48話 誘拐事件
二人はウォーマットの本屋を後にして、自分達の宿に向かっていた。この頃には夕陽が出ていて辺りは赤く染まっていた。
「それにしても、何であんなに分かるんだろう」
「さあな。なんか未来でも見えてるんじゃないのか?」
レンがウォーマットの事を不思議に思って考えていると、シンは呆れた感じの口調でふざけて言った。
「もう〜人が真剣に考えてるのに。」
「でも、仕方がないだろ?あんな人見た事無いぞ?」
「そうだけどさ……」
シンががふざけた感じに言っていると、レンが不服そうな顔をしてシンに突っかかってきた。
「とりあえず、グラートがエスタルトっていう村にいるのが分かっただけでも良かったな」
「まあ、確かにね。」
シンはウォーマットの話を終わらせようと、話題をグラートに変えると、レンは不貞腐れながら不満そうな顔をして言った。
そんな会話をしていると、二人の前に子供達が五人で追いかけっこをして走ってきていた。四人が逃げて、一人がその後を追いかけていた。背丈から恐らく、六、七歳ぐらいだろうと予想がついた。子供が消えているという事件が起きているのに危ないなと考えていると、子供達が四人、二人の横を走って行った。それから直ぐに、後ろから追っていた鬼役の一人が二人の横を走り去った。だが、それを見ていた二人はある事に気がついた。逃げていたのが四人、追いかけていたのが一人の計五人いたはずの子供が、最後に二人の横を子供が通ってから見た時には、逃げていた一人がいなくなっていた。
「今、通った子供って五人じゃなかったか?」
「うん、五人いたはず。」
二人が振り返った時に子供が一人いなかった事をお互いに確認し合っていると、子供達も気づいたようで不思議がっていた。
「お前達、さっき一緒に走っていた子供はどうした?」
「いなくなっちゃった。」
シンが子供達に聞くと、女の子が一人泣きそうな顔をして言ってきた。
「レン、兵士の人達を呼びにこの子達と一緒に呼んで来てくれ。」
「分かった。みんな、私についてきて。」
そう言うと、レンは子供達と一緒に兵士を呼びに行った。シンはその場で待ち、兵士達が来るまで何か手掛りが無いか辺りを見渡してみる。すると、そこにはいなくなった子供の物と思われるピンク色の花柄のついた白いハンカチが落ちていた。シンはそれを拾い、兵士達を待った。
それから暫くして、兵士の人達が来て事情を説明した。
「またか……これでもう六件目だぞ……」
「突然消えるんじゃ対応の仕様が無い……」
兵士達もこの不可解な事件に手を焼いている様だった。
「君達は私達が家まで送るから。旅の方も十分気をつけて。それでは。」
そう言うと、兵士達は子供達を連れて行ってしまった。
「なあ、レン。ちょっと行きたいところがある。」
「行きたいところ?」
シンが言った事にレンは不思議そうな顔をして言った。それから二人はシンが行きたい所と言った場所に向かった。そこは看板に〈物知り本屋〉と書かれた、さっきまで二人が居たウォーマットの本屋だった。
「行きたい所ってここのことだったの?」
「そうだ。」
シンはそう言うと、またウォーマットの本屋に入って行った。レンもそれに続いて中に入って行く。
「おお〜、また来いとは言ったがこんなにも早く来るとはな。して、どうしたかな?」
ウォーマットは驚いた反応はしたものの、顔色一つ変えずに言ってきた。
「実はこれの持ち主の居場所を聞きたい。」
そう言って、シンが取り出したのはさっき子供が連れ去られた所に落ちていたピンクの花柄がついた白のハンカチだった。
「ほお〜、なんじゃ。連れ去られたのか?」
「やっぱり、分かるんだな?」
ウォーマットの言葉にシンは予想をしていたのか納得していたようだった。
「そうじゃの、今その持ち主はとある人物と一緒にいるようじゃの。」
「とある人物?」
シンの質問にウォーマットが気になる言い方をした。
「うむ、その人物とは今は七つの罪人と言われておる。」
「七つの罪人?」
ウォーマットの言ったシンの知らない言葉に思わず聞き返した。
「左様。どうやら知らない様なのでな、簡単に説明すると、人を殺し過ぎたり、色々な罪を犯して世界各国で指名手配されている者がこの世界には何人もおる。その中でも極めて危険度の高い人物が七人いての。其奴らが集まり、好き放題世界各地で犯罪を犯しているので人々はその七人の犯罪集団を七つの罪人と呼んで指名手配している訳じゃ。因みに、最近はこれと言って目立った事件が無かったんじゃがの……何か企んでいるのかもしれんな。」
「へぇ〜、それで本にも書いてあったんですね。」
「まあ、知らん方が珍しいがの。」
レンがウォーマットの話を聞いて感心していると、ウォーマットは嫌みっぽく言ってきた。
「それで、そんな世界に指名手配されている大犯罪者が何で子供なんか誘拐してるんだ?」
「うむ、それはじゃの。売っているのじゃよ。お主達は知らんかもしれんが、世界には人身売買が可能な国もある。勿論、明るみにはしていないがの。」
「な……ッ!?」
二人はウォーマットの言葉に驚いていた。
「……じゃあ、さっきいなくなった子供も売られるって事か?」
「そうじゃ。」
シンは重い面持ちでウォーマットに聞くと、真剣な表情で返事をしてきた。
「今はこの街の地下の牢獄にいるの。全部で六人。助けるなら、早く行く事をお勧めする。」
「何処にあるんだ?」
シンは子供達のいる場所をウォーマットに聞いた。
「この街の北の方にある紫の屋根の民家の床下に隠し階段がある。そこは今は誰も住んでいなかったのでそこにしたんじゃろう。紫の屋根は一件しかないから直ぐに分かるはずじゃ。」
「分かった。レン、すぐに行こう。」
「うん。」
シンはレンにそう言うと、二人は店を出ようとした。
「それと、」
すると、ウォーマットは二人に話し掛けてきた。
「七つの罪人じゃが、今は一人でいるみたいでの。銀髪じゃから直ぐに分かるじゃろう。だが、出来れば平和的な解決をする事を望む。」
「そうか、行こう。」
「う、うん。」
シンはウォーマットの言葉を聞いた後、早々とその場を後にした。
次回、七つの罪人
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