95話 速い魔物
(こいつ、いつの間に…!?)
シンは振り向くまで気が付かなかったことに驚いていた。
目の前にいた魔物は無音で自分の後ろにいた。
そして、何もせずにじっと黙っているだけ。
それはとても不気味だった。
「クア!」
サレサがシンの後ろに魔物が移動していることに気が付くと体に電気を溜め、魔物へ放った。
が、魔物はまたその場から忽然と姿を消した。
「シン、大丈夫!?」
「ああ」
そのことに気が付いたレンがシンの心配をする。
「あの魔物、一体何がしたいんだ…」
シンはいつでも攻撃できたのにも関わらず攻撃してこなかったことを不思議に思いながらも周りを見渡す。
が、魔物の姿は視認できない。
「あんなに速いんだったら見てから行動するのは厳しいかも」
「ああ。ある程度予想した上で攻撃しないとな」
「うん」
二人がそんな会話をしているとシンの横を風が通り過ぎた。
「っ…?!なんだ?!」
シンは室内なのに風が自分を撫でたことに不思議に思っていると自分の肩と頬に切り傷ができていることに気が付いた。
と、それも束の間、今度はレンの両足に切り傷ができた。
「これは…」
レンが自分の足に傷ができたことに驚いていると二人の背後に魔物がいつの間にか現れていた。
「クア!」
そのことに気付いたサレサが電撃で魔物を再度攻撃する。
が、魔物は最も簡単に三人の目の前から姿を消した。
「速すぎる…」
(目も無いのにどうやって俺達の位置を的確に把握してるんだ…?いや、待てよ。もしかしたら…)
「二人とも、俺に少し考えがある」
「クア?」
「考え?」
「ああ」
シンはニヤリと笑い、大きく息を吸い込んだ。
そして、次の瞬間、
「うわあああああ!!!」
シンはいきなり大声を出した。
「うわあ?!」
「クア?!」
いきなりのことに驚く二人。
そんな二人を他所にシンはサニアとイニルを取り出す。
「ここだ!!!」
シンはクルリと半回転し、後ろを向くと同時にサニアとイニルを振り下ろした。
すると、何もなかった筈の場所に魔物が現れ、その爪でサニアとイニルの攻撃を防いでいた。
が、その時、サニアの能力が発動して斬撃が発動した。
最初は受け止めていたように見えた右の爪が斬られて地面へ落ちた。
「やっぱりな」
「「!?」」
二人が驚きの表情を浮かべていると魔物はまた姿を消した。
「シン、どういうこと?」
「あの魔物は音に反応するんだ。あの大きな耳は音をより正確に聞く為だ。試してみたけど思った通りだった」
「試してって…シン、あなたの今の体はとても戦っていい状態じゃないのよ?」
レンの少し怒りの籠った言葉。
それを感じ取ったシンは少し焦ると、
「いや…それはそうだけど…ほら、このままだといつやられてもおかしくなかっただろ?」
「それは…そうだけど」
レンは困った顔を浮かべる。
(そう言われたら強く言えないじゃない…)
「それに、もう一つ考えがあるんだ」
「?」
「あの魔物の特性が分かった今だからできる作戦だ」
「それは?」
「この作戦はサレサに協力してもらう」
「クア?」
シンの言葉にサレサは首を傾けながら不思議そうにしていた。
「と、いう感じだ」
「そんな簡単に上手くいけばいいけど…」
「でも、なんとかなりそうだろ?」
「うん…」
「クア!」
シンの作戦を聞いたレンは心配そうにしながら首を縦に振る。
そんなレンとは違い、サレサはやる気に満ちていた。
「じゃあ、作戦開始だ。いくぞ」
「うん」
「クア!」
シンの掛け声を合図に各々が準備をした。
レンはリナザクラを構え、シンの背中に構えた。
サレサは体に電気を溜めて青白い光を放つ。
と、次の瞬間、シンは大きく息を吸い、
「俺はここだ!!!来い!!!」
この部屋一杯に広がるように叫んだ。
と、その瞬間、シンの背中にいたレンの前に赤い魔物が姿を現した。
そして、先程と同様、爪を振り下ろした。
が、それを見越していたレンはその攻撃をリナザクラの扇面で受け止めた。
すると、扇面は白く光り、攻撃をした魔物を壁まで吹き飛ばした。
「上手くいったか」
「サレサ!お願い!」
「クア!!!」
レンの掛け声を合図にサレサは体に溜めていた膨大な電気を魔物に向かって放った。
青白い電気は一直線に向かっていくと魔物に直撃した。
魔物は体を痙攣させながら体から黒い煙を出す。
が、少しすると魔物はその場に横になり動きを完全に止めた。
「ふう…なんとかなったな」
「うん」
二人がそんな会話をするとサレサはネックレスの能力を使って人の姿になった。
「いきなり大声を出した時は驚いちゃったよ」
「悪かったな。驚かせて」
「ううん。それよりなんか食べ物食べたい」
「サレサは本当によく食べるね」
「えへへ」
それから三人は少し休憩をした。
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週1〜3話投稿予定。




