31話 ラクタート出発
二人は町中を歩いていた。すると、道に色々な店が立ち並んでいる中、レンは手芸屋がある事に気がついた。
「そういえば、買いたい物があるんですけど寄って行ってもいいですか?」
「ああ、良いけどなんか買うのか?」
レンが手芸屋を見て何かを思い出したかのようにシンに言ってきた。シンは何か買うものがあるのかと疑問に思いレンに尋ねた。
「はい。このリナザクラを入れる可愛い袋か何かがないかなと思いまして。それに、このままだと持ち運ぶのが少し大変なので何か良い物が無いか見てみたいんです。」
「ああ、なるほどな。」
シンは何の為に寄るのかレンから理由を聞くとシンは納得した。中に入ると、そこには手編みでつくられた編み物が大半を占めていた。レンはその中を何かリナザクラを入れるのにいいものは無いかと物色していく。すると、今まで物色をしながら少しづつ前に進んでいたレンが、ぴたりとその歩みを止めた。
「どうしたんだ?」
シンが急に止まったレンを不思議に思い尋ねてみる。
「この布の袋が柄も可愛くて大きさも丁度いいと思うんですよね。」
シンはどれのことを言っているのかと思い、レンの見ていた目線の方に目を向けた。すると、そこにはリナザクラがすっぽり入りそうなぐらいの大きさをした、夜色で桜の花びらが桃色の、まるでリネザクラの為に作られたかのような見た目をした大きい巾着袋のような物がそこにはあった。シンはそれを見て、確かにこれなら丁度いいと言うのも頷けると思うほどだった。
「決めました。これにします。」
そう言ってレンがその巾着袋のような物を手に取り、会計を済ませに店員のところまで行った。シンはその間暇なので手芸屋の入り口で待つことにした。だが、レンはなかなか出て来なかった。
「何やってるんだ?」
シンはレンが中々来ないことにを不思議に思っていると、やっとレンが手芸屋の奥から出てきた。
「遅かったな。」
「少しだけ直してもらってたんです。」
そう言ってレンが巾着袋を見せてきた。すると、巾着袋の対角線上に新しく赤の紐が付けられていて、肩に掛けられるようになっていた。
「店員に聞いてみたら快くやってくれたので良かったです。」
「そうか、それは何よりだ。」
シンはレンが嬉しそうな顔をしていたのが内心、嬉しかった。
「それじゃあ、後は食料ですね。だとすると、その前に物を入れるリュックか何かを探さないといけませんね。」
「それもそうだな。探してみるか。」
そう言って二人はまず、何か食料を入れられる物を探した。すると、町を歩いていた二人が雑貨屋を見つけた。
「ここにならありそうですね。」
「ああ、入ってみよう。」
すると、入ってすぐの所に何種類かバッグが置いてあった。その中でも一番大きいサイズのリュックを買う事にした。二人は会計を済ませて外に出る。
「後は、食料を適当に買えば大丈夫です。」
「じゃあ、早速買いにいくか。」
そう言って二人はその場を後にし、食べ物が売られている所まで歩いた。食べ物が売られている所に着くと肉や野菜などのエルナに行くまでに必要な食料を買った。
「これでエルナまでの道は何とかなります。」
「よし。じゃあ、行くか、エルナまで。」
「はい……」
二人は町のはずれにあるラクタートからエルナまで行く事が出来る道の前まで来ていた。
「やっぱり、辛いか?」
シンが浮かない顔をしているレンに気づいて話し掛けた。
「はい。やっぱりどうしても心の準備が出来なくて……」
レンは妹のレイナに会う為にここまで来たが、どうなっているかも分からない。レンがここまでくる間にも徐々にレイナの不治の病は体を蝕んでいく。もしかしたら、もう死んでしまっているかもしれないという恐怖と不安にレンは押し潰されそうになっていた。すると、浮かない顔をしているレンに、シンがレンの頭を覆うようにしてレンの事を抱きしめた。
「辛かったら俺を頼れ……それで、レンが辛いことを俺に半分分けてくれ。レンが辛い事は俺も辛い。それと、辛い時こそ、笑え……レンには笑顔が一番だ」
シンはレンを抱きしめながら耳元でそう言った。レンは何も言わなかったが、シンはレンが体を震わせている事に気づいていた。シンは抱きしめたまま頭を撫でる。たまに聞こえるレンの鼻を啜る音だけが、レンが今どんな事を思い、何を考えているのかを知ることが出来る唯一の方法だった。暫くそのままの状態でいると、レンの震えが徐々に収まっていった。
すると、レンは顔を上げてシンの事を見た。
「シン……ありがとう……」
そう言って、シンにありがとうと伝えたレンの顔は涙で目元が赤くなり、まだ大粒の涙を流していたが、レンは満面の笑みを作っていた。
次回、エルナまでの道中
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