74話 フィニットブックの使い方
オルターベルンを出発してから五日が経ち、後二日程でドーラに着くという頃。三人は夜になり、馬車を走らせる事が出来ない為、焚き火をしてご飯を食べていた。
「サレサは相変わらず食べるな……」
「私は直ぐにお腹が空いちゃうんだよね。」
サレサの食いっぷりにシンが呆れた顔をしていると、サレサは笑顔でご飯を食べていた。
「元気が無いよりは良いんじゃない?」
「まあ、そうなんだけどな。」
「美味しかった〜」
レンの言ったことにシンが渋い顔をしていると、サレサが満足そうな笑顔を浮かべてご飯を食べ終えた。それから二人もご飯を食べ終わると、レンがとある事を思い出した。
「そういえば、ドーラに着く前に試しておきたい事があったんだった。」
「ん?なんだ?」
レンが何かを思い出したように言ったのでシンが気になり聞くと、レンは馬車に行き、右手にフィニットブックを持って戻ってきた。
「この神器の使い方を知っておきたくて。」
「ああ〜、そういえば、どんな能力なのか知らないな。」
「なになに?何かするの?」
神器を持ってくると、サレサが二人の近くに寄ってきて興味を示していた。
「今からこの神器の使い方を色々と試そうかなと思って。」
「へぇ〜」
「そもそも本だから、攻撃をするとかいう神器では無いと思うんだけど……」
そう言って、レンは右手に持っていたフィニットブックを地面に置いて本をを開いた。そこには、勿論何も書かれていなく、真っ白なページだった。
「何か試しに書いてみたらどうだ?」
「確かに、それ良いかも。」
シンの提案に賛同して、レンはシンの持っていたリュックから万年筆の様なペンを取り出した。
「これで何か分かれば良いんだけど……」
そう言いながら、レンは元いた位置に戻ると、何も書かれていないページにペンで書き込もうとした。そして、レンの持っていたペンの先がページに触れた瞬間、レンはとある違和感に気づいた。その違和感とは、自分の持っているペンがそのページに吸い込まれるような感覚だった。すると、レンの持っていたペンが実際にページの中にどんどん吸い込まれていった。
「何これ?!」
レンは身の危険を感じてペンを手から離すと、見る見るうちにペンがそのページに吸い込まれていき、ペンを全て呑み込んだ。
「どうなってるんだ?!」
驚いたシンが見ていたのは、何も書かれていなかったページに吸い込まれたペンが描かれていて、その周りに文字が浮かび上がっていた。その浮かび上がってきた文字には、吸い込まれた物の名前と説明が書かれていた。
「これがこの神器の能力なのか?」
「なんだか不気味な能力なんですけど……」
レンはこの神器の能力を見て不気味がっていた。
「まあ、でも、これがあればもしかしたら、荷物を持ち運ばなくても良いかもしれないぞ?」
「確かにそうかもしれないけど……なんか可愛くない……」
シンが不気味がっていたレンを見てなんとかこの神器の使い方を言ってみたが、レンはどうやら余り嬉しくなかったらしく、微妙そうな顔をしていた。
「というか、これどうやって取り出すの?」
「さあ?」
レンの質問にシンは首を傾げて答えた。
「触ったら私まで吸い込まれるかもしれないって事でしょ……?」
「まあ、可能性は無いとは言えないけど、持ち主まで吸い込みはしないんじゃ無いか?」
「でも、もし吸い込まれたら?」
「それは……なんとかする……」
「どうやって?」
「……どうにかして…」
余程触るのが嫌なのか、レンはシンの言った事に反論していた。安心だという確信がない以上、シンも大丈夫とは言えないので困っていた。
「とりあえず、振ったりしてみたらどうだ?」
「そうね……」
シンの提案に乗ったレンがフィニットブックを持って、振ったり、逆さにしたりしたが、吸い込まれたペンは戻ってこなかった。
「どうしよう……触るしかないの…」
「多分……」
明らかに嫌そうに言うレンを見て、シンは困った顔をしていた。
「じゃあ、私が触ってみるよ。」
そう言うと、サレサが勢いよく、ペンが吸い込まれたページを触ろうと近づいた。
「サレサ!危ないから!」
「おい!」
二人は止めようとしたが、サレサの手は既に本のページに触れていた。すると、サレサは触れていた手から徐々にフィニットブックの中に吸い込まれた。
「ええ〜?!助けて〜!」
サレサは吸い込まれながら叫んで、手をブンブンと振り回して何とかしようと試みてはいたが、その結果は虚しくフィニットブックの中に全身吸い込まれた。
「おい?!どうすんだよ?!」
「どうするも、何も、こうなったら私が何とかするしかないでしょ?!」
目の前でサレサが吸い込まれてパニックになっている二人だったが、レンは落ち着いてフィニットブックを拾った。すると、そこには、困った顔をしたサレサが描かれていて、そのすぐ近くに名前や体重などが書かれていた。
「でも、どうすれば良いんだろう……」
「どうなってるんだ?」
レンがサレサの描かれているページを見て悩んでいると、シンは何が書かれているのか、中が気になって見ようとした。
「ダメ!」
「え?何で?」
シンが本の中を見ようとすると、レンが物凄い勢いでシンの見えないところまでフィニットブックを離した。そんなレンの様子を見たシンは驚いた顔をして言った。
「乙女の秘密。」
「何だそりゃ?」
シンはレンの言葉を聞いて、困惑していた。
「とにかく、一回触れてみるから、何かあったらお願いね?」
「お、おう。」
覚悟を決めたレンを見て、シンも覚悟を決めた。すると、レンはサレサの描かれているページを触った。すると、次の瞬間、辺りを覆う程の白い煙がそのページから発生した。
「ケホホ……ッ」
「ゲホ……ッ、どうなったんだ?」
「こわか”った”よ”ぉ〜〜!!!」
二人は突然の煙に何が起こったのか分からず困惑していたが、そこには大声で泣きながらレンに抱きついてくるサレサの姿があった。
「サレサ!良かった〜、本当に心配したんだから。」
「ごめんなさい!」
心配しているレンにサレサが泣きながら謝っていた。それから、少しして落ち着くと、ペンにもサレサの時と同じ様にレンが手を触れた。すると、サレサの時と同じ様に小さな煙を出して、取り出す事が出来た。
「これがこの神器の能力で間違い無いみたいだな。」
「うん。これがあれば移動の時が結構、便利かも。」
「取り扱いは注意しないといけないな。」
「うん。」
こうして、ちょっとした事件があってフィニットブックの使い方が分かった。因みに、この後、サレサはレンにこっ酷く怒られ、目に涙を浮かべながら反省し、もう今回の様な事はしない事を心に誓った。
次回、ドーラ到着
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