79話 サレサの力
魔物は二人を睨みつけていると、また羽を大きく広げた。そして、次の瞬間、大きな羽を羽ばたかせ、それによって突風が起きた。二人は体が飛ばされそうなぐらい強い突風にその場で耐えていた。
「この風、早くどうにかしないと、」
その時だった。レンが魔物の突風に耐えながらこの状況の打開策を考えていると、何かがレンの方に飛んできて、リナザクラを構えているレンの近くを結構な速さで通り過ぎ、レンの頰に切り傷をつけた。
「痛っ、今何かが飛んできて……」
レンは自分の頰を触り、血が出ているのを確認すると、飛んできた何かが通り過ぎた方に目をやった。すると、そこには緑色をした十五センチくらいの魔物の羽根が地面に刺さっていた。
「これは羽根?あの魔物、自分の羽を突風と一緒に飛ばしてきているの?!」
レンは羽根を拾い上げて、羽を閉じてこちらの方をジッと見ている魔物の方を見た。触っている羽根は普通の鳥の羽根の硬さとは比べ物にならないぐらい硬く、体に当たったら間違いなく擦り傷では済まされないというのが容易に分かった。
「サレサ、気をつけて。この魔物、風と一緒に羽根を飛ばしてくるみたい!」
「クア!」
レンがサレサに今分かった事を伝えると、サレサは頷いて返事をした。その時、サレサの方に魔物の羽根が突風に乗って勢い良く飛んできた。
「クア!!」
サレサは魔物が羽根を突風と一緒に飛ばしてくるのを見ると、体から大量の電気を魔物のいる方に満遍なく広がるようにして放電した。すると、サレサの放電した電気に魔物の羽根が当たり、次々に地面へ落ちていった。そして、サレサの放電した電気はそのまま魔物にまで届いた。
「キイイイ!!」
サレサの電気が魔物に当たると、魔物は悲鳴にも似た声で鳴いた。サレサの電気に当たった魔物の全身は青白い電気を帯びていて、今も魔物の体からビリビリと漏れだすように電気が出ており、魔物を痺れてさせていた。
「流石ね……」
「クア!」
レンが魔物の今の状態を見て、サレサの強さを改めて感じていると、本人はしてやったぜ顔をしていた。二人がそんな事を話していると、魔物はなんとかしようと体を動かそうとしていた。だが、サレサの電気が余程強かったのか、思うように動けないようで生まれたての子鹿のようだった。
「今のうちにあの魔物を倒さないと。」
レンが動けない魔物の様子を見てそう言うと、魔物が今度は何も動かず、その場にジッとしていた。すると、魔物の二本のアホ毛が黄色く光り始めた。
「まだ何かするつもりなの?!」
「クア?!」
二人が魔物の行動に驚いていると、魔物の体から漏れ出していたサレサの電気が見る見るうちに無くなっていった。そして、それとは対照的に魔物の二本のアホ毛はどんどんその黄色い光を増していった。二人はそんな魔物の行動を警戒しながら見ていると、遂に、魔物体に帯びていたサレサの電気が完全に無くなった。
「キイイイイイ!!!」
魔物は体の痺れが無くなったからか、二人の方を向いて威嚇をした。
「この魔物は自分以外の電気を吸収して、自分の電気に変換できるの?!」
「クア〜」
二人は魔物の様子を見て驚いていた。そんな二人に今度は魔物が二本のアホ毛を黄色に光らせて攻撃を仕掛けていた。魔物の放った電気は最初に放った時の電気の大きさとは比べものにならないぐらい大きく、電気の威力がサレサの電気を自分の電気に変換した事によってその強さを増していた。
「クア〜!!」
魔物の電気の威力を見たサレサはそれに対抗するべく、体に電気を帯び、次の瞬間、魔物に向かって放電した。すると、お互いが放った電気が丁度、お互いの中間の位置で打つかった。その衝撃は凄まじく、お互いの電気が打つかった位置から全方向へ跳ね返るように電気が外れた。周りはその電気によって当たった部分が削れていて、粉々になっていた。
「キイイイ!」
「クア!!!」
サレサと魔物が啀み合っていた。レンはそんな両者の様子を見て息を呑んだ。
そして、次の瞬間、魔物は羽を大きく広げて羽ばたき始めた。それを見たサレサも魔物に対抗するように体に電気を帯び始めた。すると、魔物は足で地面を蹴り、羽ばたいてこの場所の天井ぎりぎりまで飛び上がった。サレサはその間、体に電気を帯びさせていて、電気の大きさがどんどん増していき、大きな岩ぐらいまで広がっていた。
「クア!クアクア!」
すると、サレサがレンの方を見て、向こう側の遠い方に行けと言うかのように首を振ってきた。
「危ないから向こうに行けって事?」
「クア!」
「……分かった。気をつけて!」
「クア!」
レンの言ったことにサレサは頷いた。レンは心配だったが、サレサの瞳からは何かを決めたような気概が感じられたので、反対する事なくサレサを信じる事にした。
そして、レンがその場から離れると、魔物が羽を羽ばたくのを止めて羽を閉じ、サレサ目掛けて勢い良く飛び掛った。サレサはというと、体に電気を帯び、さっきよりも更に大きな電気を纏っていた。
次の瞬間、サレサ目掛けて勢い良く飛び掛ってくる魔物が体勢を変えて、足の爪をサレサに向けて飛び掛ってきた。すると、サレサは今まで体に溜めていた電気をその魔物に向かって放電した。サレサの放った電気は魔物の大きさを優に超えていて、魔物を電気の中で跡形も無く消し去った。だが、サレサの放った電気は勢いそのままこの場所の天井に当たり、ドーンという大きな音と共に地面を揺らした。
「うわぁ?!」
レンはその衝撃から立つ事が出来ず、その場に尻餅をついた。すると、サレサの首から下げていた魔具が紫色に光だして人間の姿になった。
「レンお姉ちゃん!大丈夫!?」
サレサは尻餅をついたレンのところまで走ってくると、レンの心配をした。
「うん。大丈夫。それにしても、サレサも大丈夫だったの?」
「うん。でも、一杯力使ったからお腹減っちゃった。ご飯頂戴!」
「それは良いけど、まずこの場所から離れよう?」
「う〜ん……分かった、我慢する!」
レンの言った事にサレサは渋々と言った感じで納得した。
(あれだけ大きな衝撃があったのに天井には何も傷がついてないなんて……。それに、サレサって一体魔物の中でどれぐらい強い魔物なんだろう?)
「それじゃあ、行こっか。」
「うん」
二人はそれからこの場所に入ってきたところから反対側にある入り口まで歩いた。塞いでいた石はさっきの戦闘で粉々になったようで先に進む事が出来た。
次回、蠍の魔物
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