスで立つ自信がないという事ですか?お姉様?」
「言葉にすればそうなんだが···」
彼女はジョーヌ·ロワ·アピルーツ第一王女殿下。
貴族の通う教育機関である学園に今年ご入学なされたばかりであり、二つ上の学年である私を「お姉様」と呼んで慕って下さる可愛いお方だ。
僭越ながら、私も可愛い後輩かつ友人として親しくさせていただいている。
こうして悩みを相談出来る程に。
「お姉様、そのお気持ちはよーーーーく分かります。何なんですかあの男は。ホクロ一つない真っ白な肌!綺麗な赤い唇!長い睫毛!小さな鼻!自分が女である自信をなくさせる天才でしてよ」
「いや、そういう所も可愛くて好きなんだが···」
ジョーヌ様は私の婚約者である彼と幼馴染だ。ジョーヌ様の兄君である第一王子殿下と彼が友人となり、第一王子殿下がジョーヌ様に紹介したらしい。
彼は公爵令息だから当然と言える交友関係だ。
ちなみに、第一王子殿下と彼は私の一つ上の学年である。
「今はあの男の好き嫌いではなく、あの男がお姉様の隣に立つ資格の話をしているのですわ!」
「それなら私の方が足りない存在だ」
長年剣を握って来た手は硬く、たこもある。背も女性の中では高い方で、彼よりも背が高い。声も女性としては低音だ。毎日侍女達が手入れをしてくれるが、肌は日に焼けて少しかさついている。
忘れぬよう女性としての振る舞いは定期的に復習しているが、ドレスを着る事も化粧をする事もとんとなく、最近はダンスも男女逆のパートで彼と踊っている。
どう考えても、私は彼の隣に立つ女性として不足している。
「今まで気にしておられなかったのにどうされたのですかお姉様?侯爵様に何か言われまして?」
侯爵は私の父だ。
「まぁ、そうだな。常々言われてはいたが、もうすぐ彼は卒業する。だからいい加減お遊びは止めろと言われてな」
「お姉様はお遊びじゃありませんわ!これ程にまで熱心にされているのに、その本気を分かっていないだなんて、侯爵様の目は節穴ですの?」
「別に男になりたくて男装している訳ではないから、お遊びと言われればそれは···」
「どうしてそこは消極的ですの!」
「だって私はーー」
男になりたい訳じゃない。女である事が嫌な訳でもない。
ならば何故こんな事をしているのか?
『僕はかっこいいメリアが好き』
「格好良くない私は、嫌われてしまうかもしれない。から」
彼は『かっこいいメリア』が好きなのだ。
彼を助けられる、彼を守れる、強くて、格好良い私が。
あの頃の私は、出来ると思っていた。ずっと、永遠に彼を守れると。自分は強いのだと、思っていた。
しかし、ついぞ祖父には勝てなかった。
手合わせをしてくれる護衛達にも完勝は出来ない。
どれだけ鍛えても男性よりも腕は細い。
レイピアは振るえても剣は振れない。
胸ももう押し潰すのは限界だ。
そうして、気づいた。
もし、私が格好良くなくなったら?
不安と恐怖で冷や汗が溢れ出た。
私は、どれだけ努力しても彼を絶対に守る事は出来ない。
もし、私が格好良くない女性だとしたら?
ただの、ドレスを着た女性になったら?
彼に相応しくない、私だったら?
「『彼に嫌われないか』がお姉様の本当のお悩みなのですね?」
ジョーヌ様の言葉に、心臓を鷲掴みにされた心地がした。
私は彼が好きだ。
私に向ける可愛い笑顔も。
私を呼ぶ鈴の様なあの声も。
私に差し出す綺麗な手も。
でも一番好きなのは、私が好きな事を肯定して、好きな事をしている私を好きだと言ってくれる所。
彼以外にそんな人は有り得ないと分かっている。
女性らしくもなく、かと言って男性らしくもない。
中途半端な存在にしかなれない私。
そんな私を受け入れて肯定してくれる人など彼しかいない。
だから余計に、苦しくなる。
「···お姉様。この際ですのでハッキリと言わせていただきますが、あの男はお姉様が思っているよりずっと嫉妬深く意地汚くそれはもうお姉様をたいそう好いてますわ。お姉様が恐れる事など何一つありません」
「だが···」
「もし、あの男がドレスを着たお姉様は嫌いなどと世迷言を言った時は、私がお兄様に言いつけてやりますわ!」
「ふふふっ。ありがとう、ジョーヌ様」
こうして悩んでいた所で仕方がない。
丁度週末に二人で出かける予定がある。そこで、話そう。
例え、彼と離れる事になったとしても。
ーー何故、こういう時に限って間が悪いのか。
否。
こういう時だから間が悪く思うのだ。
ふと、見えてしまった。
