最初の出会い
走り出した先で倒れていたのは、黒髪の長髪でスーツを着た女性であろう。どこか見覚えのある姿だった。
しかし、走り出したはいいものの、自分はどれほどの間、人と会話をしていなかったのだろう。
そう思いながらも、すでに近くまで寄ってしまっている。
ならば、喉からなんとか声を絞り出すしかない。
「だ…だいじょうぶか」
すると、女性の体がピクッと動いた。
「み、み…ずを…」
後ろに視線を向けると、形をなんとか保っている程度の船のようなものが見えた。
おそらく長いあいだ船内で過ごしていたのだろう。肌の水気が抜け、完全に脱水状態に陥っている。
「み…水を探してくる。少し待っていろ」
そう言うと、倒れている女性は微かに首を縦に振り、再び目を閉じた。
よし、と意気込む。
「そうだ…スキルに水源を特定できるものがあったな。『土地解析』!」
《確認しました。どの情報をお望みですか?》
1.島の地形
2.地盤の硬さ
3.水源
4.埋蔵資源
「3の水源の情報を頼む」
《了解しました。魔力を1消費し、島の水源情報を送信します。》
「うぅ…」
頭の中に、この島の地表にある全ての水源の情報が流れ込んできた。
「しかし、水源以外の島の情報がぼやけて見えないな…まあ今はそんなことより」
そう思い、最も近い水源へ向けて走り出す。
やがて、小さな池が見えてきた。
「本当にあった…しかし、どう運ぶかだが…」
しばし考えていると、
《お知らせします。レベルアップに伴いステータスポイントの配布と『アイテムボックス』スキルを追加し、魔力を回復します》
「なるほど…スキルを追加して魔力を消費することでレベルが上がっていくのだろうか」
そして、
「まずはスキルの効果を確認するところからだな。『スキルオープン』」
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・土地解析
島の地形、地盤の硬さ、水源、埋蔵資源を瞬時に高精度なデータマップとして表示。
・素材解析
未知の植物や鉱石、魔獣の素材の成分、用途、加工難易度を解析。代用品や毒性の有無を判断。
・国家解析
住民の数、健康状態、資源の在庫、建築進捗、犯罪発生率といった、国全体の運営状況をリアルタイムでデータ化し表示する。
・アイテムボックス
自分の持っているアイテムを、異次元空間に収納し、必要な時に取り出すことができます。容量は魔力に応じて決まり、時間や重さの影響は受けず新鮮な状態が保たれ。なお、魔力は取り出す時のみ消費する。
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「取り出す時だけ魔力を消費するなら、なんとか足りそうだ」
そう判断し、池の近くへ寄る。
「『アイテムボックス』」
そう呟くと、
《了解しました。対象と大きさを選択ください》
「池の水をペットボトル一杯分」
《確認しました》
次の瞬間、池の水が少し吸い取られていくような感覚があった。
《完了しました》
・浄水された水(500ml)
「これで、ひとまずは大丈夫だろう」
そうして、倒れている女性のもとへ急いで戻った。
戻ると同時に、
「『アイテムボックス』」
《了解しました。対象と大きさを選択ください》
「ペットボトルの水を1杯分取り出して」
《完了しました》
目の前に、透き通った水が入ったペットボトルが現れた。
「これ、飲めるか」
女性は慎重に口を開いた。最初こそ警戒していたが、次第に勢いよく水を飲み干していく。
「ぷはぁぁぁぁあああ!」
飲み終えると、歓喜の声を上げた。
「お、おいしかったか?」
「そりゃあ、3日も何も飲んでなかったからな…何笑ってんだよ」
「いや、さすがにだろ。3日も飲まずによく生きてたな」
「ほんとに死にそうだったんだからね!!!」
「でも、まあ間に合ってよかったよ」
「ありがとね。走って探しに行ってくれて嬉しかったよ」
「うるせぇよ」
「素直じゃないねぇ」
「そろそろ暗くなってきたな」
「どこか泊まれそうな場所はあるか?」
「そうだな、色々聞きたいこともあるが、まずは泊まれる場所を探すか。『ステータスポイント』」
《了解しました。攻撃力、防御力、魔力、体力、素早さ、政治力、交渉力、洞察力から選択ください》
「魔力」
《了解しました。ステータスポイントを1消費し、魔力を1強化しました。また、魔力を回復しました》
「『ステータスオープン』」
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[名前] 未設定
[年齢] 18
[レベル] 2
[職業] 開拓者
[スキル] 土地解析/素材解析/国家解析
[魔力] 2/2
[体力] 1/1
[攻撃力] 1
[防御力] 1
[素早さ] 1
[政治力] 100
[交渉力] 100
[洞察力] 100
[ステータスポイント] 0
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「何をしたんだ?」
「探索スキルがあるから、それを使うために魔力を回復したんだ」
「そうだったのか」
「『土地解析』」
《了解しました。どの情報をお望みですか?》
1.島の地形
2.地盤の硬さ
3.水源
4.埋蔵資源
「1について」
《了解しました。魔力を1消費し、島の地形情報を送信します》
「少し登った所に、小さい洞窟のようなものがあるらしい」
「ひとまず、そこでなんとかしようか」
そう言い、歩き始める。
送られてきた情報と実際の景色が一致してくる。
「ここが、そうか」
「そうみたいだ。かろうじて寝ることはできるだろう」
そう思い、一息つく。
「……もう寝たのか。まあ疲れていたんだろう」
そのとき、ふと疑問が浮かんだ。
この女性は何者で、どこから来たのか。
「どうして異世界に来たはずなのに、前世と同じような服を着ているんだ? イメージと違い、同じような文明の世界なのか?」
気になることが次々湧いてくる。
「さっきの土地解析で周辺の安全は確認できているし、一度戻って、乗ってきた船を少し見てみるか」
そう考え、再び元来た道を歩き始めた。




