3. 初めての死闘
初めての戦闘回。
頑張って書きました。
ちょっとだけグロ描写入れてみました。
ところどころの文章を変更
オークが棍棒を構えて走ってくる。
オークの目は、獲物を見つけたとばかりにギラギラと輝いていた。
武器も一回り大きい。
(やばい!対抗手段が思いつかない!!)
必死に思考を巡らせる。
後ろは湖、周りは深い森。眼前には自分よりも遥か上位にいる強者。
(逃げ道がない!! 森に入ってもいいけど、動きが制限されて追いつかれる可能性が……)
森の中は不安定な足場だらけで、動きを木や岩で阻害される。制限された速さでは相手に追いつかれてしまうかもしれない。
(行くならオークの後ろの道だけども。隙を窺って逃げるしか………っ!?)
思考に耽っていたため、いつのまにか相手の位置を忘れていた。
いつのまにか近づいていたオークが棍棒を振りおろしていた。
俺は必死に右に飛んで回避する。
「あぶねぇ!!」
回避行動後、即座に体勢を立て直す。
相手を見ると棍棒を地面と水平に振っていた。
俺は後ろに飛んで回避する。
ッブォン!!
棒が振られた後に発生した風圧を肌で感じ、冷や汗が止まらない。
このオーク、巨体に似合わず武器の振りが早い気がする。
「今だ!」
俺は攻撃後の隙を突いて、舗装されていない道に走った。
しかし、オークは棍棒を切り返し、もう一度水平に振って俺の移動を阻止した。
オークだが頭が良い。俺の退路である道を塞ぐように攻撃してきた。
(逃げられない! 戦うしか選択肢が………)
俺は思考する。この場を生き延びる方法を。
(………『魔力操作』だ! このスキルを使うしかない!!)
魔力残量が少ないけど、それしか俺の武器がない。
俺は魔力を操り、拳に集中させる。
拳が白く光り、白く光る細かい魔力粒子が拳の周りを舞う。
魔力鑑定を常時ONにしているため、魔力の色が白く見えるのだ。
長期戦闘は、魔力枯渇に繋がり、意識喪失状態になる。
そうなったら待つのは死。
目の前のオークに撲殺されて、食われるかもしれない。
「いくぞっ!このデブ野郎!!」
俺はもう一度上段から振りおろされた棍棒をギリギリで避け、懐に入り腹に拳をぶつける。
衝撃で少しだけオークがよろめく。
それでも、オークに致命的ダメージを与えるには遠く及ばない。
オークがよろめいている隙に一旦距離を置く。
500でスカイダイブの衝撃を受け止めることができるのだ。
10ぐらい拳に籠めると、拳ではなく、それはれっきとした凶器となる。
しかし、このレベル差。
魔力をちょっと籠めるだけじゃ遠く及ばない。
(拳だけじゃだめだ。柔らかそうな腹なのに硬い!これがLv差ってやつか。だったら、腕全体に魔力を籠めてやる!)
俺は魔力の範囲を拳から腕まで広めることにする。
魔力消費量も増やす。一発だ。一発で仕留める!
俺は、拳と腕にギリギリである魔力200をつぎ込むことにした。
これぐらい入れないとあの防御力は突破できない!
魔力消費量からして約一秒。チャンスは一回だけだ。
再度、オークの懐に入り込むため走る。
オークは迎撃のため横に棍棒をフルスイングする。
しかし、攻撃の軌道は予測できる。
振りかぶる予備動作で攻撃が来る方向が見え見えなのだ。
俺は身を低くし棍棒を躱す。頭の上を棍棒が通過し、風圧が髪を揺らす。
「喰らい、やがれぇ!!」
俺は棍棒を振り抜いた後の無防備なオークの腹に魔量を籠めた打撃を放つ。
腕まで魔力強化したおかげか、力が強力になり拳が腹に突き刺さった。
突き破った部分から緑の血液が流れてくる。
俺は腹を突き破った後、なにかわからない内臓を力任せにめちゃくちゃにしてやった。
刹那の時間に内蔵をがむしゃらに破壊すると、オークは腕を振り回して激しく抵抗した。
俺は腕に巻き込まれて体を後方に吹っ飛ばされる。
魔力操作も中断された。
やはり、Lvが高いためか、腕の振りまわしだけでも、ダメージがはんぱない。
「がはっ!」
俺はゴロゴロと体を地面に打ち付けた。
体中に激痛が走る。
痛みで意識が飛びそうになった。立てそうにないな、これ。
(…………オークの状態は)
グラグラする視界でオークを見ると腹から液体を垂れ流している。
体がふらふらと揺れており、後少しで倒れそうになっている状態だ。
オークは俺に向かってよろよろと歩いてくる。
体に穴を開けても、内蔵を破壊しても、俺を殺そうとこちらに向かってくるのだ。
殺すことに対する執着心が高い。
(俺が殺されるか、相手が血を垂れ流しすぎて死ぬか…………どっちだ……)
ここで死にたくない。早く倒れてくれ!!
俺は、祈る思いで相手の歩く姿を見つめる。
……ドス…………ドス…………ドス……
少しずつ、少しずつ俺との距離が短くなっていく。
十数秒の後、オークが俺の前に立ち止まり、棒をゆっくりと上に振りかぶる。
俺は死を悟った。俺はここで死ぬんだな。
まだ、なにもしてないっていうのに。
目を閉じて諦めに入る。体を動かそうにも激痛で動かない。
俺はここまでみたいだ。
目を閉じていると、いつまでも攻撃が来ないことに気付いた。
恐る恐る目を開けて前を見た。
そこには、オークが棍棒を上に振りかぶった状態で後ろに倒れていく姿だった。
巨体の体が地に沈み、ズドンと音を立てる。
オークの巨体は動くことはない。死んだのか?
いや、胸の部分が上下しているのが見える。
まだ、生きてるみたいだ。けど、これは倒したと言っていいと思う。
相手が死ぬのも時間の問題だ。
少し見ていると胸部分の上下が無くなった。
どうやら、息絶えたみたいだ。
「ははっ、はははははは」
力が抜けた笑いが口から勝手に出てくる。
俺、勝ったんだ。
圧倒的な死に打ち勝ったんだ。
まだ生きてられるんだ……
気付けば、俺は泣いていた。
殺されなかったことに凄まじい安心感が心を満たしている。
車に轢かれるときは一瞬だった。恐怖よりも先に死がきた。
けど、今回は絶望的な死がゆっくりと向かってきた。
俺の心は絶望と諦めで一杯だったんだ。
その死がいなくなり、俺は生き延びることができたのである。
よかった、本当に。俺はまだ生きていられる。
俺は全身強打による痛みが体から抜けるまで、そのまま目を閉じて休憩することにした。
…………ピン!
レベルが上昇しました。Lv 1 → Lv 9
拙い戦闘回で申し訳ありません。
いろいろ設定を考えながら書いています。
ふと、頭をよぎる。他の人は国の設定とかどうやって考えてるんだろう。
そう思う、今日この頃。