41話 吹雪と四つ目のダンジョン
レイナ達と別れて、エルナの村を出てから二日が経ち、二人は目指しているダンジョンの近くまで来ていた。
辺りは雪が膝ぐらい積もっていて、進むのも一苦労な程だった。針葉樹にも雪が積もっていて、雪の重さからか葉の部分が曲がり如何にも重そうにしている。
それに加えて、風も強く、葉に積もっている雪が風に煽られて飛んでくる所為もあるのか殆ど前が見えない程の吹雪に晒されていた。
「なあ、前が何も見えないんだけど……」
「そればっかりは仕方が無いから出来るだけ離れないようにくっつきながら進も」
レンはそう言うと、出来るだけシンに近づいた。シンはレンとくっつきながらいると緊張するのであまり近づき過ぎないようにしたいが、視界の悪いこの状況ではくっつきながら進むしか無かった。
「にしても、この温熱石が有って助かったな。風は冷たいし、雪も吹雪いてきて凄いけど、体は全然寒くなし、それどころか逆に暑いくらいだ。」
「そうね、この吹雪の中を普通に進むのは厳しかったかも。」
「後どれぐらいなんだ?」
「もう少しの筈よ。」
二人がそんな会話をしながら吹雪の中を進んでいく。すると、吹雪の所為で見えなかったが、二人は山の麓にある氷で出来た洞窟の前まで来ていた。山は雪の所為で真っ白になっており、全貌は吹雪によって殆ど見えなかった。洞窟の入り口は六人ぐらいが横になりながら進んで行けそうな幅に、高さは人三人分ぐらいで、入り口の天井には氷柱がいくつも出来ており、牙の鋭い動物の口のような見た目をしていた。
「これがダンジョンの入り口か?」
「場所的にも多分そうだと思う。行ってみよう。」
二人はそう言うと、その洞窟の中に入っていった。洞窟の中はダンジョンだからなのか、何から何まで氷で出来ていた。そのおかげなのか中は光源に困らないぐらいには明るかった。そのまま先に進むと、少し大きな場所に出た。幾つか道が分かれており、上の方に続いている道もあれば、逆に下の方へ続いている道などもあり、色々な方向に分かれていた。
「どうしよっか?」
「う〜ん、とりあえず、上に行ってみるか。」
「了解。」
二人は話していた通り、上に続いている道を選んだ。二人が選んだ道は少し上り坂で右回りに螺旋状に出来ているようだった。すると、ある程度上った所でシンが歩きながら気になっていた事をレンに聞いた。
「そういえば、レンは何で口調を変えたんだ?」
シンはレンがエルナ村を出発してからというもの、今までの丁寧な口調を止めて自然な感じで話している事に疑問を感じていた。
「えっ…!?それはその……」
レンは突然シンに口調の事を指摘されて、頰を少し赤らめながら困った顔をして言葉を詰まらせた。シンはレンのそんな姿を見て不思議に思っていた。
「じ、実はレイナに『シンさんと長い間一緒にいるのに何でそんな堅苦しい口調なの』と言われたんです。なので、今までの口調を止めて、少し砕いた口調にしたんですけど……嫌ですか……?」
レンは心配そうな面持ちでシンに言った。
「いや、全然。ただ何でなのかなって気になっただけなんだ、レンがそうしたいならそうしてくれ。」
「分かった。ありがとう、シン。」
(本当は少しだけ違うけど……)
レンは嫌われるんじゃないかと不安で一杯だったが、シンの言った言葉に安心した。
その後も二人は道なりに進んだ。すると、螺旋状に出来ていた道が終わり、大きなホール型の空間に出た。その空間とは床が無く、下まで百メートル以上はある深さだった。更に、二人で並んで通るには細過ぎる幅の氷で出来た道が向こう側にある道までを繋いでおり、綱渡りを彷彿とさせる場所だった。また、下の床部分には剣山のように氷柱が隙間なく並んでいて、落ちたら間違いなく死ぬ事は明らかだった。
「おいおい、こんな所行けっていうのか……冗談だろ?」
「確かにこれはちょっと怖いかも……」
二人は落ちたら助からないこの空間を見て、呆然としていた。
「どうする?引き返すか?」
「行きますか……」
シンはレンにどうするか聞くと、行きたくないという事が伝わってくる口調で、苦い顔をしながら言った。
「嫌なら引き返してもいんだぞ?」
「ううん、この先にあるかも知れないし……行こう。」
シンが心配してレンに声を掛けるとレンはどうやらこの道を行く事を決心したようだった。
「俺が先に行くからちゃんと付いて来いよ?」
「う、うん……」
そう言うと、シンは手すりも何も無い氷の道を進んでいく。レンもシンに置いて行かれないように後ろを付いて行く。
「風が無いのがせめてもの救いだな。」
シンはここが外ではなかった事に感謝していた。二人はそのまま氷の道の半分ぐらいまで進んだ。シンが不意に下を見ると、自分がかなり高い所にいるという事を改めて認識させられた。そして、もしも今ここから落ちた時のことを考えると生きた心地がしなかった。
「ちょ、ちょっと!下を見ないでよ……!もう……」
シンはレンの方を振り向くと、レンはシンの様子を後ろで見ていて、怒っているようだったが、声はか細く、その表情は不安そうにしていた。それを見たシンが一つ疑問に思った事をレンに聞いた。
「もしかして、レンって高い所苦手?」
「高過ぎるのは……ちょっと……」
シンの質問にレンは申し訳なさそうに言いながら、今にも泣きそうな顔をしていた。
「とりあえず、後もう少しだから我慢しろ。ゆっくり進むから。」
「うん……」
レンは弱々しい返事をした。その後、二人はこの氷の道を慎重にゆっくり進んでいく。レンが高い所が苦手だという事が分かったので、シンはさっきよりもゆっくり歩いた。暫くして、シンが渡りきった。
「ふ〜、よし、後少しだから頑張れ。」
シンは安堵から深呼吸して荷物を下ろし、レンに声を掛けた。
「う、うん。」
レンも後もう少しの所まで来た。その時、緊張と後少しという安堵からかレンの足が竦み、踏み外した。すると、レンは体のバランスを崩し、今まさに落ちようとしていた。
「あ……ッ!?」
レンは自分がバランスを崩して落ちようとしている事を理解し、涙を浮かべ、恐怖の表情になりながら、左手を伸ばした。
「レン!!!!」
それを見ていたシンが左手を精一杯伸ばして、レンの左手を間一髪で掴まえて自分の方に思いっきり引っ張った。すると、レンの体はシンの方に吸い寄せられるように引っ張られた。
「いててて……大丈夫か?」
シンは倒れ込みながらレンの心配をした。レンはというと、シンに引っ張られたのでシンの体に重なる形で倒れていた。
「怖かったよ……ありがとう……」
レンは泣きながら体を震わせて、シンに抱きついた。シンは泣いて体を震わせているレンの頭を落ち着くまで優しく撫でた。暫くすると、レンは落ち着いたのか震えが収まった。
「落ち着いたか?」
「……うん…」
シンがレンに聞くと、何とか振り絞ったであろう声で返事をした。
「そうか……じゃあ、もう少ししたら行くぞ?」
シンはまだ涙を流しているレンを見て、微笑みながら頭をくしゃくしゃ撫でた。
「うん……」
レンはシンの微笑みに少し涙を流しながら微笑んで答えた。
次回、リナザクラの使い方
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