58話 ニールの行き先
次の日の朝。二人が目を覚まして着替えを済ませると、ドアがノックされた。すると、ドアを開けたのは昨日、夕食の時に呼びに来たメイドだった。
「シン様、レン様、朝食の準備が整いました。」
「分かった。」
二人は昨日と同様、メイドの後を付いて行き、食事の用意されている部屋に入った。中に入ると、王様達が席についており、テーブルにはパンやスクランブルエッグ、スープなどがあり、如何にも朝食といった料理が並んでいた。
「おはようございます。シン様、それにレンちゃんも。」
「はい、おはようございます。」
王妃が微笑みながら言ってきたので、レンも微笑んで返した。シンはそんな二人の会話を聞いて驚いていた。
「何だ?二人とも、それ程仲が良くなったのか?」
「私もレンとは益々仲良しになったんですよ?」
王様が王妃とレンを見て聞くと、ライラが楽しそうに言った。
「ライラはともかく、母上まで仲良くなるとは思いませんでした。」
席に座っていたエルフィンが会話を聞いて意外といった顔をして言った。
「昨日、偶々レンちゃんと話す機会があったんです。」
「そうでしたか。」
「仲が良いというのは良い事だ。さあ、まずは座りたまえ。」
「はい。」
二人は王様に言われるまま席に座った。それから、みんなで朝食を摂った。朝食を終えると、メイドが全員分、用意されたカップに紅茶を入れてそれぞれに配った。
「エルフィンよ、あれから何か新たに分かった事はあったか?」
「調べたところ、どうやらニールと思われる男は一度このリネオスに来ているようです。」
「……ッ!?兄さんが?」
エルフィンの話を聞いたシンが紅茶を飲もうとカップを持っていた手をピタリと止めて深刻そうな顔をして言った。
「ああ、それも兵士を殺してから歩いて真っ直ぐ来た時と時期がピッタリ一致する。多分、兵士を殺した後、歩いてそのままここまで来たんだろう。普通の人間なら隠れたりするものだが、堂々と殺した兵士の国まで歩きて来るとは正気の沙汰とは思えない。」
「……」
エルフィンの話を聞いたシンは何か言うという事も無く、深刻そうな顔をして沈黙を続けた。
「して、その後はどうした?」
「この国で男が来てから特に目立った事件なども無く、一日程滞在した後に南の関所から出たという事までは分かったのですが、その後は不明です。」
「うむ、南の関所からか……もしかしたら、南に何か用があるのかもしれんな。」
「はい。ですが、情報が少な過ぎて何とも……」
ニールの行方が分からず、エルフィンと王様が難しい顔をしていた。
「南には何があったか……誰かこの辺り一帯の地図を。」
「かしこまりました。」
王様がそう言うと、この部屋の入り口の近くにいた兵士が一人、返事をして出て行った。
「お持ち致しました。」
暫くすると、出て行った兵士が手頃サイズの地図を持ってきた。
「ご苦労。」
「は!」
そう言うと、兵士は元居た持ち場に戻った。すると、王様は渡された地図をテーブルに置いて眺めていた。
「リネオスから南なら一番寄りやすいのはオルターベルンか……確かこの町の近くにはダンジョンもあると聞く。何かと都合が良さそうだがどうしたものか……」
「……俺が兄を探します。その為に旅を始めたし……これ以上、罪を重ねない為にも……」
「シン……」
王様の話を聞いていたシンが辛そうな顔をしながら言った。それを見ていたレンは心配そうな顔をしていた。
「うむ。出来るだけの事は尽くそう。」
「ありがとうございます。」
シンが王様に自分の意思を伝えると、その覚悟が伝わったのか頷いた。そして、了承してくれた王様にシンは頭を下げた。
「なに、構わん。それにしても、ニールがどこに行ったか分からない以上、一度ここら一帯を調べてみた方が良さそうだ。明日には各地に兵士を出し、情報を集める。皆にそのつもりで準備をしておけと伝えよ。」
「は!」
そう言うと、王様の伝言を伝える為、兵士が一人出て行った。
「シンよ、そなたには先ほどにも言ったオルターベルンに行ってもらいたい。何か手掛かりがある可能性の高い町だ。ただ、その分危険が伴うだろう。兵士は同行させるつもりだか、町に着けば情報収集のため兵士達は町で聞き込みをさせるつもりだ。それでも良いかな?」
「はい。」
「うむ、では、明日に備えて今日は準備をしておくと良い。」
こうして二人は明日の出発に備えて部屋に戻り、軽く準備を済ませてベッドに座って休憩をしていた。
「レンはどうする?正直、今回の件は俺の家族が問題だ。レンは俺と一緒について来なくても……」
「そうはいかないわよ。私たちをサントリアまで送ってくれた兵士が殺された訳だし。」
シンが切ない顔で言うと、レンがシンの言葉を遮るようにして言った。
「それに、私もシンには色々迷惑を掛けちゃったし。」
「そんな事は無い。俺にはレンと一緒に旅をする事しか出来なかっただけだ。」
レンの言葉にシンは思いつめた顔をして元気がなく言った。
「シン……」
レンは明らかに元気のないシンを見て心配そうな顔をした。すると、レンはベットから立ち上がり、シンの隣に座った。そして、次の瞬間、レンはシンを背中から抱きしめた。
「……ッ!?」
シンは急に抱きついてきたレンに驚いていた。
「……私ね、レイナの病を治そうと旅をしていた時、レイナはもう死んじゃってるかもしれない。不治の病を治す手段なんてないんじゃないかって、凄く悲しくて……凄く不安で……当てが何かある訳でもないのに旅を続けてて……凄く心配だったの。……でも、そんな時、シンに出遭って……それから暫く一緒に旅を続けて凄く嬉しくて、楽しかったの。私がエルナまで行く事を決めてから不安な顔をしていると、シンは優しく声を掛けてくれた。私が辛くて泣き出しそうな時もシンは私の側に居てくれた。それは私にとってこれ以上無いぐらい頼りになったし、安心したの。……だから、私もシンが辛い時は一緒に居させて?少しでもシンの力になりたいの!」
「……ああ、もう充分、力になってるよ。」
レンの真剣な話と思いに触れたシンが少し晴れた顔をしてレンの頭を撫でた。
次回、オルターベルンに向けて
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