プロローグ・車に轢かれた無謀人
オリジナルの小説を初めて投稿します。
感想等を頂けたら嬉しいです。
主人公の口調をちょちょいと修正。
ところどころ文章追加。
俺、藤堂 奏汰は必死に走っていた。
走る先には、名前も知らない一人の女の子。
女の子は、スマートフォンを見ていて、走ってくる車に気付いていない。
なんでこんなことをしているのか。
俺にもわからない。ただ、体が勝手に助けようと動いていた。
俺の中には油断があった。
絶対に間に合う。轢かれることはないと。
そんなことはないのに…
現実はそんなに甘くはなかった。
衝突まで数メートルのところで女の子のもとに辿り着く。
女の子も顔を上げて車に気付き、絶望を顔に張り付かせる。
……間に合わないっ!
俺は咄嗟に女の子を抱き寄せて、車に背を向ける。
女の子は俺に抱き寄せられたことに動揺していた。
その瞬間、
ッドン!!
俺たちは轢かれていた。
ゴロゴロと体をコンクリートに打ちつける。
やがてぶつけられたら体が止まる
体のところどころが痛い。血が見える。俺から出たものだろうか?
霞んでいく視界を少しずらすと、女の子が少し離れた先で倒れていることを確認できた。生きているかはわからない。
そこまで見えたところで、俺の意識は闇に落ちて行った。
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気付いたとき、俺は白い世界にいた。
周囲を見回しても白色、上と下を見ても白色。
(………ここ、どこ?)
俺は困惑していた。ここがなんなのか一切わからない。
だって、一面真っ白なんだもん。
わからないに決まってんじゃん………
(よし、落ち着け~。今日のことを振り返ってみよう)
そう言って今日のことを振り返る。
俺、藤堂 奏汰。高校一年。
部活には入っておらず、バイトをいくつか掛け持ちしている。
バイトの種類は接客だったり体力仕事だったり、いろいろやっていた。
空いてる休日の時間とかは、主にランニングしたり料理したり。
料理はこだわって良い包丁買ってみたり、「☆あなたも簡単にできる世界の料理☆」とかいう無駄に分厚い本を買って挑戦してみたり。得意料理はハンバーグ。
そんな俺の今日の一日。
朝、寝坊して普段より遅く学校に着く。もちろん結果は遅刻。
昼は学食でカレーを食べ、午後に授業を終えて帰路に着く。
バイトがなかったので、学校帰りにその日の晩御飯の買い物をしにスーパーに。
スーパー帰りに………
(あっ………)
思い出した。
そうだ、俺は車に轢かれたんだ。女の子を庇って。
轢かれたことを思い出し、俺は自分の体や頭を弄る。
どこも痛くないし、血も手に付かない。
あのとき、自分の血みたいなものを見たはず。
分からない。轢かれたところまでは覚えてる。
けど、轢かれたことと、この真っ白な
空間がどう考えても繋がらない。
「なんなんだよ、ここ……」
『ここは神界。神様の住まう世界だよ』
「っ!?」
途方に暮れ始めた俺の頭に、少年の声が響いた。
俺は必至に声の主を探して周囲を見回す。
見回しても人間一人、居やしない。
『僕を探しても無駄無駄。僕はそこにいないよ』
またもや声が頭の中に響いて、俺はビクッと肩を震わせて驚く。
周囲に人が居ない。けど、少年の声が頭の中で響く。
完全にホラーだ。
「なんなんだ、この頭に響く声。それにあなたは誰ですか」
『僕?僕は神様。死んだ人間の案内をしてるんだよ。ほら、君、車に轢かれて死んだから』
「へっ?」
待って欲しい。神様?死んだ?
じゃあ、つまり俺は死んだってことだよな?
それに気になることも言っていた。死んだ人間の案内?
なんじゃそりゃ……
「気になることはいろいろあるけど、いくつか質問してもいいですか?」
『どうぞどうぞ』
「俺、死んだんですか?』
「うん。死因は車に轢かれたことによる事故死」
どうやら俺は死んだらしい。つまり、あの事故の時、俺は死んだのだ。
てことは、ここは死後の世界ってことになるのか………
「次の質問 あなたは神様で、ここは死後の世界ってことで良いんでしょうか?」
『まーそんなところ』
「死んだ人間の案内ってなんですか?」
『そのままの意味さ。天国に連れていったり、赤ちゃんとして生まれ変わらせたり、異世界に案内したり』
「それって、俺が選べるもんなんですか?」
『うん、選んでいいよ。犯罪者とかは地獄に問答無用で落とすけど。君は犯罪なんて犯してないし、むしろ人助けをして死んだんだ。地獄に落とすようなことはしないさ』
「なるほど……」
俺は死んだ後の進路を自分で選べるらしい。
俺は、気になる単語が二つほどあったので、それらについて聞いてみる。
「人助け……。俺はあの女の子を助けることができましたか?」
『あの女の子?女の子って君が庇った子のこと?』
「その子」
『女の子は助かったよ。君の体が間にあったおかげだね。足に怪我して、体にいくつか打撲を負ったくらいだね。今、病院で治療を受けているところだよ』
「よかった~」
俺は、少し安心した。自分のやったことが無駄にならなかった。女の子が無事で良かったと。
そして、俺はもう一つの質問をする。この質問が重要だ!
