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知識チートと解析スキルで無人島を『理想の都市』に創り上げる  作者: 佐藤 凛


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都市「ヴェルセリア」誕生

謁見の間を下がったあと、アレンたちは使用人に導かれながら長い回廊を歩いていた。王との謁見は無事に終わったとはいえ、まだ本番は残っている。次は宰相や各大臣が一堂に会する正式会議が控えているのだ。緊張というよりは、これからようやく本格的な交渉が始まるという実務的な気配が一行の空気に漂っていた。


ミランは、少し離れたところで部下に指示を出していた

「護衛隊の移動準備を進める。王都駐屯の別の部隊の護衛隊には詳細を説明して、必要装備を抽出して……」


「ミランは仕事が早いな……」

「実はミランはもともと実務特化の副隊長だ。任せておいて問題ない。」

ガランが肩を叩く。


「俺たちは俺たちで、商会との交渉だな。食料や防具などあらゆる分野でトップのシェアを持つ王国最大の商会グランデ商会……前評判通りなら、技術支援も流通も一気に加速できるはずだ。」

アレクは軽い足取りで続く。


そして二つの班は分かれ、ミランは王城へ戻り、アレン・ステラ・ガランは王都の大通りを抜けてグランデ商会の本館へ向かった。


王都中心部にそびえる巨大な白壁の建物。三階建て以上あるが、重厚な石造りと金属装飾が施され、入口には常に客と荷馬車が行き交っている。王国最大商会という触れ込みは伊達ではなく、ガランも思わず感心の声を漏らした。

「……相変わらずデカいな。王都に来るたびに思う。」


受付で事情を話すと、上階の特別応接室へ案内される。

現れたのは、柔らかい表情と鋭い目を併せ持つ壮年の男性。グランデ商会の代表オルトンその人だった。


「いやあ、これは珍しいお客様だ。新たに島が出現したそうだね。そこで新たな都市を作ろうとしているとか……しかも王が直々に認めたという。歓迎しますよ。」

アレンたちは挨拶を済ませ、アレンが説明を始める。

「実は島には独自の魔力の流れていて、魔力を帯びる木材や岩石を加工することで高性能な道具や資材が作れます。」


オルトンの表情が一瞬だけ鋭さを増した。

「魔力を帯びた素材……なるほど、実在するとは。」

「ここだけの話なのだが特性を付与することもできて、断熱性を高めたり、植物の育成を早めるたりすることができます。」


ステラが横から補足する。

「もしそれを安定的に流通させることができれば商会にとっても大きな価値があるはずです。だけど、量産体制を築き王都や他国への販売網、交易ルートを整えるには商会の力が必要です。」


オルトンはしばらく考え込み、それから口角を上げた。

「……面白い。いや、面白すぎますな。商人として最も大事な事は、こういうチャンスを逃さないことですよ。もちろん協力しましょう。」


その場で承認が得られるとは思っていなかったので、アレンたちは驚く。

「ありがとうございます。今後の交易や価格設定などは、後ほど行われる会議で正式に決める予定です。」

「了解した。では時間まで、私の商会の施設を案内しよう。王都の現実を見ておくのも悪くない。」


レグナの案内で商会内部を歩く。

 まず案内されたのは物資広場と呼ばれる大型売場。食糧、工具、雑貨、生活用品などが並び、多くの人々で賑わっている。


「こちらは我々が仕入れと販売を一括管理している場所だ。」

「ここに島で採れる魔力樹や農場でとれる作物が定期的に入るようになれば、木工品や食料品の質が飛躍的に上がるだろうな」

アレクがつぶやく


 続いて武具売場。鉄製の剣、革鎧、盾が整然と並んでいる。

「島の素材なら、さらに強度が上げられるかもしれない」

ステラが感想を漏らす。

「鋭い指摘だ、ステラ殿。魔力素材の流通は武具業界にも革命を起こすだろう」


 最後に案内されたのは工房街だった。溶鉱炉の熱気、鉄を打つ音、木槌のリズムが響き渡る。

 アレクは木材加工所の内側を見ながら呟いた。

「この技術が島に入れば、文明の基盤が一気に整う……」

「良い職人がいれば紹介しよう。島に移住したい者もいるかもしれん。」

オルトンは笑いながら言った。


さらに、輸送・物流部門の馬車隊、都市圏と周辺領地をつなぐ支援部門まで巡り、気がつけばかなりの時間が経っていた。

使者が会議の時間を知らせに来た


「そろそろ会議の時間ですね。代表、本日はありがとうございました。大変参考になりました。」

「こちらこそ。島の発展――期待していますよ。」

そう言ってオルトンはアレンの手をしっかりと握った。


案内役に導かれ、アレンたちは再び王城へ戻る。

重厚な扉の向こうには、すでに宰相、各大臣、それに王も着席していた。緊張感が漂っていた。


宰相ベリアルが最初に口を開く。

「では、島との今後の国交方針について、いくつか議題を提示する。まず、島の正式名称案の確定だ。」

アレンが島での会議案を読み上げ、王国側と調整したうえで名称は新しい領域を表す『ヴェルセリア』と承認された。


続いて、島の基盤整備について。

「島の照明に魔力を帯びた素材を使っているそうだな?」

「はい。魔力苔を活用することで作成可能です。」

「他にも魔力樹や魔鉱など魔力を帯びた素材があると。価格は……」


大臣が資料を広げ、双方で価格交渉に入る。島側が持つ魔力素材との等価交換案が提示される。

「申し訳ないが、その価格は低すぎます。」

アレクはすかさず指摘した。宰相がわずかに目を細める。

「理由を聞こう。」

「単純に希少性が高いうえ、島の労働力は限られている。大量生産はできません。……たとえば魔力樹一本につき金貨三枚、魔力鉱は属性によって金貨五〜八枚でどうでしょうか。」

 大臣たちがざわめく。

「強気だな……だが妥当だ。」


オルトンが口を開く。

「市場価値から見ても適正だ。王国としても、正当な市場価値で買わねばならない。」

宰相は短く頷いた。

「よかろう。その価格で王国は買い取る。」


さらに、文化・技術交流も議題に上がった。

「前世の文化? それは……技術も含むのか?」

「はい。文明として共有可能な範囲で提供します。その代わり、アレクは王国の文献、生産技術の共有を求めたい」

さらにステラが付け加える。


「あと、もしかしたら王都で使われている装備や道具を、島で加工し直すことで品質を底上げできる可能性があります。」

 それを聞いたベリアルは興味深げに笑った。

「技術交流は双方に利益がある。王国としても歓迎しよう。」

そして最も重要な点――安全保障に関する協定。


「もし島が他国に攻められた場合、ミドロア王国は必ず救援を送っていただけますか?」

アレクの問いに、王が力強く応えた。

「もちろんだ。独立都市として承認する以上、我らは君たちの同盟国となる。いざという時は王国軍を派遣する。」


 アレクは深く頭を下げた。

「ありがとうございます。」

 数時間に及ぶ会議の末、すべての取り決めが整った。


 王城を出たとき、夜空には星が輝いていた。

「……終わったな。」

ガランが息をつく。


「まだ始まったばかりよ。」

ステラが微笑む。


「これから都市を作り、文明を形にしていくんだから。」

「そうだな。」

アレクは静かに頷き、王都の灯りを振り返った。

「さあ、島に戻ろう。みんなの未来を築くために。」


 翌朝、移住の準備を終えガラン、ミラン、護衛隊の総勢三百名を引き連れ、アレクたちは船に乗り込んだ。

 再び島へ向けて──新たな“独立都市”としての第一歩を踏み出すために。


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