65話 ゴリラの魔物
二人は二匹のゴリラの魔物の後を追って道を進んでいた。すると、道の先に明るい光りが見える所まで来た。
「随分明るいね?」
「ああ、そうだな。」
二人はダンジョンの中なのにも関わらず、まるで外の様に明るい光りを見て不思議に思っていた。そして、二人がその外の様に明るいところに行くと、そこには緑色の木が生えて森の様になり、上を見上げると青い空に、白に光り輝く球体があった。
「ここは一体……」
「ダンジョンの中なのにこんなに木があるなんて……」
二人はダンジョンの中なのにも関わらず、まるで外の様なこの空間に驚いていた。
「ウホ」
二人が現実とは思えないこの空間に驚いていると、木の上から一匹、ゴリラの魔物が二人の事を見ていた。
「お前!」
「ウホ!」
シンが魔物に気づいて声を揚げると、それに反応する様にして逃げ出した。
「逃すか!」
シンはそう言うと、懐からサニアを取り出して魔物に向かって振り下ろした。すると、サニアの斬撃は魔物のいる方に向かっていき、剣筋にあった木が次々と切れていった。だが、サニアの斬撃は魔物には当たらなかったらしく、魔物は木から木へと飛び移りながらどんどん森の奥へと離れて行った。
「クソッ、体が大きい割にすばしっこい動きをするな……」
シンは身軽そうに離れていく魔物を見て苦い顔をしていた。
「まあまあ、後を追おう。」
「ああ。」
二人は魔物が逃げて行った方に向かって走って追い掛けた。
「にしても、このダンジョンは不思議な事が色々と多いな。この空間もそうだけど、魔物もあのゴリラみたいなよくわからん奴もいれるし。それに、結局まだその魔物が何なのか、いまいちよく分からないし。」
「このダンジョンの事はともかく、この子は大丈夫よ。」
「クア、クア。」
シンの言った事にレンが不服に思ったのか、不機嫌そうな顔をして言った。そして、レンの方に乗りながら魔物も首を縦に振り、そうだそうだ言わんばかりに主張していた。
「……そうだといんだけどな。」
シンはレンと魔物の様子を見て目を細めながら言った。すると、前を走っていたシンの足が、蔓に引っかかってバランスを崩しそうになっていた。
「おっと、」
シンが必死にバランスを戻そうとした時、シンの頭上から蔦で出来た網の様な物が落ちてきて、シンを捉える様な形に覆い被さった。
「何だこれ!?」
シンは突然、降ってきた謎の蔦の網を手で払いながら言った。
「ウホ」
「ウホホ」
すると、木の上で二匹のゴリラの魔物がシンの事を見て拍手をしていた。
「また、あいつらか……」
シンは魔物の声を聞いて呆れていると、魔物はその様子を見て余程嬉しかったのか、一匹は片手で逆立ちをして、もう一匹は前屈みになり、筋肉を見せる様にして決めポーズをしていた。
「あれは一体、何なんだろう……」
「クア……」
魔物の奇怪な行動を見たレンとイタチの魔物が呆れた顔をして見ていた。
「はあ〜、やっと全部取り終わった……」
魔物が決めポーズをしている間に、シンが自分に覆い被さった蔦の網を全部払い、疲れた様子で出てきた。
「ウホ」
「ウホホ」
すると、シンの様子を見たゴリラの魔物が奇怪な決めポーズを止めて、木の下に飛び降りた。ドスンという重そうな音と共に魔物が飛び降りたところの地面が少し割れ、その重さを表しているかの様だった。
「やるって事か……」
「クア。」
シンは今まで逃げていた魔物が逃げずに木から下りてきたので、懐からサニアとイニルを取り出した。レンも魔物を警戒して、肩から背中に下げていたリナザクラを取り出して構え、イタチの魔物はレンの肩から下りて、姿勢を低くして警戒している様だった。
「ウホッウホッウホッウホッ」
「ウホッウホッウホッウホッ」
すると、シン達の様子を見た魔物が手を胸に当ててドラミングをした。ドラミングは魔物の大きさもあり、叩く度に空気が振動する程の威力だった。
「ウホ」
ドラミングを終えると、魔物はお互いの手を持って、片方がその場で回り始めた。もう片方はただただ掴まっているだけで、回しているものが魔物というところを除けば砲丸投げの様にも見えた。
「何をするつもりなんだ?」
シンが魔物の様子を見て不思議に思っていると、回していた方の魔物が手を離して、回されている方の魔物が二人に向かって飛んできた。
「ウホ」
遠心力が働いて物凄い速さで二人に近づいてきた。レンはそれを見てリナザクラを広げ、返り討ちにしようと思い、リナザクラを飛んでくる魔物に向かって構える。飛んでくる魔物はそのままの勢いでレンの構えているリナザクラまで一直線に近づいていた。
そして、飛んでくる魔物とレンが構えているリナザクラの距離が近づき、今まさに当たるといった瞬間だった。飛んできた魔物がリナザクラの親骨と中骨の部分だけを器用に蹴った。すると、リナザクラは扇面で攻撃を受けていない為か、今までよりも弱い光を放ち、魔物を後方に少しだけ飛ばした。
「そんな!?」
レンは魔物の攻撃の受け流し方に驚いていると、吹き飛ばされた魔物は体を丸くして転がり、体勢を取り直した。
「ウホ!」
「ウホ」
すると、魔物同士が顔を合わせて何か話している様だった。
「シン、この魔物達は運動神経がとても良いのかもしれない。」
「ああ、見ていて俺もそう思った。こいつら今までの魔物とは少し違うな。見た目の割に頭もキレるみたいだ」
「うん。」
二人は二匹の魔物との戦闘の中で今までの魔物とは少し違うという事を感じていた。
次回、魔物のプライド
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