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知識チートと解析スキルで無人島を『理想の都市』に創り上げる  作者: 佐藤 凛


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9/23

寝床と農地

洞窟から戻ると、夕暮れの橙色が拠点の石壁に柔らかく映えていた。

アレンが荷物を降ろしたところで、ステラがふと思い出したように顔を上げる。

「そういえば、あのキノコ食べた? 何個か渡してたよね」

「う、うん、食べたよ?」

「なんで疑問形なんだよ。本当に食べた?」

「はい、食べてないです」


あまりにも素直な告白に、アレンは苦笑を漏らした。

「素材加工のスキルを試しに使ってみたら、特性付与で美味しくなったんだよ」

「本当に? ……じゃあ食べてみる……?」


アレンは加工済みのキノコをひとつ手に取り、そっとステラに渡した。

淡い香りが立ちのぼり、森の果実に似た甘さを含んでいる。

ステラは恐る恐る齧り、目を瞬いた。


「……おいしい? ……のかな」

「だろ、だろ。これで毎日食べられるね」

「……そうだね、食べれちゃうね。(味だけの問題でもないのだけれど……)」


言葉とは裏腹に、内心では毎日キノコという現実に若干の抵抗感が生まれていたが、ステラはそれ以上何も言わなかった。

二人は簡単な日課を終えると、次の作業へと移った。

「アレク、今日は何を作るの?」

「まずは洞窟の床や壁を加工して住環境を整える。それから照明の取り付けだな」

「わかった。今日も頑張りますか」


アレンはアイテムボックスから昨日集めた素材を一気に取り出した。

木材、樹皮、苔、枝――洞窟内に甘い木の香りが広がっていく。

「すごい量だけど……私はどうすればいい?」

「洞窟の入口の扉を組み立てておいてくれると助かる」

「これかな……?」


ステラは取っ手や蝶番らしき部材を拾い上げ、細かい確認を始めた。


二、三時間後。

洞窟の中は見違えるほど整えられていた。

「アレク、これで大丈夫そう?」

「うん、完璧。入ってみようか」


扉を開けると、ふわりと乾いた空気が流れ出た。

内部は真ん中に簡易的な仕切りが設けられ、昨日作ったベッドがそれぞれの区画に置かれている。

「す、すごい……。これをこの時間だけで作ったの?」

「そうだよ。でも意外に難しくなかった。この壁は岩壁と少し隙間を空けて、その間に樹皮や枝葉を詰めて断熱特性を付けてある。岩からの熱や湿気はほとんど防げるはずだ」

「そ、そうなんだ……。これなら快適に過ごせそうね。これで完成?」


「いや、あと照明だ」

「あ、そうか。どうやって照明を作るの?」

「魔窟にあった魔気苔、覚えてるだろ? あれを使えると思って」

「あったね。確かに光ってたし照明向きかも」


アレンは魔気苔を取り出し、余った材木を加工してランプの枠をつくる。

木の中に魔力が流れ込み、苔はぼんやりと青白い光を放ち始めた。

「特性で魔力濃度を高めてある。これなら半永久的に光り続けるだろう」

「どこに置く?」

「好きなとこでいいよ」

「じゃあ勝手に置いちゃうよ」


照明が設置されると、洞窟の寝床は温かい光で満たされ、つい昨日までの薄暗い避難所とは違い、立派な“生活空間”へと変貌した。

その後、軽く食事を済ませてから少し休むと――

「次は何する?」

「次は……農業を始めようか」

「確かに。魚だけだと飽きるし、栄養も偏るもんね」

「やっぱり米とか食いたいよな」

「間違いないね。今すぐつくろう」


二人は今までにないほど前向きな気力で満ちていた。

「でもどうやってここで農業を?日が当たらないよ?」

「以前の土地解析で心当たりがあるんだ」


二人は再び魔窟へと戻った。

薄暗く湿った空気が漂い、天井から滴る水音が静かに響く。

「ここで農業を? 危なくない?」

「もちろん魔獣対策は必須だ。でも魔素濃度が高い場所は、魔力のない動物は近づきにくい」

「なるほど……で、魔獣対策はどうするの?」

「そこで、ステラにも協力してほしい」


アレンは広い空洞を歩き、農業予定地を測定し始めた。

地面に石で印をつけ、水田予定地、畑、水路のラインを入れる。

「何を協力するの?」

「この範囲を、結界で保護してほしい」

「やってもいいけど……結界って維持にけっこう魔力使うんだよ?」

「レベル上げにもなる。それに下層にある魔石が手に入れば魔力なしでも維持できるはずだ」

「本当に? ……まあ、じゃあやってみる。『結界』」


透明な膜がふわっと広がり、農業予定地をすっぽり覆った。

「ステラ、ありがとう。これで安全に作業できる」

「それはいいけど……こんな地下でどうやって育てるの?」

「ここで見つけた苗木や種、それと魔素水を使えば日光なし・肥料なしでも成長できるらしい」

「すごい……。この洞窟で育てるにはぴったりだね」

準備を進めていると――


《レベルアップを報告します。それに伴いスキル『地形変動』を取得しました》

「ん? スキルオープン」


―――――――――――――――――――――

・集団統率


特定の協力関係にある人物に指定した役割において能力が引き出され作業効率が上昇し、連携が向上します。なお、指定した役割と適性が一致してない場合には効果は発動しません。


・地形変動

周囲の地形を“あり得る範囲”で整形できる。

創造や破壊はできないが、大規模ほど魔力消費が増える。


2/2

―――――――――――――――――――――


「これは……農地づくりが相当楽になるな」


「何があったの?」


「地形変動ってスキル。溝掘りや整地が自在にできるみたい」


「なるほど……っていうかアレク、なんでそんなにスキル頻繁に手に入るの?」


「え? レベル上がるごとにもらえるんじゃ?」


「いやいや、普通はレベル上げても滅多に手に入らないよ」


「そうなのか……しかもタイミングが良すぎる。まるで誰かが見計らってるような……」


アレンは疑念を抱きながらも、作業を進めた。

地形変動の力は想像以上で、土を押し広げ、地面を平坦にし、水路を滑らかに通していく。


準備が進むにつれ、魔窟はまるで別世界のように整っていった。


日が暮れるころ、農地の区画はすべて完成した。

水田、畑、苗床、実験用の小さな区画――全体でテニスコート二~三面ほどの広さになった。


「ひとまずはこれでいいだろう」


「すごいね地形変動……一瞬でここまで整えられるなんて」


「魔素濃度が高い土地だと、作物の成長が早く収穫量も多くなる。二人分の食料なら十分だ。今後人が増えたら、そのときまた拡張すればいい」


「そうだね。今日は帰って休もうか」


二人は植え終えたばかりの農地を後にし、赤く染まり始めた洞窟の出口へと歩き出した。

地下とは思えない温かな光が差し込み、二人の影がゆっくりと伸びていく。


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