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教えて欲しいこと  作者: 9ma
7/14

ぼくときみの涙


「…おい、二葉。」


お風呂上がり、自分の部屋に入ろうとする弟に声をかけて引き止める。


「なぁに、兄ちゃん。今から電話するんだから、邪魔しないでよー?」


湯上りのふわふわな髪の毛

桃色に染まった頬

ふふふ、と笑った横顔は兄弟の僕から見てもくらっと来る程に魅力的で。


電話って?

この前電話していた、恋人?


高遠さんの気持ちも知らないで

あんな風に困らせて、あんなに一生懸命考えてくれる先生のことを邪険にして…


「…っ、かげんに…」


「え…」


我慢出来なかった。

拳を握りしめて、俯く。


喉の奥が震える。

目頭が熱くなって


…僕の気持ちも、知らないで。


「っ、いい加減にしろよお前!!毎日、毎日高遠さんがどんな思いで来てくれて!どんな気持ちで、お前に教えてると思ってるんだ!!真面目にしろよ!」


溢れる、

言葉と…涙が。


「あ、ごめんなさ…兄ちゃん、ごめん、ごめんね。ごめんなさい!」


珍しく叫んだ僕の声に、二葉が一瞬身体を震わせてじわり、と目に涙を浮かべる。


泣きたいのはこっちだよ、畜生。


可愛いからって何でも許されて

甘やかされると思うな。


いつもいつも我慢するのは兄の僕だった。お前は、両親にも先生にも友達にも大切に大切にされるんだ。


いつも。


「泣けば、いいと思うなよ。」


ポロポロと、

その綺麗な頬に涙を流す姿を見ていられなくて目を逸らす。泣きそうになった自分の涙は必死に堪えて。


もう、嫌だ。


こんな嫉妬と憎しみの気持ちしか残らないのなら、恋なんてしなけりゃ良かった。


高遠さんが、二葉を大切に思っているのは二人で話すようになって良く解った。


(素直で表情がコロコロ変わって、見ているだけで飽きないんだ。飽きっぽいかと思ったら、問題に対しては集中力があって絶対に解けるまで諦めない。何より、優しいよね。俺がちょっと調子悪いと、すぐに気付いて心配してくれるんだよ。)


良い弟を持ったね、一葉君は。


高遠さんは一人っ子で、何かと慕ってくれる二葉は本当に可愛いって、そんな弟がいる僕を、羨ましいと言った。


「全部、お前のせいだ。」


僕の言葉に、二葉が目を見開く。


「お前なんか、大嫌いだ!」



言い放った言葉は

何故か僕自身の心に突き刺さった。




泣きたいけど、

人前で泣けないのが悩み。

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