6(俺視点) 理解のできない
ちょっと短いです。
大変胸糞悪いというか、イライラする可能性の高い表現があります。
一部の職業を貶す思考が含まれていますがフィクションです。
阿呆のようなことばかりでかい声で喚き散らし、あからさまに彼女を攻撃していた聖女が言った一言に、皆の顔が強張った。
マクラ?
その場にいたものは皆聞き慣れない言葉に困惑し、その言い方やその後に続く体で稼ぐ、という言葉で意味を何となく理解してしまったからだ。
が、それもまたこんな場所で口にすることではない。
誰も口を開かず、重たい空気が流れる。
それを壊すのもまた聖女だった。
「あ、ごめーん。隠してた?思い出したのが嬉しくってぇバラしちゃったぁ~」
ぺろ、と舌を出す気持ちの悪い仕草をしてる。
「でもぉ、何も仕事ないならそれが良くない?リアさん綺麗だし~マクラってウリでしょ?なら慣れてるだろーし、いっぱいお金稼げるんじゃない?あ、でも~・・・それだけ胸盛ってるんだしもうしてるのかなぁ?相手は陛下とか!?ヤバくないそれ~」
「聖女様!」
思わず声をあげてしまった。
阿呆とはいえまさか伴侶である王妃殿下の目の前で、陛下と夜を共にしているなどと言うとは・・・
王妃殿下は虫でも見るような目で聖女を見ている。
勿論陛下ではなく聖女を。
「聖女様、説明が至らず申し訳ない。そのような仕事も先ほどと同じく、犯罪奴隷が行うことになっている。仕事として選ぶものもいなくはないが、本当に極少数で移民の方々が少し就くことが多いだろう。」
陛下が優しく説明をして差し上げるが、聖女の耳には届いてない。
「え〜?でもリアさんは経験者だから別によくない?それに移民みたいなもんじゃん?」
「聖女様、フローリア様はわたくしどもが行った召喚の儀に巻き込まれこちらに来てしまったのです。移民とは違いますわ。」
王妃殿下は彼女をとても評価し、どうしても仕事をしたければマナーの講師としてはどうかと陛下に進言なされていた。
陛下は俺と結婚し身分を安定させてからならば良いと答えていたので、陛下も彼女の学ぶ姿勢や吸収力、真剣に取り組み実践していることを評価していると思う。
だから笑いながらもどんどんと目が据わってきてるんだろう。
「え〜?リアさん自分から飛び込んできたし、巻き込まれた被害者でもないでしょ〜?」
「聖女様、それ以上は」
「でもぉ、仕事したいって言ったのリアさんでしょ?アヤカも毎日お祈りしてるよ?大人なんだから働くのトーゼンでしょ!なんでアヤカばっか責められるの?ひどーい!アヤカもお祈りするのやめたーい!」
お祈りは朝晩、確かになされている。
しかし、本来なら1時間ほどの工程を嫌がるために1分ほどしか行っていない。
1分目を閉じて、はいおわり。それ以上はぎゃぁぎゃぁ煩いので今のところは容赦されている。
それを、辞めたいと。
こちらが無理に来ていただいた手前強く出るつもりはなかったが、ここまで言われるとどうしたものか。
「ウリくらいしたらいいじゃん?これまでと一緒でしょ?ねぇ、リアさん?やるでしょ?つーかぁ足なくてメーワクかけてんだから股ぐらい開きな?バカモデルでもそれくらいできるっしょ?」
なぜそれを本人に言えるのか。
ウリという言葉もマクラという言葉もおそらくは娼婦のことをさすのだろう。
犯罪を犯したもののする仕事だと聞いてもなお、それを強いるのか。
なぜそこまで彼女を虐げるのか。
理由が全く思い当たらない。
「陛下、犯罪奴隷となるのは大罪を犯した者でしょうか?」
なぜかとても冷静な声で彼女はそう聞いた。
「…そうだな。その仕事をするのなら相当の罪を犯したものになる。」
「そうですか、では。」
パチン
乾いた音が庭園に響いた。
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