厳寒の地
厳寒の地
「寒ぃ……」あまりの寒さにテオスは漏らした。「俺なんか金属だからキンキンだろ。」舞台は厳寒の地、ラシア。辺り一面銀世界だ。粉雪がしんしんと、静かに降り注いでいる。
今回の任務は他国の護衛。具体的に言うと、チンプー政権に対する大規模デモの鎮圧だ。
チンプー政権に対抗する巨大勢力が出来ている。その中で、重要な対ラシア基地の制圧を任されたモンシャックス。
正面から入るっては駄目なので、少し遠回りする。「ラッセル交代お願い〜。」とテオスからラナ、ラナからエニス、エニスからテオスに交代し、雪を掻き分ける。ちなみにラッセルとは、雪を掻き分けるこの作業のことを言う。
「よし、着いたぞ。」とテオス。有刺鉄線のついた金網が立っている。対ラシア基地だ。
「今から、対ラシア基地への突入を開始する!」「よっしゃー!行くぜ!」と意気込む剣。
3人は特製の厚い手袋をはめ、有刺鉄線の付いた金網を登る。素早く、慎重に有刺鉄線に手を付く。足を反対側に越えさせ、飛び、着地した。
施設内の地図は判っていた。ラナの銃撃で敵を排除しする。
兵士の頭を、正確無比に破裂させる。
兵士は無残に、血の跡となる。
モンシャックスは、血のチェックポイントを作りながら、素早く行軍する。監視員程度の、普通の兵士はもはや的ではない。
最後の部屋に着いた。ドアの前で待機する。「あれ、序盤は剣の活躍少ないんだな。」
「待てー!」そこには、柔道着を着た奇人がいた。
テオスは言う「何だアイツ?」「こんな戦場にコスプレ野郎がいる……」と返すラナ。「オッサン……」呆れるエニス。「コスプレではない!我の名を金剛寺と言う。いざ参る!」
「おい、ここは戦場だぞ?オッサンふざけてる場合じゃないだろ?ハハハ緊張しっぱなしだから雰囲気は和らぐけど。」と剣は出番が来て饒舌だ。
「柔!貴様柔の精神を知ってるのか!?」身をたじろぐ金剛寺「そういうことじゃねーよ。」と返すテオス「貴様、曲者ぉー!」
「ウザったい、一発で殺ってしまおうか。」前に出たのはエニスだ。人思いに一発で仕留めるはずだったエニス。しかし……
振りかぶるエニス、
思った以上に早い!
剣のと素手のリーチ差があるにも関わらず、金剛寺はエニスの裾を掴んだ。
金剛寺はエニスを背負い投げした。「フン!一本!」剣は言った「オッサン、強えな。」
舐めてはいけない相手だった。
金剛寺が意外と強いと知って、銃口を向けるラナ。
銃を放った。
掴んだエニスを放し、金剛寺は銃弾を避けた。
「秘技!3回転蹴り!」
1回転目でテオスの頭に、
2回転目でエニスの腹に、
3回転目でラナの脚に打撃を加えた。
テオスは失神し、
エニスは急所でないがあまりの衝撃に放心し、
ラナは脚の骨を1つ折った。
1発目を受けたテオスは、完全に戦闘不能だ。
それでもラナは、銃を放つ。
エニスも果敢に斬りかかる。
エニスはボディーブローを受けた。衝撃は凄まじい。
僕は、こんな馬鹿力を持つ相手に、何の恐怖もなく戦っていたのか。
エニスはふっ飛ばされた。それでも立ち上がる。
僕って相当無鉄砲だな。
斬りかかる。
今度は背負い投げで、激しく地面に打ち付けられた。
そのまま馬乗りになられ、殴られる。
エニスは初めてこんなことを思った。
ダメだ、逃げないと!
ラナが銃口を向けた。金剛寺は一旦、避けた。
「に、逃げるぞ。こんな奴の相手をしては駄目だ。」「逃げる?まだ任務は終わってないじゃない。」ラナは、エニスらしからね発言に眉間にシワを寄せた。「そうだぞ、エニスらしくねーぞ。」
エニスは逃げた。
モンシャックスが戦い、進軍して来た通路を、逆走した。「おいおい、どうしたんだよエニス。」