素材探索
アレクとステラは、寝床を作るための素材を集めようと、外へ出た。
森の朝はひんやりとしており、木々の隙間から差し込む淡い陽光が、湿った地面をまだら模様に照らしていた。
「アレク、まず何を探すの?」
ステラが首をかしげながら問うと、アレクは周囲の木々を一通り見渡しながら答えた。
「簡易的なベッドや入口の壁、枠組みや柱は竹や木を使う。葉や樹皮、ツルなんかも役に立つ。他には照明、断熱材、毛布や枕になりそうな素材も探す必要がある。」
「もう、目星はついてるの?」
「少し待ってて――『土地解析』」
アレクの声に応じ、視界の端に淡い光の表示が浮かぶ。
《確認しました。どの情報をご所望ですか?》
1.島の地形
2.地盤の硬さ
3.水源
4.埋蔵資源
「埋蔵資源を。」
《了解しました。魔力を1消費し、情報を送信します。》
アレクの目が表示情報を追う。
「……なるほど。ん? なんだこれ?」
「どうかしたの?」
「解析結果に、少し気になる部分があって。」
「そこに素材がありそうなの?」
「分からない。でも、確かめたい。ひとまず行ってみよう。」
ステラは首をかしげつつも頷く。
「???」
二人は森の奥へと足を進めた。
しばらく歩くと、アレクがふと立ち止まる。
「この辺りだな。」
「え、ここ? 何もないように見えるけど……」
アレクが木々の影をかき分けると、暗がりに口を開ける洞窟が姿を現した。
最初に見つけた洞窟よりも一回り大きく、入口周辺の岩はどこか滑らかで奇妙な光沢を帯びている。
「あっ、あった。あの洞窟だ。」
「洞窟……? でも、何がそんなに気になるの?」
アレクは慎重な口調で答える。
「どう説明すべきか……この洞窟だけ、他の地形とは違う形成過程を経ているんだ。」
「どうして分かるの?」
「洞窟の奥深くに泉があって、それが地脈を通して周囲に影響を与えているみたいだ。」
「なるほど……?」
「まぁ、実際に見て確かめよう。」
二人は洞窟の中を覗き込み、恐る恐る足を踏み入れた。内部は薄暗く、入口からの光が少しずつ遠ざかる。
やがて地面がゆるやかな下り坂になり、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
数メートル降りると、壁際に淡く光るものが目に入った。
「アレク、あれ……光ってるよね?」
「調べてみよう。『素材解析』」
《了解しました》
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【解析結果】
[名称] 魔気苔
[分類] 魔力植生体
[危険度] 低
[基本情報]
洞窟壁面に群生する発光苔。魔力泉から流れ込む魔力を吸収し、時間をかけて放出する性質を持つ。
[特性]
光量は低いが、半永久的に持続する自然照明となる。外部刺激に弱く、強く触れると光が消える。
[採取難易度] 易
[備考] 高濃度魔力地帯でのみ成長する。
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「アレク、どうだったの?」
「奥の泉……やっぱり魔力泉だったみたいだ。」
ステラは目を丸くする。
「魔力泉って、どんなものなの?」
「魔力そのものが湧き出る泉だ。この洞窟全体が魔力で満たされていて、その影響で植物が進化している。例えば、この苔の発光能力だ。」
「じゃあ、この洞窟には他にも変わった植物があるかもしれない?」
「そうだろうな。植物だけじゃない。鉱物や生物、地層にも影響が出ている可能性がある。」
ステラは少し不安そうに周囲を見回した。
「……危険な動物とかは?」
「大丈夫だよ。この地下は上層と下層に分かれている。魔力の影響を強く受けた生物は下層にしかいない。」
「じゃあ、上層を中心に探索すれば問題なさそうだね。」
「そうだな。俺は戦闘能力がほぼゼロだからな……」
ステラが苦笑する。
「私もまだまだ強くないよ。慎重に行こう。」
洞窟の奥へ進むと、ふいに視界が広がった。
そこは天井の裂け目から光が差し込む小空間で、小さな池と奇妙な樹木が点在している。湿った空気とやわらかい光が混ざり合い、どこか神秘的だった。
「アレク……ここ、外の森に似てるけど、木の一つひとつが微妙に違うね。」
「池の水も、普通の透明じゃない。ほんのり色づいてる。」
ステラが木を触ろうとすると、アレクが苦笑いで制止した。
「素材解析したいんだけど……魔力が無い。」
「あ、レベルアップのときポイント使ってたよね。魔力に振って回復できたんじゃ……?」
アレクは気まずそうに視線をそらす。
「それが……」
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レベルアップ直後――
「魔力に振りたいけど……体力1はまずいよな。『ステータスポイント』」
《選択してください:攻撃力、防御力、魔力、体力、素早さ、政治力、交渉力、洞察力》
「体力に振る。」
《ステータスポイントを1消費し、体力を強化しました》
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「……そういうわけだ。」
ステラはため息をつきつつも納得した。
「じゃあ、魔力を回復できるものを探さないと。」
アレクは池の水を見つめ、慎重に言った。
「この変色した水……おそらく魔力を含んでいる。飲めば回復する可能性がある。」
「でも解析してないよ? 大丈夫なの?」
「……飲んでみるしかないかな。この島を早く把握したいし。死にはしない……と思う。」
ステラは心配そうに眉を寄せながらも、アレクと共に池のほとりへ向かった。
「何かあったらすぐ言ってね。」
「わかった。」
アレクは両手ですくい、恐る恐る口に含む。
一瞬、体の奥が熱くなるような感覚が走った。
「アレク、大丈夫?」
「うん……多分。」
その瞬間、頭の中に通知が響く。
《報告します。魔力が回復し、体力が1低下しました》
「どうしたの?」
「魔力は戻ったけど……体力が1削れた。」
ステラは青ざめた。
「……もし体力を2に上げてなかったら……」
「危なかったな。けど魔力は使えるようになった。気を取り直して……まずは水の解析だ。」




