47話 サントリアの街
二人がエルナを出発してから三日が経ち、サントリアまで後もう少しという所まで来ていた。周りは緑の木々か立ち並び、エルナを出発した時の雪の白い景色はすっかり無くなっていた。
「そういえば、俺はグラートの事について詳しく知らないんだけど、どんな見た目をしてる奴なんだ?」
「ん〜、グラートは黒髮の短髪で、身長は百九十五センチの左の目元に一本、横長の傷がある男の人かな。」
シンはグラートの事についてレンに聞くと、少し考えた後にグラートの見た目について教えてくれた。
「へぇ〜、結構身長が高いんだな。」
レンからグラートの見た目について聞いたシンがそんな事を言った。
「そうね、結構高いかも。村でも一番背が高かったし、目元にも傷があるからシンでもわかると思う。」
シンの感想にレンがそう言ってきた。
そんな事を話していると、二人は開けた草原に出た。そして、その草原の先に二人が行こうとしていたサントリアと思しき街が見えていた。
「あれがサントリアの街よ。」
「へぇ〜、結構大きなそうな街だな。」
シンが見ていたのは、石の塀で囲まれていたリネオスと同じような造りになっている円形状に石の塀が周りを囲んでいる街だった。
「サントリアに着いたら、とりあえず、宿を見つけてそれからグラートの事を聞いてみましょう。」
「そうだな。」
そう言うと、二人はサントリアまで続いている草原の中の道を進んで行き、サントリアの関所の前まで来た。関所には兵士と思しき二人が入り口に立っていた。
「中に入りたいんですけど、良いですか?」
「それは良いんですが……」
レンが兵士に中に入って良いかと聞くと、兵士が何か言いづらそうに言葉を詰まらせていた。
「今この街では子供が消えると言う奇怪な事件が立て続けに起きていて、何も証拠が残らないもので対処のしようが無くどうする事も出来ないんです。なので、入って頂くには良いのですが、何か起きても責任は取れないので、証明書に署名をお願いしているんです。それでも良ければお入り下さい。」
「まあ、少し危険だけど仕方がないだろ。」
「そうですね。」
兵士の言った言葉に二人は仕方がないと腹を括り、証明書に署名した。
「お気をつけて。」
「はい。」
二人はそれから中に入った。サントリアの町並みは中世ヨーロッパのような町並みをしていて、街には人が行き交い、子供がいなくなる事件が起こっているとは思えない様子だった。二人はそれから街を歩いて宿を見つけると、部屋を借りて荷物を置いた。それから二人は宿の店員にグラートの事について一応聞いてみてから探す事にした。
「グラートという人がこの街に来ませんでしたか?」
「グラートね〜、そんな様な名前はごまんと居るからな〜、分かんね〜な。」
「そうですか……」
レンがグラートの事について聞いてはみたが、やはり分からないようだった。
「だけど、もしかしたらウォーマットさんなら情報通だから知ってるかもな。」
「ウォーマット?誰だそれ?」
宿の店員が言ったウォーマットという人物についてシンが眉を八の字にして質問した。
「この街で本屋をやってる爺さんなんだが、やたらと色んな事を知っててな。もしかしたら、知ってるかもしれないな。」
「へぇ〜、そんな人がいるんですか。」
宿屋の店員からウォーマットについて聞いたレンが感心したように言った。
「場所を教えてやるからそこに言ってみると良い。」
「ありがとうございます。」
それから二人は宿の店員から情報通だというウォーマットのいる本屋の場所を教えてもらうと、早速向かった。ウォーマットのいる本屋は、二人が泊まる宿から歩いて十分ぐらいの所にあるらしく、サントリアの町並みを見ながら向かった。すると、二人の視界に〈物知り本屋〉と書かれた如何にもといった分かりやすい看板が見えてきた。
「あれの事だな……」
「分かりやすいですね……」
二人はその看板を見て、呆れた口調で言った。そして、中に入ると、本がぎっしりと隙間無く並べられていた棚がいくつもあり、奥の方を見ると、本を読んでいる銀色フレームの眼鏡を掛けた見た目は七十歳ぐらいの白髪の爺さんがいた。
「あの〜」
レンがそう言うと、その爺さんはレンの方を見た。
「どうした、お嬢ちゃん。何か人を探してそうな目をして。」
「なんで分かったんですか!?」
レンは話しかけただけだったが、その爺さんはレンが人を探している事を見事に言い当てた。その事にレンは驚きを隠せないでいたようだった。シンも同じだったが。
「そりゃあ、何年も生きていれば何となくその人が何を考えているのか、どんな人間なのか分かるもんだ。」
爺さんはさも当たり前かのように言ってきた。
「あんたがウォーマットか?」
「如何にも、ウォーマットとはわしの事だが。」
シンが聞くとその爺さんがウォーマットである事が分かった。
「実はグラートという男の人を探しているんです。何か知っていることはありませんか?」
「うむ……グラートとな。」
レンの質問をすると、ウォーマットは悩んでいるのか唸った。
「もしかしたら、目元に傷のある奴の事かの?」
「……ッ!?」
二人はウォーマットの発した言葉にグラートの特徴が当てはまっている事に驚いた。
「その反応からして、わしの言っている人物と同じとみて良さそうじゃな。」
(何でわかるんだ?)
ウォーマットが二人の反応を見て自己解決していると、シンは何故分かるのか不思議に思った。
「この街には来てないの。どうやら誰かと一緒にいたようじゃが、最近は一人でいるようじゃの。」
「何でそんな事分かるんだ?」
この街には来た事が無いのにも関わらず、余りにも的確にグラートの事について言うウォーマットを不思議に思ったシンが尋ねた。
「企業秘密じゃ。」
「……」
シンの質問にウォーマットは言葉を濁し、理由を言わなかった。シンはそんなウォーマットに対して、目を細めて渋い顔をしていた。
「じゃあ、今グラートは何処にいるんですか?」
「そうじゃの〜、エスタルトという村を知っておるか?」
レンの質問にウォーマットがそんな事を言ってきた。
「いいえ。」
「うむ、エスタルトという村はこの街よりも南西にある村じゃ。そこにグラートという男はおる。そこに行ってみると良い。」
「わ、分かりました。」
ウォーマットの余りにも的確な助言に、レンは戸惑いながら返事をした。
「ありがとうございました。」
「何のこのぐらいお安い御用じゃ。また何かあれば聞きに来ると良い。」
「はい。じゃあ、行こうか。」
「ああ。」
二人は親切に教えてくれたウォーマットに礼を言い、この場所を後にしようと後ろに振り向き、歩き出した時だった。
「そこの少年よ。」
「ん?」
ウォーマットがシンに声を掛けてきた。すると、シンはウォーマットの方に振り返った。
「お主は自分の信じてきた者の事をもっと信用してやる事じゃ。そうすれば自ずと問題は解決するやも知れんぞ。」
「何の話だ?」
ウォーマットの突然の言葉にシンは不思議そうな顔をしながら聞いた。
「な〜に、年寄りの助言じゃ。わしの言った意味が分からん事を祈る。」
「ん?もう、行くぞ?」
シンはウォーマットの言った言葉の意味が理解出来なかった。それから二人はウォーマットの本屋を後にした。
次回、誘拐事件
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