表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/75

第三章 4


 今日の夕飯は、厨房で見つけた魚のオイル漬と貝の缶詰、干した茸を塩で煮込んだものだ。

 いくつか出てきた芋から傷んでいないものを寄りだし、蒸かしたものを添えている。


「うーん、おいしい!」


 メイベルは綺麗にそれらを食べ上げ、残りをまた皿によそうと再び二階へと向かった。こんこんと扉をたたき、慣れた様子でユージーンの部屋に入る。


「ユージーン様?」

「……なんだよ」


 見れば昨日とあまり変わらない出で立ちのユージーンがいた。

 相変わらずこちらを振り返ることなく、机に向かっている。窓を開けてもいないのか、また少し室内が埃っぽくなった気がする。


「今日のご飯です。よかったら」

「いらない」


 その返事にメイベルはため息をつく。

 また外に置いておくか、と思いつつ、心配になってユージーンに声をかけた。


「あの、ずっと部屋にいると疲れませんか? 少し休んだ方が」

「……」

「せめて空気だけでも入れ替えたほうが」

「うるさい」


 やはり取り付く島もない。

 メイベルは眉を寄せていたが、仕方ないと部屋を出た。昨日と同様廊下に夕飯を置いておく。



(本当に大丈夫かしら……)


 ここに来てまだ二日だが、日中ユージーンの姿を見ることはない。メイベルが掃除で走り回っているせいもあるかもしれないが、おそらく彼は一日中この自室に籠っているのだろう。

 確かにクレアやファージーも、発表会前などは練習のため部屋に籠ったりする。だが食事はきちんととるし、部屋だって非常に綺麗なものだ。


 魔術師だから普通の人と同じに考えてはいけないのかもしれないが、だからと言ってあの環境が体にいいとはとても思えない。


「でも私が言うことでもないわよね……」


 そもそも自分が何かを言ったところで聞き届ける相手ではない。

 メイベルはそう思いなおすと、再び厨房の片づけをしに一階へと戻った。



 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
\書籍版発売中です!/
5ffsfdnr7ln8bxe2jf0h2ylmf4on_1a3p_9s_dw_1ksp.jpg

\コミックス1-3巻発売中です!/
jgpa80sn3g541bpya5oe8cp7h7kw_eas_9s_dw_5luw.png

9dj9t6m6i3vcri53ivr8mwhpdp_19yf_9r_dw_1jht.jpg

7ltbm97ad9hd86cs3m79liji2ged_y0f_9s_dw_1d68.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