要人警護、やり手の王族マフムード
要人警護、やり手の王族マフムード
エニスは病院に運ばれた。戦闘によって負傷したのだ。病院に剣を持ち込むわけにはいかなく、剣は軍に預けている。「エニス、大丈夫か?」テオスは心配そうに言う。
エニスは閉じていた目を開いた。「エニス!良かった。」一緒に見舞いに来ているラナも優しそうにうなづいた。
ガラッ、扉が開く音がした。オルハン大佐が来た。
「また、任務が来たぞ。」「おいおい、今エニスが負傷してるところじゃないかよ、オルハン大佐。」ラナも怪訝そうな顔をした。
「2週間後だ。それまでに治せばよい。」「看護師さん、2週間で治りますかね?」「2週間ですと……ゆっくり治した方が良いですね。」「軍が決めたことだ。2週間以上は待てないからな?ではな。」
大佐はエニスを心配して見舞いに来たのかと思いきや、無理な仕事を押し付けて帰っていった。
「あの野郎……」テオスは顔を歪めて悔しがる。モンシャックスのメンバーは全員人間扱いされている気がしてないので、悔しいのだ。当の本人は余り苛ついてもないみたいだが。
2週間後……
精鋭部隊モンシャックスは、全員、戦地にいた。
エニスは回復力が高いようで、奇跡的にモンシャックスに復帰した。完治はしてなく、傷口が開くかもわからないが。
任務の遂行は2週間で必要なくなり、結局取り消されたのだが、新しく任務が追加されてしまった。テオスとラナは、エニスを休ませて上げれば良いのにとも思った。
そんなテオスとラナの憤りをよそに、いつも通りエニスは戦闘している。
剣は言った「いやー、久しぶりのこの快感、良いぜ、良いぜ!」「おい剣、エニスはまだ完治してないんだぞ。少しは労ってやれよ。」とテオス「はは、そうだな。こりゃ失敬。」
エニスも自分は働き者だなぁ、と思い始めていた。
「よし、この部屋の中だ。行くぞ。」ラナの銃で、鍵の掛かったドアノブを壊した。「突入!」
「げっ」今回の任務は要人警護。その要人、やり手の王族マフムードが、椅子に縛られ、頭に銃を突き付けられていた。「来てくれたのか。でも少し、遅かったようだ。」
ドン!
すかさずラナが銃で倒した。先手必勝だ。
「助かった。腕の良い銃士のようだな。」
「痛たたた。」「エニスもよく耐えたよな。2週間前はあんな傷だったのに凄ぇよ。」エニスは思った。僕は強い戦士なのかもしれないと。
「うぅ……やっぱり痛い。もう、余り俊敏には動けなそうだ。」「背負ってやろうか?」
「おい、俺の仲間を殺したのか?」
マフムードはまだ縛られているし、エニスは手負い。ここで戦える相手が出て来ては不味い。
テオスは叫んだ「エニスは手負いで頑張った!マフムードもこれからのアカレファールの未来を担って行くやり手の王族だ。ここは俺がやってやる!この国の未来の為に!」
相手は体も大きく、とても強そうだ。
余りのオーラにラナは言った「無理はしないでね!」
「おいチビ、そんな小さい体でこのロストに勝てると思ってるのか?」名前をロストと言うらしい。
両者、刀に手をかけた。
居合い切り。
相手は体のサイズに似合わず、素早い。
テオスは身を引くような形で受けた。
ロストはジャンプして斬りつけた。
巨体で着地した衝撃はデカイ。
いつもの冷静なテオスならエニスを抱えて逃げているが、今日のテオスは熱くなっている。エニスをも倒した、ラベルカルを倒したのが自信過剰になっているのもあるかもしれない。
テオスは、何とか受けながらだが薙ぎ払われた。
ラナは言った「逃げて、無理よそんな相手!」エニスも痛みに耐えるのに必死で言えなかったが、そう思った。
「まだだ!」テオスは果敢に、正面からロストの相手をしようとする。
ロストは槍のように剣を飛ばした。
ズバ!
「狙っているのは、最初からそいつだ。」
マフムードは大量の血を流し、うなだれていた。
「クッソー!退散だ。」
精鋭部隊モンシャックスは、初めて任務を遂行出来なかった。