ガラの悪そうな男達が子供を路地裏に連れ込む所を。
それを見ぬ振りなど、出来るはずもない。
「メリア、僕も行くよ」
彼にも見えていたのだろう。彼を一人残す事も不安だった。
だから、心配ではあるがありがたい。
「子供から離れろ」
当然、男達が素直に言う事を聞くはずもない。
こちらが可愛らしい少女(男子)と線の細い騎士(女子)に見える事もあって舐めているのだろう。
まぁ当たらずとも遠からずではあるが。
腰のレイピアは抜かない。
貴族が無闇矢鱈に民に武器を用いる事は許されないというのもあるが、未熟な私では傷つけかねないからだ。
体術だけで男達をいなし、投げ飛ばす。
数いるので一人一人仕留められず、何度もそれを繰り返す事になった。
とは言え相手は武術の心得もない一般人。
特に遅れを取る事はないが、私では決め手にかける。
その時だった。
彼の後ろに人影を見つけたのは。
小さいがナイフを持っていて、彼を人質にしようとしているのが分かった。
させない。絶対に。
私は彼を守るんだ。
「メリア!」
彼を庇う時にナイフが腕を掠めてしまった。
ちょっと切れた程度だ。このくらいであればお爺様の特訓の方が痛かった。
だから大して問題はない。
相手が刃物を持ち出してきたならば、いよいよ悠長な事はしてられない。
レイピアを抜くか。
そう、考えている時だった。
力強い腕に腰を抱かれ、くるりと後ろに下がらされる。
「僕のメリアに傷をつけたな」
その腕の主は聞いた事もない様な低い声で、男にレイピアを突きつけていた。
いつの間に私の腰から抜いたのか。
「貴様らを許しはしない」
そう断言した彼は、レイピアを軽々と扱いつつーーいや、実際に彼にとっては軽いのだろう。まるでタクトの様に軽やかに機敏に振るわれている。
私ではそうはいかない。
フリルたっぷりのドレスが翻り、彼のヒールが腹を抉る。
ダンスのターンの様に長い髪が宙を舞い、肘が鋭く鳩尾に突き刺さる。
リボンがひらりと尾を引いて、レイピアの柄が顎を砕いた。
気がつけば、男達は皆地に伏し呻いていた。立っているのは私のレイピアを片手にしたドレスを着た私の婚約者だけ。
「ごめんメリア、僕のせいで君をまた傷つけてしまった」
剣術の稽古を痛くて怖いと言っていた。
「すぐに屋敷へ戻ろう。子供は僕の家で保護するから」
いじめられるから他の人は怖いと泣いていた。
「馬車までちょっとだけ我慢して」
私よりもか弱いと、ずっと思っていた。
でも、私を抱き上げる腕は揺るぎもしなくて、真っ直ぐに前を見つめる瞳は強くてーー
嗚呼。
格好良いと、思った。
「ーーだが、腕を少し切っただけで抱き上げて馬車まで行くのは大袈裟だ。降ろして」
「僕にとっては大袈裟なんかじゃない」
「この姿では衆目を集めてしまうだろう」
「むぅ···」
彼は渋々だが降ろしてくれた。
そこで、気がつく。
「貴方はそんなに背が高かったのだな」
今まで彼の目線は私よりも少し下にあった。お互いにヒールを履いていてもだ。
だが、今の彼の目線は明らかに私よりも上、私の頭にある。下を見れば、ドレスの裾が不自然に浮いていた。恐らく、中腰の様にして身長を誤魔化していたのだろう。ドレスならば容易には分からない。
「···騙しててごめんなさい」
「何故謝る?」
彼は口ごもった後、私の腕に優しく触れた。
「せめて応急処置はさせて」
そう言って彼は私の腕にハンカチを巻き始めた。
もちろん彼が綺麗な刺繍をしたハンカチだ。
よく見ればボンネットのリボンが緩み、彼の白い首が覗いている。
陶磁器の様に滑らかで雪の様に白いその首は、女性とは少し違う、筋が通ってしっかりとしていて、少し突き出た喉仏があった。
好奇心の様に、無意識のまま彼の首のリボンを解いてボンネットを後ろに落とす。
「メリア?」
彼の首を左手で撫で、頬から顎にかけて右手を滑らす。
「めっめめメリア?!」
「···気がつかなかった」
彼のふわふわとした髪とリボンや襟で隠されていた事に。
こうして見て触ればすぐに分かる。
どれだけ愛らしく少女の様な顔をしていても、彼は男性なのだと。
「···ごめん」
「何故謝る?」
そのまま手を滑らせ肩をなぞれば見た目よりもフリルのすぐ下にしっかりとした肩がある。私よりも広い肩。
「だって、僕は···男だから」
「知っているが?」
右腕を取り、日除けの長手袋をその腕から抜けば、思っていたよりも骨ばった大きな手が現れた。
手の皮の少し厚い、剣を持つ手だ。
「そうじゃなくて、そのーーメリアは『かわいい』僕が好きなんでしょう?」