「異世界って本当に行けるんですか?」
『君、異世界に興味があるの?』
「あります!天国よりも数倍興味がありますよ。だって異世界ですよ!魔法とか使ってみたいじゃないですか!」
『異世界に行きたい?』
「行きたい行きたい!」
俺、藤堂 奏汰はオタクである。オタクといっても、気になる深夜アニメを視聴したり、面白そうだと思ったライトノベルを買って読んだり。休日はちょっとゲームをプレイしたり。
そんな感じのオタク。フィギュアとかDVDは買ったことないけど。
そんな俺が異世界に行けるんだよ?これは行くしかないじゃん!
剣や魔法、ドラゴンにスライム。そんな世界があったらいいなって思ったこともあるし。
『良いけど、ランダムだよ?』
「ランダム?」
『行く世界もランダム。スキルや強さもランダム。どこに最初転移するかもランダム』
「大丈夫、異世界でいいよ」
『怖いもの知らずだな~。異世界に即決は久しぶりだよ。大抵、みんな天国選ぶもん。まーいいや。では注意事項を話すよ』
「お願いします!」
俺は異世界で生きていくために、今からの注意事項を一言も漏らさずに聞かなければと意気込む。
『ごほん。まず一つ目。異世界では、日本の常識は通用しません。
異世界の文字も読めますし、言葉は自動で変換してくれるから心配しなくても大丈夫です』
魔法が使える世界で、日本の常識が通じるはずがない。
「言葉は」か。つまり、筆記は覚えないといけないんだろうな。
英語すらままならないのに
『二つ目。僕からステータスと鑑定、二つのスキルを与えます。ステータス表示は、ステータスが見たいと念じることで、自分のステータスを確認できるステータス画面を表示します。閉じるときは、閉じたいと思うだけで閉じることができます。鑑定は、アイテムの詳しい情報や値段を知ることができます。相手のステータスを見ることも可能です』
便利スキルじゃないですか。このスキルは重宝するに違いない。
『最後に。異世界転移後にあなたにユニークスキルを与えます。このユニークスキルとは、強力な効果を秘めたものです。ユニークスキルは、なにが発現するかはランダムです。転移後にステータス表示でご確認下さい』
ユニークスキル?普通のスキルとはまた違ったやつなのかな?強力とか言ってたし。
行ってから確認すればいいか。
神様は丁寧口調の説明を終えて「ふぅー」と一息つく。
『こんな感じかな?なにか質問ある?』
「ないです!」
『おっけー。じゃあ、異世界に送るよ。心の準備はいい?』
「大丈夫です!」
そう言うと、俺の足元に灰色に光る魔法陣のようなものが浮かんだ。
俺の体が浮かんで光に包まれていく。温かい感じがする。眠りそうだ。
『では、良き人生を 藤堂 奏汰君』
俺は、神様の楽しそうな言葉を聞くと同時に意識を失っていった。
--------神様視点--------
「はぁぁぁぁぁ」
奏汰が去っていった空間を見ながら、僕は重い溜息を漏らす。
だって、死者の案内なんて久しぶりだからね。
「次は君を叱らなきゃいけないね。マーリン」
「……………はいぃ」
情けない声で返事をする女の子
その顔には後悔と恐怖が張り付いている。
「なんで君はいちいち問題を起こすかなぁ」
「………すいません」
「わかってる?マーリン。君の勝手な行動で人一人の人生が終わったんだからね」
「本気で反省してます。当分、人間界にはいっさい干渉しません」
「………………はぁぁぁぁぁ」
更に大きい溜息一つ。
本来、神様のせいで人間を死なせることは許されない。
しかし、目の前のバカな見習い神様はそれをやらかしたのだ。
スマホ初購入に浮かれて。
「奏汰は異世界に行きたいという小さい願望があったから、なにも疑問を持たずに済んだけど。神様が人一人に対して進路を用意するなんて普通ないから………」
奏汰の生活やこれまでの人生を調べたとき、二次元に対する願望があることを知り、罪滅ぼしの代わりに異世界行きをさりげなーく混ぜたりした。
そしたらほら。奏汰は見事に異世界行きを即決した。
少し無謀な気はするけど。
「いっそのこと、君も異世界に行く?」
「行きたくはありませんが、それが命令ならば遂行します」
「ふむ………」
どうしようかなぁ。また面倒事が発生しそうな気がする。
その尻拭いをするのは決まって神様である僕だ。
そんなことしたくない。
「君は謹慎100年で。少し頭を冷やしてきて」
「…………はい」
マーリンは、後悔の念を顔に出しながら消えていった。
100年で少しは成長して欲しい。期待してないけど。
神様のとって100年なんて短いけど、こんなもんでしょ。
さてと、奏汰はこれからどんな人生を送るのだろう。
時間があるときに覗いてみようかな。だって、面白そうだもん。
「ふふっ」
神様は少しだけ微笑んで、姿を消した。
内容が空中分解しないように気をつけたいです