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知識チートと解析スキルで無人島を『理想の都市』に創り上げる  作者: 佐藤 凛


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最初の国「ミドロア王国」

 アレクとステラは、ガランとミランに案内されながらミドロア王国行きの大型船へと足を運んだ。船体は陽光を受けて白く輝き、港には水夫たちの掛け声が響いている。帆が張られると同時に潮風が強まり、船はゆっくりと桟橋から離れ始めた。


「風向きは悪くない。順調にいけば半日で大陸が見える。」

ガランが海図を確認しながら言う。


 海路は安定していた。ステラは船縁にもたれ、遠ざかる島影を見つめる。アレクは静かに海を眺めながら、これから向かう人の世界に思いを馳せた。


 やがて大陸の陸影が見えた頃、空は柔らかな夕日に染まり始めていた。船が港に着き、甲板から降り立った瞬間、アレクは湿った土の匂いと石畳の固い感触に島とは異なる文明の温度を感じた。


「……大陸に来た実感が湧いてくるな。」

「街並みも、前世の中世ヨーロッパに近い感じね。雰囲気は悪くないわ。」

ステラが周囲を観察しながら呟いた。


 ガランたちは二人を馬車に乗せ、王都へ向かう街道へと踏み出した。



 数時間ほど街道を進んだころだった。茂みの奥から気配が走り、十数名ほどの粗末な装備の男たちが飛び出してきた。


「山賊か……予想どおりだな。」

アレクが声を低くする。


「この辺りはよく出るんだ。まあ、いつもと同じだ。」

ガランが大剣を担ぎ、肩を回す。


「ステラ殿、アレク殿、馬車の中に。」

ミランは双剣の柄に手をかけながら、視線を鋭く巡らせた。


 山賊が一斉に突っ込んでくる。次の瞬間、ガランが重鎧とは思えぬ速度で踏み込み、大剣を振るい山賊の武器ごと叩き折った。ミランは舞うような機動で敵陣に入り込み、三人を瞬く間に昏倒させる。


「まだ後ろから来ます!」

護衛隊の一人が叫ぶ。


 その声に呼応するように、ステラが馬車から静かに降りた。


「ここまでね。」


 周囲の気配を読み取り、範囲を見定め、淡く揺らめく結界を展開する。光が弾けた瞬間、突撃してきていた山賊たちが一斉に膝を折り、地に伏した。


「な……なんだ、この力……」

残った山賊たちが恐怖に声を震わせ、そのまま逃げ去った。


 戦闘が終わるまで、十五秒にも満たなかった。


 ガランが苦笑する。

「護衛隊が霞むレベルだぞ、ステラ殿。」

「あなたたちが大半倒したじゃない。私は最後を締めただけ。」

「いや、助かったよ。」

アレクが苦笑しながら言えば、ステラは照れ隠しのように肩をすくめた。


 山賊撃退後、馬車は再び街道を走り出した。


 王都が見えてきた頃には夕暮れが深まり、石造りの高い城壁と灯り始めた街の明かりが温かく迎えてくれた。


「ここが……ミドロア王国の王都か。」

アレクは息を呑んだ。


 その夜、2人は宿屋に泊まることになった。

だが、ステラはベッドに腰掛けた瞬間、困ったように眉を寄せた。


「硬い……これは硬いわよ。」

「島のベッドは特性で快適度が上昇させられているからな。」

アレクが苦笑する。

「あなたはいいけど、私は明日絶対体が痛いわ。」

そう言いつつも、ステラは横になり小さく微笑んだ。

「……でも、こういう不便も悪くないかもね。」



 翌朝、ガランとミランの先導で王城へ向かった。白い石造りの城は重厚で、門兵たちは簡素ながら統一された装備で武装していた。


「よくぞ参られた。」

王は静かな声で迎えた。


 アレクは深く一礼し、島の魔力の仕組みやどのように二人が暮らしてきたかを丁寧に説明した。ステラも加わり、転生してきた経緯を淡々と述べる。


「なるほど……転生者ゆえにその島で生きてきたというわけか。」

王は思案するように顎に手を当てる。

「しかし、あの島は突如として現れたもの。我らが把握していた地図にも、かつて存在しなかった。」


「……え?」

アレクが驚いた声を漏らした。

「それはつまり、私たちが転移してくる前には島がなかったということですか?」

「そういうことになる。」

王は静かに頷いた。


「それは調査の必要がありますね。」

ステラが冷静に応じる。


「うむ。それと……短い会話であるが、君たちを信頼できると感じた。」

王は微笑む。

「我が国は君たちの島と友好関係を築きたい。」


 アレクは姿勢を正した。

「希望があります。我々は対等な関係を望みます。保護領扱いは受けられません。」


「賢明な主張だ。」

王は穏やかに答えた。

「確かにおぬしらのあの島はわしらの領地ではない。……さすがに対等な関係とまで言えるかは分からぬが、島を一つの独立した都市として認め、国交を結ぶというのはどうだ?」


 貴族たちがざわつく。

「国王、民すら持たぬ者たちにそこまで……」

「いや、この者たちには将来性がある。他国に奪われるくらいなら、むしろ交流を結ぶほうが良い。」


 ステラが一歩進み出た。

「交易や技術、文化の交流も行いたいと思っています。」

「もちろん可能だ。後ほど宰相ベリアルと詳しく詰めるとよい。」


 アレクとステラは顔を見合わせる。

ここまで要求が通るとは思っていなかった。


「……ステータスの影響、かも。」

アレクが小さく呟いた。


 その時、宰相ベリアルが進み出て巻物を差し出す。

「ガランとミランを含む護衛隊数百名を、正式に島の住民として移住させることを王が許可しています。」


「移住してくれるのか……?」

アレクが尋ねると、ガランが胸に手を当てた。


「我々はあなたたち、そしてあの島に未来を感じている。文明を築く手助けができるなら、これほどの名誉はない。」


「王国としては損害にはなりませんか?」

アレクが王に問う。


「大きな損失ではある。だが、将来お前たちの都市がこの国の重要な交流拠点となるのなら、それは十分に元が取れる投資となろう。」


 王は柔らかく微笑んだ。

「最後に……君たちの島を独立都市として登録するため、都市名を決めてほしい。」


 アレクはステラを見る。

ステラは小さく頷いた。


「都市名は、改めて提案させていただきます。」

「うむ。期待している。」


 こうしてアレクとステラは、島の独立とミドロア王国との対等な国交を正式に勝ち取った。

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