99話 六つ目の神器
特殊な装置を頭に着け、メイド服のような制服を思わせる服に身を包んだ銀髪の少女。
その少女はシン達に向けて軽く会釈すると、ジッとシンのことを見つめていた。
「……ああ……シエスタ」
「はい」
シンが恐る恐る声をかける。
「えっと…シエスタはどうしてここに?」
「私はこの神器、空中移動要塞ルネイリアを管理しているロボットです」
「ロボット?!人じゃないのか?!」
シンを始め、レンもサレサも驚く。
「はい。私はこのダンジョン兼神器を攻略したものに付き従うよう設定された自立型ロボットです」
「……人間と変わらないじゃないか…」
シンはシエスタをよく見るが、普通の人間と見分けはつかなかった。
「いきなりですが、私の主人としてあなた方三名を登録します。お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「ああ、俺はシンだ」
「私はレンよ」
「私はサレサ!」
「かしこまりました。では、シン様、レン様、サレサ様ですね」
「様って…」
「…?何か問題でも?」
「いや、なんか堅苦しい感じがして」
「そうですか?では、シンさん…シン殿…?」
シエスタはブツブツと独り言を言って考え込む。
と、何か思い付いたのかシエスタはシンの方を向き首を傾けると、
「シン…お兄ちゃん…?」
「っ…!?」
シンはいきなりのことにドキッとする。
「ちょっと!シンお兄ちゃんは私が先だよ!?」
サレサが大きな声で抗議する。
「いや、そこじゃなくて…」
「そうですか…では、やはり、シンさんが無難でしょうか…」
「はぁ…呼び捨てでいいよ。シンで」
「ですが…」
「私もそれでいいよ。サレサもいいよね?」
「ん?いいよ」
「…かしこまりました。では、シン、レン、サレサとお呼びします」
「なんか言葉使いと合ってない気がするけど、まあ、いいか」
と、シンがそう言うと、ふとレンが目に入った。
すると、レンは目を細めてシンを睨むように見つめてきた。
(なんか、レンのやつ怒ってないか?)
そこでシンは声を掛けようとすると、レンはプイッとそっぽを向いてしまった。
「では、早速ですが、ここの神器について説明します。神器、空中移動要塞ルネイリアは名前の通り、空中を移動できる要塞です」
「土台となる大地の上にはいくつか建物が存在し、現在、シン達がいるこの城もその内の一つです」
「全部で幾つあるんだ?」
「建物は全部で三つ。一つ目はここの要となる居城。生活はもちろん、ここの管理なんかもここから行います」
「二つ目は食料や武器なんかをしまっておける倉庫。基本的に居城で十分なことがほとんどですが、大きいものをしまう時には重宝するでしょう」
「三つ目は転移の塔。ここで地上へワープできます。もちろん、行き来が可能です」
「ワープができるの?」
興味を持ったレンがシエスタに聞く。
「はい。遮蔽物がある場合はできませんが、何もない街の道や草原なんかはなんの問題もなくワープできます」
「へえ」
レンが関心した声を漏らす。
「ワープってここに来た時みたいなやつ?」
「はい。その認識で構いません」
「つまり、ビューンって移動できるんだ」
「ビューン?」
サレサの言葉にシエスタが首を傾けた。
「まあ、大体は分かった。となると、王都リネオスまでどれぐらい掛かる?」
「王都リネオスまでは半日程で着きます。向かいますか?」
「因みに、トレミアムまでは?」
「シン!」
「シンお兄ちゃん?!」
「分かってる」
シンは二人を宥めるように言う。
「トレミアムまでは数時間でしょうか」
「数時間か…」
「その体でトレミアムは無茶だよ」
下を向き、考えるような素振りを見せるシンにレンが強く言う。
「…………レンはサントリアのウォーマットを覚えてるか?」
「ウォーマットさん…?あの物知りのお爺さん?」
「ああ」
「覚えてるけど、それがどうかしたの?」
「多分、あの時、兄さんの…ニールのことを聞いたらどこにいるか分かったと思うんだ」
「……」
レンを始め、サレサもシエスタも何も言わずシンの言葉を待つ。
「だけど、俺はそうしなかった。まだ、迷ってたんだ。俺はどうするべきかって」
シンは拳を握り締める。
「でも、リネオスでニールのことを聞いて決めたんだ。俺がニールを止めないとって。だから、だから…」
「そっか…」
そう言うと、レンはシンへ近付いた。
そして、レンは優しくシンの手を握る。
「シンがどんなことを思って、どうしたいのかはよく分かったよ。でも、私はシンが大事なの。それなのに、シンは自分のことなんか気にせずになんとかしようと自分を酷使してる」
「あんまりこういうことは言いたくないけど、もし、レイナの時に私が無理をしようとしたら、シンは私を止めようとしてくれたんじゃない?」
「……」
「もし、ほんの少しでもそう思ったんだったら、私の気持ちも分かって…」
レンの言葉を聞いたシンは握っていた拳から力を抜いた。
「分かったよ。一度、リネオスに戻って体を休めよう。それからのことはまたその時に考えよう」
「…?!シン…」
レンは嬉しそうな表情を浮かべる。
「リネオスへ出発するということでいいですか?」
「ああ。頼む」
「かしこまりました。では、王都リネオスへ向けて出発します。それと同時にこの城を改造します」
「改造?」
「ダンジョンとした造りから住むための造りへ内装を改造します」
「そんなことできるのか?」
「はい。ですが、この部屋から出られませんので注意してください」
「……分かった」
こうしてシエスタの操縦の下、三人はリネオスへ戻るのだった。
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週1〜3話投稿予定。