どきりとした。
「フリルとレースとリボンが似合う、女の子みたいな可愛い僕が、好きでしょう?だから、こんな。男の僕はいつまでもメリアの好きな『かわいい』僕じゃいられない」
それはまるで、私が思っていた事と同じだったから。
「可愛くなくて、ごめんなさい。メリアが望むなら、婚約解消もーー」
「ブルーメ」
やっと気づいた。
「私はブルーメが好きだ。可愛いブルーメだけじゃなく、優しくて弱いブルーメも、私を頼ってくれるブルーメも、強くて格好良いブルーメも、全部大好きだ!」
私が『かわいい』から彼を好きな訳じゃないのと同じ様に、きっと彼もまた『かっこいい』から私を好きだと言ってくれた訳じゃなかった事に。
「ブルーメは格好悪い私は嫌いだろうか?」
「そんな事ない!」
当然だと、雄弁な瞳が私を見つめる。
「ブルーメより剣が弱くても、ブルーメを守れなくても、ブルーメよりも可愛くなくても、ドレスを着ていても、刺繍が下手でも、格好良くなくても、私を好きでいてくれる?」
「当たり前だよ。僕は僕の好きな事を認めてくれて、頑張り屋さんで、困っている人を見過ごせなくて、いつでも僕の手を取ってくれる、優しいメリアが大好きなんだから!」
その言葉が何よりも嬉しかった。
だから、悩みなんてなくなってしまった。
「ブルーメ·シナンシス様。卒業パーティーのダンスを私と踊ってくれませんか?」
「メリア·アルストロ嬢。卒業パーティーのダンスを僕と踊ってください」
二人とも同じ事を言っていた。
返事なんて決まっている。
だから二人で手を握り返した。
「何だか変な感じね。いつもは私が貴方を迎えに行っていたから」
「うん、そうかもしれない。でも僕はメリアに会えるならどこでだって構わないよ」
「私もよ」
今私は迎えに来てくれた彼の馬車に乗っている。
今までは男装していた私が、女装していた彼を迎えに行っていたため、新鮮な気分だった。
「でも、私おかしくないかしら?ドレスなんて久しぶりだから心配だわ」
今日は彼の卒業パーティーの日。
私は男装をやめ、ドレスを着て、髪を巻き、ヒールを履いて、侯爵令嬢らしく着飾っていた。彼がくれた、彼とお揃いのドレスだ。
言葉使いもきちんとそれらしくしている。特段深い意味はないが、元々の口調でもあるし、ケジメのつもりでもある。
「どこもおかしくなんかない。とっても、綺麗で、可愛くて、素敵だよ」
彼が私を見てあまりにも眩しそうに言うものだから、心臓が早鐘を打って仕方がない。
「貴方もとても素敵よ。綺麗で、格好良くて、可愛いわ」
彼もまた女装をやめ、きちんと正装をしていた。髪は短く切ってワックスで整え、少し丈の長いジャケットにベストを着て、襟にタイをして、スラリと長い足にズボンと革靴を履いていて、眩しいくらいに素敵だった。
「今の僕は可愛くしてないのに」
もちろん意図的に女性らしく可愛らしくしていた時と比べれば今の彼は誰が見ても男性だし格好良い。しかし女装をやめた所で彼の白い肌がくすむ訳でも、金の髪が痛む訳でもない。
流石に美少女には見えなくとも、彼が美人で綺麗な顔をしている以上、私の欲目も含めて仕方がない。
「私がどんな貴方も好きだから可愛いと思うのよ」
「···ずるいよ、メリア。それはずるい」
素直にそう言えば、彼は耳まで赤く染めてそう抗議した。
「みんな驚くかしらね」
「うん、そうだね。メリアはともかく僕なんか身長も誤魔化してたからなぁ」
「いい鍛錬になってたんじゃない?」
「流石メリア、よく分かってるよね」
苦笑しながら彼は止まった馬車から先に降りた。
「さあ、お手をどうぞ。僕のメリア」
差し出された手にそっと自分の手を乗せながら私は笑う。
「ええ、ありがとう。私のブルーメ」
騒然とする人々の前で、私達は目を合わせて、笑った。
お読みいただきありがとうございます。
彼の名前は出さずに書こうと思っていたのですが、出さざるを得なくなり、ぐだぐだと登場させてしまいすいませんでした。ここに改めて登場人物を記させていただきます。
メリア·アルストロ:男装の似合う侯爵令嬢。祖父を真似た古風な口調で話す。ちゃんとお嬢様らしくも話せる。ブルーメの事が好き。
ブルーメ·シナンシス:女装の似合う公爵令息。一人称は「僕」。友人以外だと言葉の丁寧さは意識するが、お嬢様言葉な訳ではない。メリアの事が好き。
相思相愛、類友でもある大変仲の良いカップルです。2人のファンクラブがあるとかないとか···